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愛憎の花  作者: 日向 燈
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騒がしい来訪者 2

 

「――いったい何だったんだ?」

 

 喧騒を引き連れてきた彼らの去った部屋は静かになりよくわからないがまた甘味が増えていた。

 自分が目覚めてから会う人は皆甘いものが好きなのだろうか。

 そんなこと思っていると部屋の扉が開き、1人の看護師が部屋へと入ってきた。

 金に染まった髪とは反対に肌は健康的な褐色で、濃いめの化粧は清楚なイメージの看護師とは少し異なるものであった。それに小百合さんと異なり名札がないため名前もわからない。


 「天内くーん。 服の着替え手伝いますね~」


 彼女は声だけかけるがこちらを見ずにスマホを片手でいじりながら入ってきた。

 看護師が堂々とスマホいじりながら仕事をするっていいんだろうか。何となくこの病院は癖の強い人の集まりなんだろうなと思う。


 「あ、すみません。 助かります。」


 素直にお礼を言う。すると彼女は急に声を出したせいだろうか驚いたようにこちらを見てスマホを床に落とす。


 「あっ!! って天内君起きてるの?!」


 何故か大げさな反応をしてくる。まるで人がいつもなら昼は寝腐っているニートみたいに。


 「ちょっと寝たきりって聞いてたから今も寝ているのかと思ったじゃん! 起きてるならそう言ってよ!」


 なんで自分がそんなこと言われなきゃいけないのかわからないが彼女はそう言いながらスマホを拾いひびが入ってないのか入念に確認をしている。一瞬驚いただけでスマートフォンの方が大事なようだった。

 おそらくひびは入っていなかったのだろう。安堵したように肩を撫でおろし、スマホをポケットへとしまい込む。

 そしてぶつくさと言いながら着替えをてきぱきと手伝ってくれた。入ってきた態度から仕事は出来ないのだろうとか勝手に思っていたが見事なほどに手際よく進めあっという間に着替えは終わってしまった。


 「よーし、着替え終わり!」


 「ありがとうございます」


 「ちゃんとお礼言えるなんて偉いぞガキンチョ」


 そう言って彼女は頭を撫でてくるがそれが恥ずかしくて彼女の手を軽く払いのける。

 少しニヤニヤしながら彼女はこちらを見ている。どうやら恥ずかしがっている自分をからかっているようだ。


 「そっかー天内君目が覚めたんだね~。 運ばれてきたときはこんなもやしだから死んじゃうんだろうなぁって思っていたけど元気そうで良かった良かった」


 なんか軽く失礼なことを言われた気がする。それに意外と満身創痍に近い状態を元気と言われても。

 彼女もまた当たり前の様に椅子へと腰掛け、先ほどポケットにしまい込んだスマートフォンを取り出して普通に片手で弄りながらしゃべりはじめる。

 みんな普通に居座ろうとするんだよなぁ。そんなに居心地がいいのかここは。


 「まぁ目が覚めて良かったね。 でも目が覚めたならさゆちゃん元気になると思うんだよな~あの子毎日君の看病しに行くもんだし、医院長も看護師長もさゆちゃんに全部任せっきりだから他のみんな君の事運ばれてきた時しか知らないんだよね~」


 そう言う彼女だが自分があったことあるのは病院の人だと小百合さんにモヒカン藪医者だけだ。おそらく彼女の言うさゆちゃんは小百合さんの事で間違いないとは思うが、医院長や看護師長にはあったことがない。


 「てか、天内君の意識覚めたのに何でさゆちゃんさっきあんなに拗ねてたんだろ。せっかくの可愛い顔が台無しだよね」


 「あっ」

 

 彼女の小百合さんが拗ねているという話を聞いて思わず声が漏れ出ると彼女の視線はスマートフォンからこちらへと変わる。


 「え、なに、もしかして拗ねてる原因って君なの? もしかしてなんか失礼なことしたんでしょ。」


 そう言われてばつの悪さに思わず視線を他へと向けてしまう。

 

 「ったくちゃんと謝ってよね~。 さゆちゃん先月弟さん亡くしてるのに頑張って休まずに仕事してるんだよ。 そんな健気に頑張ってる女の子イジメないでよね」


 「え、弟を亡くしてる?」


 彼女からの衝撃の一言で逸らした視線がすぐに戻っていく。


 「え、知らないの? まぁ身内の不幸を、しかも自分の弟の不幸話をわざわざするわけないもんね。 あ、この話本人に聞かないでよ? それと私が教えたとかも言わないでよ。最近師長に口が軽すぎるって怒られたばっかりなんだから。 あの人怒ると話長くて嫌になちゃう。早く高収入のイケメン目の前に現れないかなぁ、今日病院にスーツ姿のイケメンいたって聞いたけどさっきすれ違ったのは目元見えないぼさぼさ頭だったし」


 この人に口が軽いって怒った師長はまともな人なんだろうなと思う。さっきからほぼ喋ってないのに1人で話題をポンポン出してくる。

 この人なら重要なことも簡単にしゃべってしまいそうだ。

 

 「よし、着替えも終わったし私もう行くね。 誰か来たらさぼりだってまた怒られちゃうし」


 そう言うと彼女はポケットにスマホをしまい込み、椅子から立ち上がると、僕の着替えた服を持ち部屋を出ていこうとする。

 

 「にしても天内君1人だけ遠い部屋に隔離されてるからすごく変な子なのかなとか思ったけどそうでもないんだね~。静かだし師長の部屋から離れているからここさぼりに快適だしまた来るねぇ~。 あ、私の事はあざみさんって呼んでね。それじゃ」


 「――え?」


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