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第71話 17VS1500

「炎……?炎の化物……?ま、ままま、まさか……!?」


 炎王カウダーの姿を見て、デュナミク王国の兵士たちは震え上がった。

 かつてデュナミク王国の半分を焼き払ったと言われる、炎王カウダーの伝説。

 それは今でも根強く残っており、幼少から聞かされてきた彼らには恐怖として刻まれている。

 しかし、それでも彼らが握りしめた剣を離すことはない。

 目の前にいる炎の化物より遥かに恐怖すべき相手が、後方に構えているのだから。


「ウオオアアアアアアアア!!!」


 カウダーの近くにいた兵士30人ばかりが、恐怖を跳ね除けんと叫びながら突撃する。

 いずれも、この国に初めて足を踏み入れた時のケインよりも実力の高い、黒の鎧を身に纏った兵士たちだ。

 尤も、カウダーに及ぶほどのものでは到底ない。


「しゃらくせェなァァア!!!!」


「わあああああああああ!!」


 右手を振るだけの動作で、カウダーは辺りに強烈な熱風を発生させ、向かって来る兵士たちを纏めて吹き飛ばした。

 熱風は後方にいる兵士たちをも巻き込み、徐々に勢いを強めていく。

 広範囲に渡る攻撃によって最初に主導権が握られるかと思われたその時、突如として熱風はかき消された。


「早速だがよォ、ケイン」


 誰が熱風を打ち消したのか、カウダーにはその目星がついていた。

 自身が復活してから、絶えず鋭い視線を向けている男に違いなかった。

 カウダーの左足から炎が地面を這い、導火線のように伸びていく。

 炎はまたしても、熱風と同じ場所で消滅した。

 その先にいた人物こそが、カウダーへ視線を向けていた張本人、総司令官ヴァンピロ=ビスだった。

 ヴァンピロとカウダーの視線がかち合い、両者から闘気が立ちこめる。


「あいつは俺にヤらしてくンねェか?」


「ヴァンピロ……でも……」


 何故ヴァンピロがカウダーに目をつけるのか、そしてカウダーが何故それに応じようとしているのか、その理由をケインは理解していた。

 カウダーは相手をデュナミク王国の総司令官としては見ていない。

 だからこそ戦いにおけるモチベーションの不安定さが心配ではあったが、次に発せられたカウダーの声色を聞き、その心配は完全に払拭された。


「頼むよ」


 俺がやらなければならないという、強い使命感を持った言葉だった。

 それを聞いてはケインも納得せざるを得ない。

 返事をしようという時、先に声をかけたのはゴアだった。


「任せて良いのだな?」


「てめえにゃ言ってねェンだよクソ親父」


「わかった」


 ゴアに悪態をつくカウダーだったが、ケインには別人のように爽やかな笑みを見せた。

 つい先日知り合ったばかりの、それも殺し合いから始まった両者の間には、長年かけて築き上げるよりも強固な信頼が結ばれていた。



「ただしやるからには勝てよ。それから、勝つよりもまず生き残れ。殺されそうになったら、何を置いても生き残ることだけ考えろ。絶対死ぬなよ」


「ヒヒャヒヒ。てめえだって勝つこと最優先でいつも動いてンだろ?てめえ自身よりも大事なモンのためによォ。だがいいぜ、てめえこそ、俺があいつブチ殺すまでに死にやがったら絶交だかンな」


