魔物使いと竜の谷 起章5
起章 5
廃墟だとエディは言った。
廃墟は廃墟だ。打ち捨てられたような人気のなさをいうならば。だが廃墟と呼ぶには思った以上に建物の形が残っている。それもかなり立派なものが。
自然の岩をくりぬいたような場所だった。道を外れ、今では通る人もいないのか少し荒れた道をひたすら歩いて行くと、唐突に眼下に空洞が開けた。まるで奈落へと繋がるような黒い影の中に、それはのっそりと生えているかのような佇まいだった。
「この岩山をそのまま掘り下げて造ったものらしい。案外建物を造るよりは作業としては楽なのかもしれないけど、手間と時間はどうだろうね」
岩肌に張り付くようにして細い階段がある。手摺すらないただ岩の削り残しのような段差の羅列は少しでも脇見をしたら足を踏み外しそうだった。所々崩れかけた段もあり、あるかなしかの風にぱらぱらと落ちる小石の欠片たちの音は、一歩間違ったら自分の行く末かと思うと非常に心臓に悪いものだった。
本当ならもっと先へ進んでいても良さそうな時間、アイーシャは階段に張り付き格闘していた。竦む足は思うように進まない。
「あんなに勇ましいのに、まさか高所恐怖症なのかい?」
「はあ? そんなわけないじゃない。こんなのなんてことないわ。馬鹿にしないでよ」
階段を見て息を呑んだところにエディが目を丸くしたのがいけない。負けず嫌いのアイーシャはそんなことうそぶくと勢いで足を踏み出した。
……だが、身体は素直だった。
下を見なければいいという忠告はここでは無意味だ。見なければ確実に足を踏み外す。
「アイーシャ無理しないでいいんだよ。俺が下まで運ぶから」
「放っておいて。ってゆーか話かけないで。気が散る」
「……アイーシャぁ」
下ろしてやると言っている意味ももはや正確には理解できないくらいに錯乱していた。
「平地。ここは平地。平地だから平気、あはははは」
「ア、アイーシャが壊れてる」
壁に手を添える――とは、とても言えない。文字通り両手は愚か顔までを擦り付けそうな姿勢でひとつひとつの段を確かめるようにして降りる。それでも恐怖心は消えない。
「階段って何? 階段……かいだん、怪談。ああ、怖い話よ。へへへ」
そう、認める。高いところは怖いのだ。目が回りそうだった。だが大丈夫と言った手前もあるし、戻るくらいなら降りてしまった方がいい程度まで来ていた。
吹き上げる風は乾いて冷たい。それなのに全身からは汗が吹き出し、冷やされて異様に寒い。寒いのか怖いのか、震えている理由は自分にも判断がつかなかった。
暗い視界に地面らしきものが見えた。またこれを登って帰るのかとは今は考えたくない。
あと少しと心の内に思った瞬間、アイーシャの足が段から外れた。
「アイーシャ!」
シュリの悲鳴が耳に届く。はっとして硬直した身体は、だがしっかりとした腕に支えられていた。
「大丈夫かい?」
抱きかかえられるような形になった眼前に、亜麻色の髪の合間、心配げに覗き込んでくる緑の瞳があった。
「だだだだ、大丈夫よ!」
急いでその腕から逃れると意味もなく外套の裾を払う。心臓が大きな音を立てていた。
驚いたためか、別の要因かは定かではないが、何度か大きく息をついて鎮めようと努力をするもなかなか収まらない。
「こっちだよ」
動揺をよそにエディが先に立ち進む。慌てて追おうとしたところへシュリが降りてきた。
「顔、赤いよ?」
思わず頬に手をやるアイーシャになるほどねとしみじみ呟く。
「アイーシャはああいう王子様然としたような人が好みなんだね、ふうん」
紫の瞳が細められる。それを目にも止まらぬ速さで引っ捕まえて首を締め上げた。
