朝ご飯
「お姉ちゃーん」
声の聞こえる方向へ向かうと、長机で食事を取っていたウイッテを見つけた。
小さな体だったが、朝からステーキのような丸ごと肉と、ジャガイモによく似たものが薄く揚げられているフライや山盛りの穀物をもりもり食べていた。
「あ、ウイッテちゃん、おはよう!なんか、す、すごいね、こんなにいっぱい食べるんだ…」
「おはよう、お姉ちゃん。お姉ちゃんも横に座って一緒に食べようよ。んん?お隣りにいるスタイルのいいお姉さん、だれ?あ、お姉ちゃんのお友達?」
「あ、そーだよー。君が噂の魔導士ちゃんかあ。何て言うんだろう、、、ちっちゃくて可愛い...」
そう言いながらアキホはウイッテの頭を撫で始めた。
頭を撫でられると、ウイッテは目を吊り上げてアキホの顔を睨んだ。
「何?私に対してちっちゃいなんて言わないで!!!ホント、分かってない人はダメなんだから。私はかの魔導士一族の跡継ぎなのだぞ!」
ウイッテは胸を張ってポンと拳を置いた。
「へー、すごいすごーい。ね、ローリア、私たちも朝ごはん取りに行こうよ」
「あ、いいよ、行こ行こ!」
一度机を離れ、朝食を取りに行く。
そういえば、外食するのは転生してからほぼ初めてのことだなあと思い、転生先の食事に初対面。
ご自由にお取りくださいと書かれた皿の中には、前世では見たことのないようなお肉(?)のようなものが、骨付きで丸ごとおかれていたり、先程ウイッテが食べていた揚げ物、スープなどがたくさん並べられていた。
並んでいる食べ物のほとんどが見たことのないものだったが、空腹のせいか、全て輝くおいしい食べ物に見えた。
「うわあ~おいしそ~う」
そう呟きながら自分の皿に無心についでいく。
おいしそう、おいしそう、おいしそう、、、、、、。
「おい、ローリア、どんだけ入れてんだよ?てかアンタってそんなに大食いだったかね?私の記憶的にもっと小食の自称可愛い系女の子だと思っていたんだけど」
「はっ!」
アキホに声をかけられて我に返ると、自分の大きな胸と同じくらい多く盛り付けていることに気づいた。
そうだった、、、。今は夏芽じゃなくてローリア何だった。
「い、いやー、ほら、昨日疲れちゃったし、いっぱい食べたいなーなんてね。ははははは」
それを聞いたアキホは、違和感を感じたのかのように首を傾げたが、そのままウイッテの座っている机まで戻ってしまった。
「いただきまーす!」
夏芽はすぐにバクバクとご飯を食べ始めた。
そして、見た目だけでなく、味も悪魔的だった。
食べても食べてもまた手が動いてしまう。
口の中では、脂っこいと分かっていても、喉元を過ぎると次々と口の中に放り込んでいく。
これは、違法薬物かなにかなのだろうか。
やめられない、とまらない。
「ほんと、今日は気持ち悪いくらい食べるね、ローリア。しかも、なんか昨日の夜よりも胸が大きくなっているような気がするんだけど、、、」
アキホがちょっと引き気味に目を細めて見ていた。
「そんなことないもん、これが普通だもん」
ええい、もう開き直ってしまえ!
そうして、夢中になって食べていると、ウイッテが唐突に聞いてきた。
「ねえ、二人は今日、どこへ向かうの?」
夏芽はアキホの方を見た。
「どこ行くんだっけ?」
すると、アキホは呆れたような顔つきで言った。
「フリーニャを探しに行くんでしょ?あのレイピア無かったらアイツ、なんもできんだろ」
「あー、そうだったそうだった、、、で、フリーニャはどこ?」
「え?知らないの?」
アキホはぽかーんとした顔をしている。
「私、何も聞いてないけど」
「私も」
「だめだこりゃ」
三人は時が止まったかのように固まっていた。
すると、夏芽のポケットから白い紙が一枚落ちてきた。
それはフリー二ャからの置手紙だった。
「あ、確かこれに書いてあったような気がする」
夏芽はその手紙を開いた。