「絶交?」


「ごめン、嘘。でもトモダチに死なれちゃ悲しいからよォ、死なねえでくれよな」


「……うん」


 実は本当に別人なんじゃないのかと思うほど素直なカウダーが、ケインには可愛らしくも妙に不気味でもあった。

 気味の悪さをより強く感じていたのは、そのやり取りを聞いていたゴアと、もう一人。

 ヴァンピロは不快そうに舌打ちし、後方で構えていた女王へと具申しようとした。


「陛下」


「あの炎の怪物の始末はあなたに任せましたよ、ヴァンピロ総司令官」


「……よろしいので?」


「あれ以上に強い勇者や魔女、竜王ゼブラと……魔王ゴア。少数ながらこれだけ強い者たちが集まったのです。最低でもあの4匹はわたくしが片付けねばならないでしょう」


 ロレッタはケインへと目を向け、ケインを誘うようにゆっくりと、更に上空へと浮上を始めた。

 戦いの場を空に移すことで、国への被害を抑えるためである。


「あとの12匹はジェラルド警備兵長なりに始末させなさい。ここまで我が国に無断で足を踏み入れた以上、奴ら17匹は全て死罪です」


「御意」


 ケインもそれに続こうと飛ぶ前に、ライガとシーノへと声をかけた。


「あとは任せたぜ」


「任せろっての。ヴァンピロはそこの……カウダーさん?が、倒してくれんだろ?それに10人も味方が増えたんだぜ?さっき予定してたよりずっと楽だよ」


「敵が1000人超えてるのは変わりないけどね。ま、私たちはなんとかするから、ケインたちもなんとかして」


 シーノが手を振り、ケインもそれに応じながら浮上する。

 ゴア、クラリ、シマシマがそれに続き、残されたライガとシーノは周囲を見渡した。


「……さーて、1000人以上か。まずどいつから……」


「迷ってんなら俺らと遊ばねッスかぁ?グラブの戦士さんたちよォ」


 動きが固まっている兵士たちをかき分け、偵察部隊長ライモンドと侵略隊総隊長グイドが歩いてきた。


「……お前ら……!!!」


 元来好戦的なライガとシーノは、二人の顔を見るや一層闘志を漲らせた。

 かつてグラブ国を襲った際、前線に立って人間爆弾を投下した人物こそが、このライモンドとグイドなのだ。

 特にライガにとって、ライモンドは自身を捕らえた因縁の相手とも呼ぶべき存在。

 一度たりともその顔を忘れたことはなかった。

 6年前まで遡る募り募った怒りが、全身を熱く滾らせる。

 普段ならば抑える役を務めるシーノだが、今回はとてもそれどころではなかった。

 かつての怒りとトラウマを心の秤にかけ、トラウマに傾かないようにと必死だったのだ。

 そんな二人の胸中を知る由もないグイドは、ライモンドを窘める。


「今度の敵では一番若い二人だが、決して油断はならんぞ。何しろ侵略隊の副隊長をも倒す連中だからな」


「わかってッスよぉ。けどここまで()()()()()()()()()ちゃあねえ、さぁすがにムカついてンスよぉこっちもねえ」


「あ?」


 ライモンドの言葉に、ついにライガとシーノの怒りは頂点を迎えた。


「誰が先に売った喧嘩だよ?お前らはずっと売ってきてんだよ!!!世界中に喧嘩をよぉ!!!!!」


「私たちはただ買っただけよ!!!あんたたちが売った喧嘩をね!!!!!」


 若い二人の戦士が走る。

