人間不信だから隙あらば自分語り
小学生の頃、俺はいじめられていた。前髪が長く、暗いヤツだったので、対象としては申し分ないのだろう。
ある日、クラスの中心のイケメンで女子に人気のある佐々木君にいちゃもんをつけられた。
日々のいじめのストレスが限界に達した俺は、ブチギレて佐々木君をボコボコにしてしまった。
無我夢中だった。その時のことはほとんど記憶にない。とにかくこいつを許せないという気持ちでいっぱいだった。
教師からは俺が悪いと注意され、クラスのみんなからは白い目で見られるようになった。
いじめはなくなったので少しは気が晴れたが、人間に対する憎悪が増していった。
中学生の頃、俺はぼっちだった。前髪が長く、暗いヤツだったので、相手にされなくて当然だろう。
俺はそれでいいと思った。
人間は信用に値しない
友達を作っても損するのは自分だけ
心の中では俺のことを悪く思っている
そういった感情が、俺を安心させてくれる。
ひとりでいることを肯定してくれている。
ぼっちでいることは、間違っていないのだと。
中学でも、いじめはあったようだが、俺はとにかく空気になることに徹していた。
"友達が一人もいない" ということは
"接点がない"ということなので、誰からも相手にされないのだ。
そうすることで、友達はいないが、いじめもない、平和な日常を過ごせた。
そして高校生になり、相変わらずのぼっち生活が2ヶ月程経ったある日____
不良に絡まれていた。
3人のよくいるチャラい系のヤツだった。
金貸してくれみたいな感じのノリだ。
見た目的にはサル、デブ、オラウータンみたいな感じだ。
まさか自分がこの被害者になるとは、思ってもみなかった。
怖い。帰りたい。なんでこんな目に。
ネガティブな感情がどんどん押し寄せてきて、何も発言しなかったことに怒ったのか、サルに顔を軽く殴られた。
____痛い。
____血が出ている。
____なんでこんなことができる。
____所詮同じ人間なのに。
____俺は舐められているんだ。
____こんな生きる価値のないゴミ共に!
ふつふつと湧き上がる感情を抑えきれず、
俺は起き上がり、叫んだ____。
そして暴れた。力の限り暴れた。
3対1という不利な状況などおかまいなし。
体当たり、相手の身体にしがみつき、頭突き、噛みつき。
殴り方なんてわからないから、がむしゃらに腕をぶん回し、そして、叫んだ____。
俺を 舐めるな 人間如きが____。
終わった後の現場はひどいものだった。
お互いボロボロで、地面に突っ伏していた。
どうやって喧嘩したのか、記憶も曖昧だ。
勝ったのか、負けたのか、それすらよく分からない。
同じく倒れている不良が微かな声で呟いた。
____バケモノ。
全身が痛い。そのまま気を失いそうな俺の視界に、
猫が佇んでいた。
しかし少しおかしい。
こいつの身体、光ってないか?
幻覚じゃないかとすら思えるくらい綺麗な白い猫だった。
もっと見ていたいくらいだが、意識が朦朧としてきた。
途切れていく意識の中、ふと声が聞こえた。
____お前に、誰にも負けない力を。
その日から、俺の日常は壊れていく____。