「余計なこと言ってんじゃないわよ」
「し、死ぬ、死ぬう」
「そういうくだらないこと言ってると」
アイーシャが顔を近づけた。
「食うよ」
「ひっ」
実際、あまりの空腹時に寝ぼけて食いついた前科がある。まあ子供時分の話ではあるが、シュリはそれがよほど恐ろしかったようで、この脅し文句が一番応えるらしい。
「ごめんなしゃい」
半泣きの声がなんとも哀れだ。力を抜くと解放された守護魔は力なくよろけるようにして羽ばたく。改めて手を伸ばすと、鋼色の身体はいとも簡単に捕まえることができた。
「な、なに? まさか食べる気?」
汗が冷えた体にシュリの体温がほんのりと温かい。その温もりを抱いてしみじみ息をつき、あのねと呟くと優しい目が見上げてきた。
「ほんとは……怖かったの、すごく」
くすりとシュリが笑った。
「よく頑張ったね。ご苦労様、意地っ張りさん」
高所も暗所も嫌いなことを知っている親友の小さな手が頬を叩く。
「戻りは素直にお願いするわ」
頷いたシュリが任せておけと請け負った。
建物正面にある長い階段を上がると大仰な扉が待ち構えていた。
あんなに苦労してここまで降りたというのに入口が上にあるというのは、なんだか納得できない理不尽さを感じる。この寺院を設計した人物とは到底仲良くなれる気がしない。
外側が岩と同色で無機質なのに比べ内部には様々な装飾の名残があった。僅かに残る像には金の片鱗が見受けられる。その他にも色鮮やかに染められていたであろう壁や天井に赤やら青やらの塗料の跡がいくつも残されていた。太い柱は蔦をモチーフにしたのか緩やかな縁を組み合わせたような模様が描かれている。入口からまっすぐ続く広間の両脇は四足の獣をかたどった像が並ぶも、どれもこれもが崩れ原型をとどめているものはなかった。
石造りの空洞に近い建物の中では靴音が異常に響いた。前から後ろから、上からも音が跳ね返ってくるのはあまり気持ちのいいものではない。
そんな中をエディは迷うことなく進む。広間の奥へ辿り着くと、突き当たった壁の左側へ歩み寄り、見分けのつかない箇所を押す。開いた先には階下へと続く階段があった。
「シュリ、あまり先に行かないで」
あちこち覗くようにして興味深げに先を行く守護魔の姿が遠くなる。あまり視界がいいとは言えない中で、ともすれば鋼色の姿は闇に紛れてしまいそうだ。わかっていると答える声も反響して、恐ろしく遠く聞こえた。
抜けたすぐの場所に燭台が置いてあった。すかさずエディが明かりを灯した。橙色の炎が周囲を照らす頃合いを見るように、軋んだ音を立て扉が閉じ、蝋燭以外の明るさが遮断される。
「アイーシャは竜の存在って信じてる?」
暫く無言で歩いていたエディが不意に問うた。相変わらずの暢気な口調のようでいて、ほんの少しだけ真剣なようにも感じるのは、歩くたびに揺れる炎が赤と黒の奇妙な陰影を作るこの雰囲気のせいだろうか。
「今はいないわ」
「実在したと思ってるかどうかの話だよ」
「いたんじゃないの? だって、世界は竜が創ったんでしょ」
世界を創造したのは神獣である竜だと言われる。紫竜が大地を青竜が海を創った。火を司る赤竜と風を使う緑竜が天地を混ぜて今の地上に自然を創り、そして白竜が天脈を、黒竜が地脈を生み出し、地上には様々な命が溢れることとなった。真偽の程は定かではないが、少なくともこの世では小さい子供のうちから幾度となく語り聞かされる創生神話だ。
「信じてるのかい?」
どうかしらとアイーシャは肩を竦める。
「少なくとも魔物使いである以上は信じてると言っておくわ。竜の末裔だとかいう根拠のない先祖説もあるのよ、魔物使いって」
「本当かい?」
「こじつけよ。でも」