 ライモンドとグイドは剣を手に取りそれを迎え撃とうとしたが、ライガとシーノはそれをすり抜け、上司の背を眺めて油断していた兵士たちに襲い掛かった。


「なっ!?」


「てめっ……!!」


 ライモンドとグイドが驚くのも無理はない。

 怒りのままにただ攻撃を仕掛けてくるに違いないと、そう思っていたのだから。

 だが、ライガとシーノは怒りに身を焦がしても、思考はまともに働いていた。

 自分たちは確実にライモンドとグイドを倒さなければならないが、それはあくまでも敵の兵士1500人の一部に過ぎない。

 仮にライモンドとグイドを倒せたとしても、他の兵士がケインたちに牙を剥き、ロレッタ打倒を阻まれては意味がないのだ。

 炎王カウダーや海賊、そしてヒノデ国の者たちと共に、地上にいる敵は全て倒さなければならないという使命を、決して忘れずにライガとシーノは動いていた。


「でぇりゃあああ!!」


「ちぇえりゃあっ!!」


 一呼吸の間にライガは13人、シーノは11人倒し、そして再び驚きで立ちすくむ兵士たちの中へ潜り込む。

 体格が二人とも小柄である故に、人混みに紛れられては隊長格でも対処は困難であった。


「何をしているか!!!潜り込まれたらそこにいる全員で覆い被され!!棒立ちのまま倒されるな!!」


「つーかせめて逃げろって!やられるくらいなら逃げろ!!後で怒られんの俺らなんだから……あーもう!!」


 ライガとシーノを追って、ライモンドとグイドも人混みに飛び込む。

 急な事態に混乱している兵士たちを押し退けて追うその様は、幼子の鬼ごっこのようであった。






「うーむ、まるで忍びの如き見事な戦術。お手本にしたい……」


 遠目からライガとシーノを見ていた赤影はそう呟いた。


「お手本、できまっか?この状況で」


 数百人もの敵に囲まれている絶体絶命とも言うべき状況の中、冷静に緑影はツッコミを入れた。

 兵士たちは天守五影が潜り込めるような隙間を与えることなく、じりじりとにじり寄る。


「派手に名乗ったのは失敗だったなニンジャども。コソコソするのがウリの連中が目立っちゃあ所詮こんなもんだ」


 兵士の一人がそう言い、右手に魔力を込めだしていた。

 今にも何らかの攻撃魔法が飛んでくるという時でも、天守五影は彼らのペースを保っていた。


「最近のニンジャは派手がトレンドデース。でショ?トーリョー?」


「『とれんど』が何かは知らんが、とにかく皆いくぞ!!!忍法!!!!!」


 赤影の合図で、彼らは懐に隠していた手裏剣を一斉に取り出した。


「『四方六方八方手裏剣』!!!!!」


 一見して何の変哲もない手裏剣を一心不乱に投げるだけのその攻撃を、兵士たちは身に纏う鎧に任せ余裕で受けた。

 その全てが仕込み爆弾であることも知らずに。


「ぎぃぃやああああああああああああ!!!!!」


 凄まじい爆発と共に、数十名の悲痛な叫びがこだまする。

 後方にいた兵士たちは、その爆発の凄さに慄きつつ、ふと思った。


「あの忍者どもも、自分たちの爆弾で吹っ飛んでない?これ」


「え、馬鹿じゃん」


「馬鹿はお主らだ」


 その声に兵士たちが振り向くと、地中に逃れていた赤影と黒影の容赦ない蹴りが炸裂した。

 他の場所でもそれぞれ地中から飛び出した緑影や桃影が兵士たちに攻撃を加え、その度に凄惨な血飛沫が上がる。

