十二話 支え
「庵様。龍くんはまだ子供です。今から保護して大切に育てれば人間を殺すことだってしなかったはずです」
「子供だって妖だ。それに人を襲うのが当然だと教わった妖の子供が人間の手で育てられれば更生するなど、それこそ夢物語だ。人間が妖を嫌うように妖もまた人間を恨んでいる。互いに殺し合えば、憎しみの連鎖は止まることはないんだ」
「だったら私が庵様を止めてみせます」
「なんだと?」
「庵様が何者だっていいんです。たとえ人間じゃなかったとしても……」
「龍の言うことを信じるのか? 俺が変化をしている醜い妖だとでも?」
「もしも妖だったとしても私は庵様を嫌いになったりしません」
「何故だ」
どうして忘れていたんだろう。
庵様が私を助けたときに言った言葉を。
「庵様は私のことを幸せにしてくれると言ってくれました。だったら、私が庵様を嫌う理由はありません。だけど、今回のようなことがあれば私は庵様を止めます。
それが庵様にとって正しいかはわかりません。けれど、庵様の翼が白い羽になるよう、私は全力を尽くします」
「翼……?」
「いつか私のことを話します。だから庵様も隠していることを話してください」
「……あぁ」
龍くんは私が騙されていると言っていたけれど、私はそうは思わない。
庵様の正体が妖だっていいじゃないか。もし、そうだとすると庵様は私を幸せにする妖だ。今の姿が仮だっていいんだ。
私だって、翼が見えることを話していないのだから。誰にだって言えない秘密はある。
「俺は龍を殺したことを後悔してないぞ。アイツはお前を不幸にしたんだ」
「っ……」
「龍くんのせいで国が燃えたのは事実です。それは許されないことです。けれど、人と妖は会話が出来ます。だから……」
「話し合いで解決出来たなら互いに殺し合いはしていないはずだ」
「わかっています。でも、今後は私も戦いに参加します」
「っ……! 危険すぎる!」
「守られてるばかりじゃ嫌なんです」
「緋翠……」
「私は庵様に幸せにしてもらう。けれど何もせず、ただ黙ったまま時が過ぎるのを待ちたくはありません」
能力を持たなくたって、非力だって、私は巫女。今までは重圧に押し潰されていたけれど、今はそうじゃない。
自分の道は自分で決めることが出来る。私の人生は私のもの。だから自由に発言するのは悪いことじゃない。
「私が庵様の支えになります。庵様の手をこれ以上、血で染めてほしくありません。無駄な戦いをせず、桜ノ国の住人が誰一人として犠牲にならぬよう、私も手伝います」
これは私なりの覚悟だ。ただの女の子に何が出来ると言われたらそれまでだが、私は真剣だ。
……庵様。私はここにいます。最初に出会った頃の弱い自分とは違います。だから……!
「そこまで言われたら仕方ない」
「庵様……」
「だが、俺は躊躇なく妖を切ることもあるぞ」
「その時は私が止めます!」
「お前は強いな。……俺が暴走しかけたときは止めてくれ」
「はい……! 必ず、次こそは止めてみせます!!」
「まずは国の修繕だな。それから怪我人の手当てと……朱里と合流するか」
「全てお手伝いします!」
「たくましいな。だが、無理だけはするなよ?」
「庵様だって戦いで疲れてるのに……」
「団子でも食えば回復するさ」
「ふふっ。庵様は本当に団子がお好きですね」
私たちは朱里さんの元へと足を進めた。
しばらくは国の修復で忙しいけれど、これも住人としての立派なお仕事だ。私は庵様の支えになるって決めたんだから。
私が私であることを自覚した今日。……この時の私はまだ知らない。まさか、忘れていたあの人たちと再会することになるだなんて。
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