そうあってくれたらいいとアイーシャは答えた。そうすれば胡散臭いだけの魔物使いも少しは救われる気がする。
「それなら朗報だね」
「朗報?」
「ここは遥か昔、金竜が造った寺院だそうでね。竜使いが暮らしていたらしい」
「……金竜?」
呟くのにエディが微苦笑を浮かべる。
「あくまで伝承だけどね」
創造神話に出てくるのは白黒を筆頭に赤、青、紫、緑である。銀はおろか金などというものは出てこない。
「もしそれが本当だったとして、なんでこんなところに?」
さあねとエディがアイーシャの腕を引いた。見ればぽっかりと空いた穴があった。
「穴が掘りたかったのかもしれないね」
「穴掘りついでに自分の寺院にしたってこと?」
それはなんともご苦労なことだ。
「で、それが見たくてこんなところにきたわけ?」
「ちょっと借りたいものがあるんだ」
借りると言うことは返しに来るのだろうか。その時の護衛は遠慮したい。もし万が一にも護衛をさせられるのであれば、今度は地上で待たせてもらうことにしよう。
「多分、ここにある」
「多分? 多分でこんな苦労させられてんの」
「君は私に雇われた護衛だろう? 文句は言いっこなし」
「前払い、半分じゃなくて八割にしてもらうんだった」
「先に全額渡すと言ったのに断ったのは君だろう? なんだったら今払おうか?」
「……いいわ、もう」
本来の仕事の資金管理は村で行う。請負時に前金として半額、残りは仕事の終わりに魔物使いが直接受け取り、それがそのまま魔物使いの取り分となるのが通常だ。
今回は直接なので正直どうしていいかわからなかったのだが、とりあえず半分を前金としてもらっていた。とんずらする可能性を考えると――恐らくはシュリに止められるだろうが――全額もらってからでは悪いかななどと考えたというのもある。だが、あの階段の恐怖だけで契約金以上の苦労を味わったような気がする。例え今更全額もらって逃げたところで、儲かった感は既に皆無だ。
「どうでもいいけど、こんなぼろ屋に使えるものなんてあるの? 見た感じ壊れた石ころばっかじゃない」
エディが苦笑する。
「アイーシャにかかると歴史も芸術も虚しいものだね」
「そんなもので暮らしていかれないでしょ」
「まあ、酷く現実主義なのはわかっていたけど」
「それってロマンを解さないって言いたいの?」
「そこまで断言するつもりはないよ」
目の前に重厚な扉が現れた。表面を埋めているのはびっしりと施された模様。揺らめく炎に照らされると、そのどれもが非常にリアルに描かれた目玉のようで薄気味悪かった。金竜が作ったという寺院。金竜とは間違いなくは趣味が合わないだろうと思った。
いくつも並んでいる中からエディは迷わずにひとつの扉に向かう。重く耳障りな音をたて、長い時間動かされなかった扉が僅かな抵抗を見せる。アイーシャに燭台を預けたエディが無理やり押し開くとそこには大きな空間が開けていた。広すぎる二間続きのその部屋は不気味なことに明かりがないにも関わらず、どうしてかほんのりと明るかった。
調度類が散乱していた。黒く変色したテーブル、黴すらも繁殖を諦めたのだろう崩れたソファらしき残骸。何が描かれていたのかわからない額縁の一部が壁にかかっている。かつては豪奢であったろう天蓋のついた寝台が中央でかろうじてその形を維持していた。
絨毯が敷かれていたらしい。床を踏む感触が変わると同時に、一歩ごとに明らかに身体に悪そうなものが舞い上がる。
誰かが暮らしていたのか。エディが言うようにそれは金竜や竜使いだったのだろうか。
「……」