 負けじと生き残っている兵士も反撃に出ようとした時、空中で血飛沫が固まったまま動いていないことに気付いた。

 側で青影が氣を練り上げていることに気付いたのは、その直後のことだった。


「『氣界念操(キカイネンソウ)・雨ノ陣、改め血飛沫ノ陣』!!!!!」


 血飛沫が散弾銃の如き勢いで兵士たちを襲い、それによりまた新たな血飛沫が上がる。

 緑影と黒影、桃影の三人はそれを羨ましそうに見つめていた。

 実直に声に出して言ったのは赤影だった。


「いいなその技、派手で。真似したい」


「フハハハ!残念!特許申請済みだ!!!」


 得意げに血飛沫を操る青影だったが、しばらくしてそれはかき消されてしまった。

 嫉妬した赤影の火遁の術によって。






「名を聞いておこうか」


「ザクロ=アケチ」


 ショーザンの娘ザクロは、1500人の警備兵の長、ジェラルド警備兵長と対峙していた。

 名を聞く時はまず自分からだろう、的な問答を期待していたジェラルドは興が削がれたような気持ちになり、俯きながら言った。


「私はこの国で警備兵長を務めるジェラルド=エレジャーコという者だ」


「よろしく」


「貴様はかの人斬りショーザン=アケチの娘だそうだな?」


「ええ」


「相当強い魔力を感じるぞ。奴には及ばずともそれに近い力は備えているのだろう」


「まあ」


「だが勝つのはこの私だ。この国を守る使命、今こそ果たしてみせる」


「そう」


「…………」


「…………」


 ジェラルドは本来お喋りな方だが、普段は決して敵と話そうなどと思ったりはしない。

 だがやって来たケインたちや天守五影の様子から、それとなく会話も楽しめるだろうというささやかな期待を抱いていた。

 よりにもよって彼らの中で最も寡黙なザクロと当たってしまったがばかりに、その期待は脆くも打ち砕かれてしまった。

 気まずい沈黙が流れるのをあえて無視し、後ろから兵士が声をかけた。


「警備兵長、我々は……」


「今は動くな。力が弱った敵を優先的に叩け。弱らせる役目は私や他の隊長が……」


 言葉が終わるより先に、ザクロが仕掛けた。

 ジェラルドの後ろにいる兵士を狙い、刀を振り上げて迫る。

 その動作に反応して兵士を庇うようにジェラルドは動き、獲物が釣れたことにザクロは微笑んだ。

 兵士を守ることを優先してジェラルドが動くことはザクロの思惑通り。

 最初からその隙を突くことを目的として行動していたのだった。

 刀が蛇のようにうねる軌道でジェラルドへと向かう。

 勝負は一瞬にして決まる、はずだった。


「え」


 ザクロの刀は、ジェラルドの剣によって易々と止められていた。

 生み出されたばかりと言えど、ザクロは決して無知ではなく、脳には天守五影が調べ上げた情報が全て知識としてインプットされている。

 その中のひとつに、デュナミク王国における戦力格差があった。

 女王ロレッタを除き、ショーザンとまともに戦える人物は一人もいないというのが、ザクロの知る情報である。

 にもかかわらず、ジェラルドはザクロの攻撃を止めた。

 何故にこの短期間でジェラルドの力量が上がったのか、他の者も同様に強くなっているのか、それは女王が強くなったことと関係しているのか、ザクロはそれらについては一切考えなかった。

