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ドローンだけが、空を翔ぶ

作者: 秋桜星華

「大都市・フローネストで原因不明の強力なゾンビウイルスが発生」


 すべてのはじまりは、この報道だった。




 宇宙暦5332年、王国エリシュアではかつてない混乱が巻き起こった。


 ゾンビウイルスが蔓延し、それはあっというまに国が崩壊するほどだった。


 世界中の人々はお互いの交流を遮断し、引きこもった。


 幸い、自動配達システムがすべての国で導入されていたため、供給に問題はなかった。


 しかし、問題も多かった。


 多くの人が孤独感に苛まれたし、大多数の企業は倒産した。


 そして、廃棄物が増加した。


 このことに関して、王室は何度か声明を発表したが、改善されることはなかった。


 かつては活気あふれる都市だったフローネストも、歩けど人っ子一人見当たらない。


 笑顔が飛び交う街だったが、今では代わりに配達用のドローンが我が物顔で空を支配していた。


 世界の傍らで、少女は言った。


「今日の世界に、優しさはあるのか」


 その少女は誰だったのか。それは、誰にもわからない。


 ただ、ドローンの機械音だけが空に吸い込まれていった。




 研究者たちは孤独にウイルスを解析した。


 他の人が「誰か」との雑談に明け暮れた日も。


 人気のアーティストが活動を再開した日も。


 有名人の訃報で悲嘆につつまれた日も。


 しかしその努力には、決して感謝されることはなかった。




 およそ10年後にゾンビは脅威ではなくなった。


 そのあまりの遅さに、人々は不満をぶつけた。


「少し早かったら私の家族も助かったのに」


「協力せず、一人でやっていたから遅くなったんだ」


 研究者たちは反論した。


「そういっている人たちだってこの10年間、何も協力していなかった」


 と。





 ゾンビはもういない。代わりに笑顔もみられない。


 あるのは、顔を隠して表情のわからなくなった人間だけだ。


お読みいただきありがとうございました。


これってパニックであってますか……?


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