2022年02月 たらこくちびる毛 さまFA②
暗礁に乗り上げたレオンハルトのイラストはすっかり諦めてしまっていた。
1月に節句さんのFJを仕上げ、割烹でしましまにゃんこさまへ贈ったFCを紹介すると、割烹を見た鶴舞麟太郎さまよりこんなコメントが入っていた。
「一瞬、コミックサイトの広告かと思いましたw」
え!? 何それ、メチャメチャ面白くない?
なろうを読んでいるとやたらと出てくる細長いバナー。あんな感じで、商業バナーのふりをして小説バナーを紛れ込ませられないだろうか。ちょうど空き時間が7時間ほどできたので、突発的にお気に入り様の小説にバナーを作ってみた。その中の一つにたらこさまの作品に対するバナーもあった。
社畜は2度死ぬ! バナー原案
社畜は2度死ぬ! バナー完成
どういうことだろう、時間が限られていたせいか、レオンハルトの顔が隠れているせいか、すんなり描けてしまった。ただ、できなかったこともいっぱいあって、もうちょっと調整したいなんて考えていたらそれこそ「コミックサイトの広告」的なイメージが頭に流れ込んできた。うわあ、描きたいけど、そのイメージって明らかに2ページマンガなんだよね。
とりあえず頭に流れるイメージを紙に落とし込んでみよう。
初期イメージ
やはりレオンハルトが決まらない。「魔王」たるレオンハルトと「おバカ」なレオンハルト、どうミックスするか。それがとても難しい。悩んだ俺が原作を読み直すとレオンハルトが着ているのは「黒いマント」ではなく「黒いコート」だということが判明。ちょっとちょっと、何やってんの俺。なんで今までマントだと思っていた? マントだからこそ「洋服を着ている」という設定も無視して筋肉質の裸で描いてたのに黒コートとなると話は変わってくる。
黒コートのレオンハルト
コートを着せるとどうしたって人型になってしまう。となればキャラクターの方向性は決まった。コートを着せて靴も履かせる。こうなったら指も人と同じ5本指だ。コートにするだけでこんなにすんなり決まるなんて、今までの俺の苦労はいったいなんだったんだ。あとはこのキャラクターでコミカルな場面をどう描くか。
わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です
コミカルさを出そうと毛先を丸めて全体的に柔らかくしてみる。ほら、漫画のギャグシーンでキャラクターがデフォルメされるように、場面によって使い分ければいいんだよ。しかしこのコミカルレオンハルト、渥美清に見えるのは私だけだろうか。なんだ、虎ライオンにしたくないと思っていたら寅ライオンになっちゃったか。まあこのイメージで全体を描きなおしてみよう。
広告漫画 再コマ割り
これね、実際はあっち描いてこっち継ぎ足してって描いたから、シリアスレオンハルトがマントのままになっていたり、時間的にはちぐはぐになっている。
最終的に全部決まったら描きなおすとして、どうにも決まらないコマが3つある。1ページ目中央のレオンハルトと同ページ最後のコマのレオンハルト。それから2ページ目ラストのコマ。それらのコマを描き直してみよう。
コマ修正
ずんぐりむっくりのレオンハルトが居るのは、まだ獣体型の獣人に未練があるからかな。
そしてラストのコマ、ここはこのマンガ最大の見せ場をもってくる。物語序盤の見せ場といえば会議室のシーンと勇者との戦闘シーンがあるんだけど、事件は会議室では起きないし、勇者との戦闘もメインはレオンハルトで主人公は載せにくい。ということで強引だけど1章の終わりのシーンを持ってこよう。
ラストのコマ背景
ちょっと主人公の骨が複雑なので別の紙に描いて重ねることにした。というかこの主人公、キャラ作りに何の工夫もしてないがいいのだろうか。だって骨だからね、デザインも何もあったものじゃあない。
骨主人公
描いてみて思ったんだけど骨を描くのって難しい。かなりいい加減にアバラ骨なんかを端折ったけど背骨はとてもカッコイイ。いつかもう一度きちんと描こう、というか人骨模型が欲しくなってきた。
全部で4枚になった下描きをPCで合成したのがこれ。
下描き
ていうかさ、レオンハルトであれだけ苦労したってのに、主人公とかその他の登場人物はほぼ一発描きよ。だから物語の設定よりも俺の趣味が色濃く反映されている。でもね、その中でも自信があるのは勇者。たらこさまの作品に出てくる勇者は大抵テロリストだからね、誰が描いてもこうなるし、だれもがコレをイメージしていることだろう。
