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21 姉御


 メイリムに続きジェシカまで大きくなってしまって、どうしようかと悩んでいると玄関の扉が開いた。

 現れたテルミラお母さんが髪の寝ぐせを直しながら二頭の魔獣を眺める。しばらく考えた後にぽつりと呟いた。


「……兎と狼、なんかでかくなってない?」

「き、気のせいだよ。昨晩のお酒がまだ抜けてないんじゃないの」


 遅れて出てきたレイエルが、「ルーシャ様、さすがに誤魔化すのは無理かと……」と親切にも教えてくれた。


 ……そもそも魔獣の進化は私のせいじゃないのに、なぜ責められている風になっているんだろう。

 理不尽な思いを募らせていると、象サイズの狼に早速登頂を果たしたセレノアさんがその場から全員に向かって。


「敵襲。この町が魔獣に狙われている」

「狙われているって、またどうして急に。何の魔獣が来るの?」

「ウルムド、が一、二、三、四……八頭。ずいぶんと怒っている」


 以前にジェシカを狩った時も思ったけど、セレノアさんの魔力感知は野生の勘でも働いているのか驚くべき広さをカバーしている。

 彼女の報告から少し遅れて、ようやく私も町に接近する魔獣達に気付くことができた。確かに大狼達は相当いきりたっているようだ。


 この事態に、ジェシカが申し訳なさそうに耳と尻尾を垂れさせる。


(……あれは私を慕っていたウルムド達だ。人間側に寝返った私に怒っているんだろう)


 なるほど、彼女は本当に狼達の姉御だったらしい。


(ウルムドの一頭や二頭や八頭、私がけちょんけちょんにしてやりますよ!)


 後脚で立ち上がったメイリムがファイティングポーズをとる。

 威勢のいい兎をたしなめるようにジェシカはその頭に前脚を置いた。


(袋叩きに遭うのがオチだ。これは私の不始末。自分できっちり決着をつける)


 決意を語った大狼はその背にセレノアさんを乗せたまま空地から走り出す。


 メイリムがぜひにもと言うので、私とレイエル、テルミラお母さんはその背に乗って後を追うことに。大兎に揺られる私達にすれ違う町の人達は、この一家はまた……、という呆れたような視線を向けてきた。いつもどうもすみません。

 私の後ろに乗るレイエルがため息をついたのが分かった。


「……僕にはこれの結末が目に浮かびますよ」

「奇遇だね、私もだよ……」


 辿り着いたのは町の外れで、先に来ていたジェシカは早くも八頭のウルムドと向かい合っている。

 セレノアさんは背中から下りて、少し離れた位置から見守っていた。


「私も手伝うと(魔力で)言ったら、いらないって」


 ……ジェシカ、意地でも一頭で片をつけるつもりなんだ。

 八頭の大狼は元頭領に対して激しく吠えたてている。彼らの魔力から察するにおそらく。


(姉御、正気に戻ってください!)

(姉御は人間達に騙されているんですよ!)


 といった感じだと思う。

 ジェシカは子分達の様子に首を横に振る。


(今のお前達には何を言っても無駄だと分かっている。……可哀想に、すぐに解放してやるからな!)


 両者の戦闘が始まると、駆け出したジェシカがまず一頭の首筋に咬みつく。一撃で最初の大狼を仕留めたのち、前脚の爪を振り回して後続を薙ぎ払った。


 ……この戦い、ジェシカが圧勝するのは間違いない。元々の能力が上なのに加え、進化したことで力も魔力もさらに増している。ウルゼノスになった今、もうウルムドが何頭来ようが敵じゃない感じだ。

 私達はただ黙って見ていればいいだけなんだけど……。

 ……ジェシカ、かなり辛そうに見える。きっと、生き返ると分かっていても子分達を牙にかけるのが耐え難いんだろう。


 空中に浮かび上がった私はジェシカの頭に着地。


「ジェシカ、あとは私に任せて」

(ルーシャ様……)


 炸裂栗を一つ再生すると、それを大狼達の真ん中へと飛ばす。それから、敵全体を覆うように魔力壁をドーム状に展開した。

 魔力ドームの中で栗が弾け、魔獣討伐は完了。


 見ていたテルミラお母さんが感心したように声をかけてきた。


「ずいぶんと扱いが上手になったじゃない。もう炸裂栗マスターね」

「そんな称号はいらないから」


 そう返しつつ、すでに私は八頭のウルムドに〈ヒールワイド〉を発動していた。



 ――大狼の襲撃から十数分経ち、そういえばまだ朝ご飯も食べていなかったことに気付く。朝焼けの空に浮かぶ雲を眺めながら、朝食はパンにしようかな、とか考えているとジェシカが私の前に。


(ルーシャ様、さっきは私を気遣ってくれてありがとう)

「私達はもう仲間なんだから、補い合っていけばいいと思うよ」

(……そうだな、私はいい主に巡り会えた。これからよろしく頼む)

「うん、こちらこそ」

(皆一緒に、よろしく頼む)

「……うん、こちらこそ」


 こう答えた私は、甘えた鳴き声で体をすり寄せてくる八頭の大狼達の中にいた。もうもふもふ団子状態だ。

 そんな私を眺めつつレイエルが、「やっぱりこうなりましたね」と。


 ……だね、聖獣が一気に十頭まで増えた……。


お祝いコメント、有難うございます。嬉しいです。

コメントにありました魔獣や聖獣の変化能力についてはもう考えてありまして、それで気兼ねなくどんどん大きくしています。

今回は人の姿にこだわらず、色々変身できるのも面白いかなと。兎サイズの兎とか。

前述の通り今後の展開も決まっていて担当さんからも、とてもいい、とお言葉を貰っていますので期待していただいて大丈夫です。

各方面からおだてていただいてこの作品はなり立っています。

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― 新着の感想 ―
ここまで一気読みしました!めっちゃ面白くて続きが楽しみです!そして書籍化おめでとうございます!
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