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 場はヨルンシスさんがキアさんをなだめたことで何とか継続となった。

 極限まで青ざめた顔をしていたバロノーザさんもどうにか体勢を立て直した。ちょっとビクビクしながら改めて発言を試みる。


「……我らは勢力圏である地があるし、各々一万以上の軍もある。失礼だが、ほ、本当に失礼だが、聖女ルーシャ教団にそれらはないだろう……」


 最後の方はもう消えそうな声だった。キアさんがまだ彼を睨み続けているし、セレノアさんもいつでも抜刀できる姿勢で私の隣に立っている。

 いたたまれない、もう許してあげて……。どうして私が彼の心配を……。とりあえず私だけはきちんと応対してあげなきゃ。


「確かに私達には土地も軍隊もありませんが、代わりに支えてくれる信者達がいます。それが教団の勢力と言えるのではないでしょうか。ちなみに、信者の数は現在五十万人ほどになりました」


 私の出した数字にバロノーザさん以外の代表者も驚きの声を上げた。まったくびっくりだよね、私もついさっき知ったんだけど。

 続けて私はここぞとばかりに教団の売りこみにかかる。


「ご存じでしょうが、聖女ルーシャ教は月の定額会費以外は一切いただきません。そのお金もしっかり社会に還元しますし、私達は世にはびこる悪質な宗教から国民を守る盾にもなれると思います。教団はこれからまだまだ信者が増えますよ。その点を鑑みれば、身近な所に置いておくのが国としても得策ではないですか?」


 喋っていながらなかなかいい教団ができたものだと自分で感心してしまった。もう第七の勢力として認めちゃっていいのではないでしょうか。

 少し間が空き、私は面々からの反応を待った。

 やがて進行役のヨルンシスさんが口火を切る。


「バロノーザ、まだごねますか?」

「いや、もういい……。というより、もう無理だ……」


 バロノーザさんは二人の女性からの無言の圧力で何だか白くなっていた。筋肉も最初よりどこか弱々しく見える。

 それにしても、ごねるとはいったい?

 首を傾げる私を見て、ヨルンシスさんは小さく微笑んだ。


「筋肉男が一人異論を唱えていただけで、元々ルーシャ様にはここに加わっていただく方向で大体の話がまとまっていたのですよ。あらゆる怪我人や病人をまとめて完全回復できる奇跡の聖女を逃す手はないでしょう。先にそちらが話しはじめたので、せっかくですから拝聴していました。実は外見が幼女なだけにやや心配だったのですが、中身はとてもしっかりなさっていて安心いたしました」


 うーん、これはプレゼンの必要がなかったのでは……? いや、でも中身の証明にはなったか。

 じゃあ、もう会議は終わりかな、と思っているとヨルンシスさんが「ですが」と言葉を続ける。


「どうしても確認しておきたいことがあります。聖獣についてです」


 ……やっぱりあれはこの人の手の者だったか。

 実は数日前から私の周辺を探っている人達がいた。そして、私の住む町は国土の西域、ヨルンシスさんの勢力圏内にある。

 聖獣に関して彼女が確認しておかなければならない事柄には察しがつく。こちらから切り出すことにした。


「一日当たり何頭の魔獣を聖獣に変えられるか、ですか?」

「……その通りです」

「魔獣は大きいので人間より〈ヒール〉に魔力を消費しますが、そうですね……、傷を最小限に抑えた場合は二千頭くらいは」

「そ、そんなにですか!」


 はい、養えるかどうかは別問題として。

 どうやら他の代表者は聖獣のことを知らなかったらしく、ヨルンシスさんが説明した。半月と経たずに各勢力の軍を上回る聖獣軍団ができると分かると全員の顔色が変化。

 いや、一人だけやけに喜んでいる人がいる。

 キアさんが目を輝かせて椅子から立ち上がった。


「じゃあ、ウルムドも聖獣に変えて仲間にできるのか!」

「どんな種族でも大丈夫だと思います。ウルムドなら実際に私の所に八頭いますよ。一回り大きなその進化形も」

「なんと! これはもう教団の加入は確定的だ! ヨルンシス、早く採決をとれ!」


 小さく弾みながら急かせるキアさんを進行役の彼女は手を出して制する。


「最後にもう一つ確認しなければなりません。ルーシャ様、本当にここに椅子をご用意するだけでよろしいのですね?」


 ヨルンシスさんの言葉に、バロノーザさんとおじさん代表者達の四人はハッとした表情になった。

 彼らの思考が魔力を通して伝わってくる。どんどん増える信者にいくらでも増やせる聖獣、その気になれば国取りも……。聖獣軍団を指揮して国を端から食い潰し、行く先々の都市で住民に歓待される幼女、のイメージが流れこんできた。

 ……聖女の皮を被った魔王みたいだ。さっきあれだけ中身を証明したのにひどくない?


 気を取り直した私はまず幼女らしく屈託のない笑顔で応えてから。


「もちろんです。それ以上は望みません」


 しばらく誰も声を発さない無言の時間が流れた後に、ヨルンシスさんは静かに「採決に移ります」と言った。


 一早く挙手したキアさんが賛成票を投じ、残りの五人もそれに続く。

 聖女ルーシャ教団は満場一致でエルフィリス国の首脳機関に迎えられることになった。あんなに頑張って抵抗していたバロノーザさんも心を入れかえたように喜んでくれている。

 とりあえずこれで任務完了だね……。思っていたより大変だった……。

 と魔力で浮かせていた椅子を下ろしていると、キアさんが勢いよく席から立ち上がった。円卓をぐるりと回りこんで私の所へ。もう待ちきれないといった様子で私を椅子から抱き上げる。


「ルーシャ様、いや、これからはルーシャと呼ばせてもらおうか! 私のことはキアと呼んでくれ! 同じ日本からの転生者だからな!」


 今日会ったばかりなのにそんなに急には……、……え、日本からの転生者?





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― 新着の感想 ―
日本からの転生者なのに「食」に関してはポンコツか。何に特化してるのやら?ケモナー属性なのは確かだろう。
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