じゃあいつものようにPCに取り込んだら下地処理をして、線をなぞっていくよ。これだけキレイに下描きすればその線を生かすこともできるけど、前回細かい線がつぶれたから今回はPCで線画を描いてみる。
線画
こうやって絵がいっぱいあると、なんとなく描きたいところから描いちゃうから、実際にはこの通りの順番では描いていないけど、編集の都合でまとめちゃってる。じゃあ次はキャラクターに色をつけてみよう。
キャラクターベタ塗り
あとはひたすら陰影をつけていく。今回も青系、赤系、緑系で塗り重ねていくよ。基本的には1ページ3コマ目までと2ページ最後のコマはシリアスに、その他はコミカルに描いていく。
陰影レイヤー
次に背景。カラーマンガで背景が白だと寂しいから、全部のコマに色をのせてみるよ。
背景+ベタ塗り
シリアスレオンハルトのバックだけ不穏な空気を出すために雲模様にしたよ。稲妻にしようかとも思ったんだけど、師匠のFAを描いたときに使った雲模様を入れ込んだら案外良かったのでそのまま使うことにした。
ちなみにね、1ページ目4コマ目と5コマ目は黒板に書いて説明するようなイメージにしたくって背景を緑色にしている。そこにチョークっぽい色で線画を描いてみたよ。
チョークの落描き追加
じゃあここまでのを全部を重ねてみようか。
背景+ベタ塗り+陰影
さっきの黒板のコマ、黒板の緑とレオンハルトのコートやたてがみが重なって境界がわかりにくいんだけど、袋キャラにするとチョークの線が消えちゃうから、コートの端にハイライトを入れて境界線をハッキリさせている。
ここから細かい部分を描き込んでいこう。まあ、主にラストのコマなんだけど。
ラスト描き込み
これで絵の部分はほぼ完成。次は文字かな。
文字追加
セリフはともかく地の部分は背景に溶け込んで見えにくい。いつもの通り袋文字にしていくよ。
袋文字
ここからは細かい調整。まずはラストのコマ。白い生物に白い骨が重なって見えにくいから、これを袋キャラにしていく。でもせっかくの戦闘シーンなのでそれっぽい色で袋にしてみようか。
熱いバトルシーンみたいだぜ
う~ん、主人公が燃えているな。火葬場か? なんかすごいスキルでも発動する直前みたいだけどこのキャラクター、腕力は最弱でこんな矢面に立つキャラじゃあないんだよね、たらこさま、許してね。
次は1ページ最後のコマ、レオンハルトのジタバタ感を出すために集中線を引こう。
集中線追加
ちなみに腕とか脚の動きを出すためにスピード線を入れているんだけど、ここは線じゃあなくって陰影の色を線状にしている。なんとなく動いているように見えればいいな。
もう一つ、シリアスレオンハルトが迫力に欠けるような気がするので、背景色を変えてオーラを纏わせ。全体的に黒っぽくして目だけ光らせよう。やっぱさ、魔王たるもの目くらい光らなきゃ、なんといってもネコ科の魔王だし!
暗黒魔王の誕生
と、そうそう、忘れるところだった。コミックサイトの広告って「コミック何とか」とか「何とかコミック」とか、それぞれのサイトのロゴマークが入ってるよね。え? 要らない? 要らないっていっても作っちゃうよ、なぜなら俺はロゴデザイン作るの大好きだから。
たらこロゴ
なにしろ「たらこ」だから、楕円を組み合わせてピンク色をのせてみた。たったこんだけでもキレイな線で描いてあると雰囲気出るでしょ? これを載せていよいよ完成だ!
社畜は二度死ぬ! 宣伝コミック
やっと完成~! でもこれはもう一度チャレンジしたい題材。何しろレオンハルトが未だにピンと来ていない。でもね、精いっぱいやったよ。さあ、たらこさま、喜んでくれるといいけれど。マンガを引き渡すとどうやら笑ってもらえたようでホッと一安心。そしてやはり、勇者はイメージ通りだったとのお言葉。やったね。
12月にレオンハルトのイラストを失敗して、年明け2月にようやく完成。ずいぶんかかっちゃったけど、これでようやく落ち着いたよ。さて、じゃあ次は何を描こうかな。
お読みいただきありがとうございました。「次は何を描こうかな」なんて言葉で締めましたが何も描けていません。メモ程度のものは描いているのですが作品として描きあげる時間がなく、しばらくお休みします。
月1回は更新したかったのになあ。
※4月20日更新分 用語解説追加
【獣人】
【スピード線】
【たらこくちびる毛】
【勇者】




