六話 迷子の子供②
「龍くんのお父さん、なかなか見つからないね」
あれから住人に聞いてみたけれど、龍くんのお父さんらしき人物は見つからなかった。
時間だけが過ぎていき、もうすぐ夜になる。
「おい、子供。お前だけ家に帰ることは出来ないのか?」
「僕一人じゃお家までの道、わかんないもん。それにお父さんと一緒じゃなきゃヤダ!」
「庵様。夜遅くに子供一人置いていくのは危ないですから、今日は私たちの家に泊まらせては駄目ですか?」
「俺は緋翠と二人きりがいい。それに、このガキは臭い」
「今日は桜ノ国を半日も歩き通しだったから汗をかいたのね。龍くん、お姉さんと一緒にお風呂に入りましょう」
「うん!」
私は龍くんの手を引いて、私の宿でもある団子屋へと向かった。
「なっ……! 緋翠、俺が言ってるのは体臭のことではなく……ったく、仕方のない奴だ」
◇ ◇ ◇
「お風呂も夕飯も終わったからあとは寝るだけね」
「お姉さん。ギューってしても、いい?」
「……どうぞ」
本当は触られるのは嫌だった。けれど、龍くんはお父さんと離れて寂しいんだ……そう思うと拒絶出来なかった。
それに、龍くんはまだ子供だ。私に暴力を振るうことはないだろう。
「お姉さん?」
「なんでもないの。今日は私が龍くんのお父さん代わりだから、ねっ?」
「わーい! お姉さん大好き」
「……」
龍くんが私をお姉さんとして慕ってくれているのはわかる。本当に私のことを好いているのだろうか。だって、その証拠に龍くんの翼は黒だ。
これは私のことを嫌いでないと出ない色。卯月やお母様がこの色だったからわかる。でも、龍くんからは殺気も出ていないし、そもそも私とは出会ったばかりだ。
私が龍くんの機嫌を損ねただけかもしれないし。それこそ、夕飯のおかずが嫌いなものばかりだったとか。
それ以外にも龍くんには違和感がある。
何故、一人で桜ノ国に入れなかったのか。そして、私と手を繋いだ時に電撃のようなものが走ったのか。けれど、いくら考えたところで答えは出ない。
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