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 朝起きても、過去にいた。

 (さて・・・どうしたらいいのかしら?)

 日付を確認し、恐ろしいことが起きるまで、あとどれくらいの時間があるかを考えた。

 どうして、時間が巻き戻ったのかは考えないことにした。考えたところでわからない。それは神の領域だ。いや、もしかしたら人間が対処できるのかもしれないが、私にはできない。

 (まだ時間はあるわ。あの日、お茶会の席で私が殺されそうになって、メイリーンが死んで・・・それから全てが変わってしまった・・・)

 あれは今から半年後の初夏のお茶会の席での事だった。王族が主催したお茶会だったため、大騒ぎになった。殺されかけた私は、メイリーンの家族への説明もままならないほど、警察に取り調べを受けさせられた。そして、そのまま・・・

 悪夢のようだった時間を思いだし、寒気を感じた。厚手の上着を着込み、ベッドの毛布もしっかりと身体に巻き付ける。

 それでも、身体の震えはおさまらない。

 昨日のようにパニックを起こすことはないが、誰かを呼びたくてたまらなかった。しかし、それをぐっとこらえる。

 「大丈夫。今はまだ、大丈夫・・・」

 自分に言い聞かせるように呟く。

 アレクサンダーに教えてもらったお祈りを唱えてみる。そういえば、今日も一緒に勉強する約束をした。勉強は午前中だ。朝食をしっかりとって、笑顔で彼に会いに行きたい。

 だから、気持ちを落ち着けなくては・・・

 私は、立ち上がって深呼吸した。

 大丈夫、寒くはない。身体を動かして、温かいものを口にすれば震えはおさまるはずだ。

 思いきってバルコニーへ出てみる。

 花は咲いていないが、美しく整えられた庭が眼下に広がっている。既に庭師たちが箒を手に、庭を歩いている。

 「奥様、おはようございます」

 メイリーンが少し慌てた様子で、バルコニーへと出てきた。

 「寒くありませんか?暖かい靴をお持ちしましょうか?」

 「いいえ、もう戻るわ」

 「わかりました。お茶はいかがですか?」

 「ええ、お願い」

 メイリーン以外のメイドも部屋にいた。みんな、いつもより気を張っているきがするのは、昨日の事があったからだろう。あんな風にパニックを起こすことなど、この屋敷に来て以来初めての事だった。驚いて当然だ。

 (アレクサンダーが一緒に泣いてくれたお陰で、冷静に考えられるようになったわ。こんなに助けけられるなんて・・・)

 そう考えていると、扉がノックされた。

 「奥様、アレクサンダー様からお手紙です。朝食をご一緒に食べたいと」

 メイリーンが笑顔でそう言った。

 他のメイドたちもそれを聞いて笑顔になる。

 私もだ。

 「ええ、行くと伝えてきてくれる?」 

 「はい」

 メイリーンは張りきって部屋を出ていった。



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