竜使いは竜と同じく殆ど伝説上のものだ。魔物使いの究極の姿だと言われ、強い力と魂が必要で、実際にはあり得ないと考えられている。伝説だろうと現実だろうと、今となってはどれだけ強い魔物使いがいたとしてもその存在が現実になることはない。既に竜そのものが存在しないのだから。
「借りたいものってこの部屋にあるの?」
「恐らくはね」
口元を覆っているせいでエディの声は不鮮明だった。
「エディ、あのあたりだけ明るくない?」
天井は何枚もの板を合わせたような格子状になっていた。その一部、寝台のちょうど真上の数枚だけが奇妙に明るい。この明るさが部屋をぼんやりと照らしていたのだ。エディもそれには気づいていたようだが、如何せん手が届かない。どうやらその場所を確かめるための手立てを探っていたものらしい。
アイーシャは手近にあった椅子だったと思しきものに手をかける。布張りだった箇所が腐食してなくなり、木枠だけになってしまったものだ。何度か手で押して強度を確かめると寝台の近くへと運ぶ。
「押さえて。あたしが登るわ」
「危ないよ」
椅子を備えると勢いよく埃が舞う。顔を背けてやり過ごすとさっさと足をかけた。
「大丈夫よ。慣れてるから」
竜使いの部屋かもしれないと思えばいくらロマンを解さないとはいえ多少感慨深いものはある。が、早いところここを出ないと悪い病気にかかってしまいそうな気がする。健康でなくてはロマンも何もあったものではない。
「どんなものなのかわかってるの?」
「丸い、玉だ。多分、見ればわかると思う」
エディが椅子を押さえた。身軽に飛び乗って天蓋の枠を確認する。上ることさえできればいいのだ。こちらも強度は問題なさそうだった。
「アイーシャ」
これまでおとなしく部屋を見て回っていたシュリが呼ばわった。振り返るも、躊躇ったように目を伏せてしまい言葉が続かない。
「……気をつけて」
それ以上シュリが何かを言う様子はなかった。頷いてみせると、アイーシャは天蓋に手をかけて身体を引き上げた。
天井裏と呼ぶべきなのだろうか。その割にはきちんと立つことができる。入口が変わっていることから考えるとこれは隠し部屋なのかもしれない。明るさの元はこの場所に違いなかった。奥の方から届く明かりが足元を照らし、埃まみれだった部屋に比べ、ここには清涼な空気が満ちていた。
見回すとまるでひれ伏すような姿をした像がいくつもあった。大きさこそ人間と変わらないが、折りたたまれた翼と幾つもの突起を持つ頭部から竜だと思われた。
ひれ伏しているのに目はすべてこちらを向いている。角度によってその瞳に埋め込まれているなにがしかの宝石がまるでこちらを睨むように輝く。
息を殺してアイーシャは足を進めた。早足で進みたいが、急いだらこの竜たちに襲われそうな気がしていた。無機質なのに侵入者を拒もうとするような奇妙な気配。心臓が早鐘のように鳴り、手のひらに汗が滲む。ともすれば急ぎそうになる自分の足を内心で叱りながら、一歩一歩を丁寧に歩く。
まるで道案内のように居並ぶ竜の間を抜けた正面、一際明るくなった場所には台座があった。不自然な明るさは恐らくはこのためだろう。そこには白く輝く小さな玉があった。石を削って造られた人間の両手。何かに向かって奉げようとするような形の手。玉はその手に包まれるようにして置かれていた。
アイーシャの掌にも収まるくらいの小さな玉だった。特に何も感じない、ただの真珠色の玉は冷たくて氷のようだった。
「お借りします」
思わずそう呟いたのは、やはり漂う雰囲気が普通ではないせいだろう。そして背後を振り返るのにはものすごく勇気がいった。大きく息を吸い込んで踵を返すと、やはり変わらず頭を垂れる竜の像が並んでいるだけだった。
――これはなんなのだ?
