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四章 業務開始

 推しのグループのマネージャーになれた嬉しさから遙香は浮かれた気分で大学に登校し、休み時間に親友の愛梨に不審に思われてしまう。


「遙香? 今日顔がゴールデンレトリバーみたいだよ?」


 そう愛梨は言うが、遙香は聞く耳持たずにスマホの壁紙にしている大也を見続けている。


「ねえ、聞いてる? はーるーかーちゃーん?」

「呼んだ?」

「何回も呼んだよ? 今日の遙香変だけどなんかあったの? 推しに認知でもされたの?」


 そう聞く愛梨に遙香は指と首を振りつつ否定をする。


「違うの。認知されるよりもすごいことが起こったの!」

「え?」


 遙香は愛梨に耳打ちをする姿勢になり、小さな声で。


「これ私と愛梨との内緒話にして欲しいんだけど、私、EDELSTEINのマネージャーになっちゃったの!」


 愛梨は少し考え、すぐ思いつく。


「EDELSTEINって、遙香の推しがいるグループじゃん!? おめでとう!」

「ちょっ! 愛梨、声大きいって!」


 愛梨は両手を合わせて謝罪をする。


「ごめん! びっくりしちゃって」

「まあメン地下だし知名度はそこまでの可能性高いからいいけども⋯⋯」

「ほんとごめん」


 遙香は愛梨の謝罪っぷりに負け、許す。


「まあ、一ヶ月のバイトとして入っただけなんだけどね。一ヶ月だけでも頑張るよ」

「うん。頑張ってね! 応援してるよ! ⋯⋯って、やばい三限始まっちゃう! それじゃあね!」

「またね!」


 愛梨と別れ、遙香は今日の大学の授業が終わったため事務所へ向かう。


 遙香は事務所ビルの脇道を通っていき、昨日石屋敷から渡された仮カードでスタッフ専用口に入る。


「えーっと、四階だよね」


 エレベーターに書いてあるフロアガイドとにらめっこしながら、4と書いてあるボタンを押下する。

 エレベーターの扉が閉じ上に昇って行き、四階に到着。廊下を歩き、事務所の扉を開ける。


「おはようございます!」


 遙香がそう言うと、事務所に一人で居た虹林が応答する。


「遙香ちゃん! じゃなかった。関口さん、お疲れ様です。タイムカード押し忘れないでね」

「はい!」


 遙香はタイムカードを押し、自分の椅子に上着を掛ける。すると虹林が遙香に話しかけてくる。


「あ、石屋敷さんから伝えておいてって言われたんだけど、関口さんには基本、高道大也のマネージャーをしてもらうことになってるの。事件的に気まずいかもしれないけど、重要な仕事が一ヶ月間無いの大也だけだったから」

「えっ⋯⋯」


 その言葉を聞いた遙香はびっくりして身体が固まってしまう。なんて言ったって、本当に推しのマネージャーをすることになってしまったのだから。

 今のは幻聴だと思った遙香は首を振り、一回深呼吸をしてから再度確認を取る。


「えっと、再確認させてください。高道大也のマネージャー⋯⋯ってことですか?」

「うん⋯⋯。ごめんね。あの事件あって高道のマネージャーは辛いかもしれないけど⋯⋯」


 すごく申し訳なさそうな虹林と対照的に、嬉しさから心の中でガッツポーズを決める遙香。

 推しを支えられる。それがとても嬉しくて遙香は興奮しつつ。


「いえ! 大丈夫です。頑張ります!」


 遙香はなんとかオタ隠しができたかと思い、ほっとしていると机に置いていた私用のスマホの通知が鳴ってしまい、電源が入ってしまう。

 電源が入り、光ったスマホの壁紙には大也が映っている。


「あ⋯⋯」


 ハモってしまった二人。

 遙香は見られてしまったことに動揺し、思わず口を手で覆ってしまう。

 何故、電源をオフにしてなかったのかを悔やむも、時すでに遅し。


 終わった――。


 そう遙香は思った。だが虹林から帰ってきた言葉は意外なものだった。


「もしかしてだけど、いい⋯⋯? 高道のこと好きだったりする? でも諦めた方がいいよ。あの子、昔高道が苦しかった時に救ってくれた女の子のことを今でもずーーーっと好きで追い続けてるから」


 その言葉を聞いた遙香は、ショックを受けてしまう。

 やっぱり推しにも好きな人っているよねという気持ちと、虹林の言った女の子が羨ましいという気持ち。その二つの感情が混ざり合って、心が黒く淀んでいく。


「あ、一応壁紙のことは内緒にしておくから、安心して欲しいなって。あとさっきの話は社外秘だから、そこのところはよろしくね」


 そう虹林は言い、給湯室に行ってしまった。

 心がゾワゾワしたまま、遙香も業務を始めなければいけない時間になっていた。

 気分が上がらないが、自分のデスクにあるノートパソコンを立ち上げる。

 遙香の初仕事はEDELSTEINメンバーの全員のスケジュール把握から始まる。

 推しである大也のスケジュールを見るのは気が引けるが、仕事になってしまった以上見るしかない。


「こうなったら腹を括るしかないよね⋯⋯」


 遙香はそう言いスケジュールを確認していると、扉が開く音が聞こえる。

 扉を開けたのは大也だった。複雑な気持ちな遙香だったが、ふと、目が合ってしまう。


「ずっと探してた」


 そう大也は言い、走って息を枯らしながら遙香の元に向かっていく。

 刹那。

 大也が遙香のことを抱きしめた。

読んでくださってありがとうございます!

花宮由里歌です。

最近忙しくなってしまい更新途絶えてました! 大変申し訳ありません!

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