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英雄達の師   作者: もしゃもしゃ
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暗闇の先


── その空間の第一印象は『闇』だった。


先程までの明るく白かった聖堂とは真逆。

彼らの今いる空間はただ暗く、光が全くない。

だが、不思議なことに彼らは互いの姿を認識することができ、

先を行く大臣の背も見えた為、その後を追うと徐々に光が見えてきた。

その光が魔力で発光するランタンだと判断できるほどに

それのそばまで進んだ三人が後ろを向くと、そこには黒々とした壁があった。

『真っ黒な煙の立ち込めた空間が見えない壁によって遮られている』ような状態。


セレスが大臣に


「この空間は何なんですか?」


と、尋ねると、大臣は


「この空間内では魔法が発動できず、

 光が存在できないということしか現時点ではわかりません」


と、答えて、先へと進みますよ、と続けた。


先に進みながらよく見ると、今彼らが歩いているのは

等間隔に並ぶ黒々とした角柱に挟まれる通路。

柱にはランタンが下げられ、

並ぶ柱同士の間には先ほどの空間と同じような『闇』があり、

柱の向こうに何があるのかは見えなかった。 ……少なくとも三人は。


しばらく進むと、いくらか崩れた柱が増え、研究員であろう人も増えてきた。

何人かは破片を運び、何人かは柱にかじりついて何かを話し合っていた。


クロは大臣に尋ねる。


「彼らは何を?」


「ある者はこの場所の構造や様式、素材を調べ、

 ある者柱に刻まれている模様などを調べていますな」


「進捗の程は?」


「柱に鑑定系統のスキルを妨害する術式が組まれているようで、

 素材の特定は難航していますな。ただ、

 今まで発見されてきた遺跡と似通った模様があったとのことで

 いつの時代はどうにか特定できるかもしれません」


「なるほど…」


また少し進むと、広間のように広い場所に出た。

中心には大きな彫像のようなモノがあり、上の大部分が暗闇に呑まれ、

いくらか崩れた破片があたりに散開している。

その像の前で必死に胸元で何かを書いている一人の研究員へ

大臣は声をかける。


「リシェル君、少し案内を頼みたいんだが…」


「ほんの少々お待ちを…!」


そう返事をしたその人物は、

カリカリカリカリ、

と何かを書く音をこの大きな空間に暫く響かせた後、

クロ達の方に振り向いた。


まず目を引くのは、

頭に装着された、地球で言うなら『ゴーグル』のようなモノ。

セレスより少し高い身長、

肩より少し下まで伸びた淡い藍色の髪は所々大きく跳ねてボサボサ気味。

前髪で半分近く隠れているがその瞳は朱色のトパーズに似た色をしている。

何やら黒い液体の飛び散った跡が付いた丈の長い白衣を、

黒を基調とした軍服のような服の上にまとい、

腰には小物入れが右に三つ、左に二つ付いたベルトを下げている。


─と、振り向いた途端に


「く、クロ先生…!?」


と、素っ頓狂な声を上げ、その場にいた全員がクロを見、

リシェルはクロに向かって駆け出す。

クロはそれを特に気にするでもなくリシェルに声をかける。


「久しぶりだな、リシェル。相も変わらず髪には無頓着かい?」


クロの目の前まで詰め寄ったリシェルは、


「か、髪のことよりも…!

 ど、どうして先生はここにいるのですか…?」


と、どこか突っかかったようなしゃべり方でクロに尋ねる。

その声色は女性のもの。


「皇帝陛下からの依頼でね。

 魔導兵研究に協力して欲しい、とのことだったんだが、

 そうか、君も関係者だったとは」


「か、関係者だなんて…。

 私は古代技術が発見されるかもしれないと聞いて…。

 け、結局は個人的な研究ですので…」


「そうは言っても、

 仮にも君は『()()()()()()()()()()』の一人なんだから、自信を持って」


「は、はいぃ…」


彼女の名はリシェル・フォーシャン。研究者である。

語学、考古学、古代術式を主に担当分野とし、

古代文化を現代の技術に組み込んでより良いものにするための研究をしている。

彼女は極めて珍しい体質をしており、それは──


「そういえば、スキルの調子はどうだ? リシェル」


「お、大きな変化はありません。良くも悪くも…。

 最近は何も問題なく発動できます…」


─ 常人に比べてあらゆるスキルのレベルが高いにも関わらず

  その真価が発揮されないこと、である。


彼女の『ゴーグル』もクロ謹製の魔導具(マジックアイテム)で、

装着することで彼女が持つスキルを代わりに発動できる、というもの。

ゴーグルである理由は彼女のスキルが『ミる』ことに特化しているためである。

これのおかげでスキルは使えるため特に生活や研究の上で問題は起きないが、

大元の、『何故、スキル発動に異常がきたされるのか』については

まだクロも分かっていない。


「そうか…。『ゴーグル』の調子も大丈夫か?

 違和感を感じたらすぐに連絡してくれよ」


「はい…」


この会話を見ていた大臣は、


「皇室要保護重要研究者までも貴殿の生徒とは…。

 近衛兵隊長、聖女、皇室研究者、こうも来ますと

 もはや皇帝陛下すらも生徒だといわれても信じてしまいそうですな…」


と静かに呟いた。


「さて、私は少し『上』の研究員との用事があるので

 先にリシェル君はここの案内をしつつ、

 魔導兵の研究エリアまで彼らを案内してくれるかな?」


「り、了解です…」

 

そうして大臣は今来た道を戻っていき、クロ達は先へと進んだ ──





─── 脅威個体の侵入を確認。

    警戒レベルを『最大』に切替。


─── 防衛機構起動。


── 魔導殲滅機動兵(オーツピュリオン)、稼働準備──



〇リシェル・フォーシャン

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