そんな疑問が浮かぶ。かつては金竜のものだと言われる朽ちた場所。そこにあった小さな玉。どちらかといえばこちらの方が竜の宝ではないのか。
ここに寄るのは野暮用だと言っていた。それはとんでもない嘘だ。しっかり目的があって立ち寄ったのは明白だ。この玉が目当てで明らかにこれを取りに来た。だとすれば、途中で出くわした賊は待ち伏せなのではないかと思えた。この玉がここにあることを知っているなら追うよりも待つ方が確実だ。
これは貴重なものなのだろうか。勿論それは愚問だ。貴重でないものを追っ手がいる身分でわざわざ取りに来るはずがない。
「一体、なんなの?」
この仕事はよくわからない。何に向かって動いているのか。何に巻き込まれているのか。
「……巻き込まれる?」
己の思考に思わず呟いて足が止まる。
単なる仕事のはずだ。巻き込まれる理由はない。それでもそんな風に感じるのはなぜだろう。
――シュリの態度のせいだろうか。
竜の宝を持つ青年。仕事を引き受けることに難色を示したシュリ。最終的には了承したが、反対した理由も了承した理由も明確に述べてはいない。
シュリは何を思って反対したのか。そして何を考えて意見を変えたのか。
さっきもそうだ。アイーシャを呼び、何を言いたかったのか。伏せた瞳。どうにも切ない色を宿した、あの瞳。今回の仕事について話した時もあんな目をしていた。
自分はシュリのことを何も知らないのだと改めて思う。結局行き着くところはそこなのだ。そもそもこの仕事を引き受けた大きな理由はそれではないか。思うことがあるなら言ってくれればいいのに。打ち明けられないほどに自分は子供で頼りないと言うのだろうか。
なんだかわからない「竜の宝」とやら。そしてそれに関わると思しき手の中にある冷たい玉。これは大切な相棒を知り得る手がかりになるだろうか。
聞いても答えてはくれないのだろう。話してくれなくてはわからないのに。伝えてくれなくては一緒に抱えることはできないのに。一緒に考えることができないなら、一緒にいる意味はなくなってしまうのに……。
守護魔だと宣言してまで一緒にいたいと願っているのは自分だけなのだろうか。もしかしたらシュリはそんなことを望んでいないのかもしれない。けれど、それだって――。
「言ってくれなくちゃわかんないじゃない!」
アイーシャは拳を握る。
「なんか腹が立ってきた」
往きとは違い、戻る足音は荒かった。竜が襲ってくるかもなどという考えは、既にアイーシャの頭からはなくなっていた。
「あったわよ」
身軽く降り立ったアイーシャが玉を見せる。よかったと言って手を伸ばしたエディの目の前で、再び掌に隠して見せる。
「アイーシャ?」
「これは護衛とは別よね。なんたって野暮用なんだし。あたしが取ってきたんだからあたしのものにしてもいいんじゃない?」
「なんだって?」
驚いたのはエディだけではなかった。シュリもまた驚いたように目を見開いていた。
「アイーシャ、それは食べられないし、売ってもお金にならないよ?」
そういったのはシュリである。
「失礼ね。あたしをなんだと思ってるのよ」
変に真面目な口調なのが余計に腹が立つというものだ。
「これは、あたしが納得したら渡すわ」
「納得ってどういうことだい?」
無理やり奪おうというような様子はなかった。かえって面白そうに、あくまでも暢気な口調が問う。
「ちょっと……思うところがあるのよ」
目を上げるとシュリと視線が重なった。大きな紫の瞳は心配そうでもあり、探るようでもありいつになく濃い複雑な色を湛えている。
「うまく説明できないんだけど、言ってみれば保身かしら」
「まあ、構わないけど。ただ使う必要な時には貸してもらえるかな」
わざわざ取りに来た程のものなのに固執しない態度は、なんとなく不信感を抱かせる。
「……考えておくわ」
それから、とアイーシャが続ける。
「安心して。食べたりしないから」
「それはよかったよ」