 ただ、父と同じように、強者との殺し合いができることを喜び、そして、


「……そそる」


 父と同じ言葉を吐いた。

 この僅かな攻防の間に気分を高揚させたのはザクロだけではない。

 ジェラルドもまた、不敵かつ危険な笑みを見せる敵手に対して笑ってみせていた。

 つい先日はショーザン=アケチに何もできずにいた自分が、今はそれに近い実力を持つ相手とも互角以上に立ち回れる。

 女王ロレッタのために働ける。

 本来ならば主君を守る立場にある彼にとって、これほど喜ばしいことはなかった。


「いくぞ人斬り二世!!!」


「……その呼び方、いいね」






 ライガとシーノがその場を離れたことで残されたのは、カウダーとヴァンピロ、そしてヴァンピロを取り巻く兵士数名のみとなった。

 戦場と化した周囲の大騒ぎに反し、二人は互いに静かに近づいた。

 カウダーの顔からは笑みが零れていた。

 ただし、決して良い感情からではない。


「よォ……久しぶりだなァ……ロズぅ」


 兵士たちがどよめいたが、ヴァンピロはどちらにも応えず、カウダーへ冷たい視線を送り続けている。


「ヒヒャッヒヒ……見た目は随分変わっちまってよ、他の連中がどう思ってンのか知らねェが、俺はすぐに気付いたぜ。あの頃とおンなじだ……その冷てえ目はよォ……」


 言葉と共に火の粉を飛ばし、カウダーはヴァンピロを挑発する。

 火の粉はヴァンピロの肌に届くことはなく、ヴァンピロが無言の内に放った微量な氷結魔法に打ち消された。


「200年前にてめえは勇者に殺されたって、そう聞いてたぜ?なンでだ?なンで人間に生まれ変わった?なンでわざわざ嫌いな人間に?しかもなンで……なンで……」


 感情の昂ぶりと連動し、カウダーの全身の炎が噴き上がった。


「なンでてめえが()()()にいるンだよ!!!!!こっちにいるべきだろうがてめえは!!!!!」


「貴様が誰のことを言っているのかは知らんが、私の名はヴァンピロ=ビス。貴様とは初対面の、ただの人間だ。だからその話はここで終わり、それで良いだろう?」


 カウダーからの歩み寄りを徹底的に拒絶し、ヴァンピロは掌に魔力を集中させる。

 戦わないままの説得は不可能だと判断したカウダーも、右手の炎をちらつかせながら言った。


「そうかい。あくまでこの国の人間として戦うってワケかい。そンじゃあ一発わからせてやるしかねえみてえだなァ。このカウダー様御自慢の拳で、真ッ正面からよォ」


「真正面から?」


 二人の距離は徐々に狭まる。

 拳が届く位置が迫るにつれ、歩く速度が二人とも徐々に弱まっている。


「炎王カウダーの言葉とは思えんな。卑怯上等、悪辣無比、喧嘩にルールはございません。それが炎王カウダーのモットー……と、我が国の文献には残されているが?」


「そンなとこまで残ってるわけねェだろうが。逃げたきゃ逃げていいんだぜ?俺は堂々とやるが、氷王ロズはいざって時に身代わり出して逃げる、逃げの名人サマだったからなァ」


「氷王ロズならばそうだっただろうな!だが私はヴァンピロ=ビス、卑怯者の炎王カウダーとは違い、逃げるなどという言葉を知らぬ」


「あー俺も知らねえなァ。逃げるってなンだっけ?忘れちまったなァそんな言葉」


「辞書で調べてみるか?貴様の手では読む前に燃え尽きてしまうがな、不便な体故に無学な炎王カウダーよ」


「冷えてカッチコチに固まった頭にゃあさぞかしいっぱい詰まってんだろうなァ、頭デッカチな氷王ロズよォ」


「ヴァンピロだと何度言えばわかる!!!馬鹿ウダーが!!!!!」


「誰が馬鹿だ!!!クソボケロズゥ!!!!!」


 二人の拳が交差し、互いの顔面に炸裂した。

 直後、炎王カウダーの炎が消滅し、ヴァンピロの肉体が氷と化して崩れ去った。

 驚いた兵士たちが見上げると、カウダーとヴァンピロは五体満足のまま空中にいた。

 殴り合い、蹴り合い、口汚く罵り合いながら。


「やっぱりだ!!!『ダダンズヴェリオ・氷の聖者(シルバーアーツ)』!!!俺を卑怯とかなンとかぬかしときながら、結局てめえはそうやって逃げる狡い野郎なンだよォ!!!!」


「貴様のような卑怯者と正面から戦う馬鹿がどこにいる!!!『秘火(ヒヒ)火木偶(ヒガワリ)』で逃げることくらい最初からお見通しなのだ!!!」


「俺は逃げる気ありませンでしたァ!!!てめえがそれ使いそうだなーって思ったから使っただけでしたァ!!!」


「私も逃げる気など毛頭なかったわ!!!貴様が使う素振りを見せたから使ったまでだ!!!」


「真似すンじゃねェ!!!」


「馬鹿の真似などせんわ!!!」


 余りにも程度の低い言い争いに、兵士たちは呆れ果てていた。

 それをよりにもよって総司令官ヴァンピロが行っているというのが、より兵士たちの失望を買った。

 だが、その攻撃の余波はとてつもない威力であり、言い争いを聞くに堪えないのとは無関係に兵士たちは近づくことさえできなかった。






 ふと、一人の兵士が空を見た。

 まだ昼間だというのに空は一面闇に覆われ、星のように5つの光が煌めいている。

 彼を含め、この場にいるデュナミク王国の兵士誰もが、自分が生き残ることなど考えてはいない。

 だが、デュナミク王国の勝利だけは揺るぎないと、絶対の自信を持っていた。

 空に輝く5つの光、その中でひときわ大きく輝く者こそ、最強の主君ロレッタ=フォルツァートであることを知っているからだ。

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