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第39話 最強!無敵!!ギガライコー!!!

 暫しギガライコーの容姿に見惚れていたケインだったが、この巨大機械戦闘擬人城とでも呼ぶべき物体をどうにか倒さねば、マキシマムサンストーンを奪取することも敵わないという現実に直面し、戦慄した。

 戦闘能力は未知数、しかし人間をそのまま100倍にしたような圧倒的巨大さを誇るギガライコーを目の前に、どう立ち振る舞えば良いものか、想像もつかない。

 戦う際に一定量の思考時間を要するケインと違い、先に飛び出したライガは単純だった。


「カッコいいからついじっくり見ちまったけど、つまり動く城ってことだろ!?たかが城くらい、俺の拳でイチコロだぜ!!!」


 息巻くライガは右拳を振り上げ、ギガライコーの胴体部を破壊しようと飛び込む。

 ギガライコー内部でヨリミツが複雑に配置されているボタンを押してレバーを引くと、それに呼応してギガライコーもまた右腕を引き、構えを取ってから拳を突き出した。

 その所作だけで空間そのものが歪むような衝撃波が発生し、それ以上の圧力がライガへとのしかかる。

 拳同士がぶつかり合う直前、ライガは相手の拳の巨大さに慄き、生まれて初めて攻撃しながら弱音を吐いた。


「で、で……無理無理無理でかいでかいでかいでかいでかい……!!ちょぶっ」


 激突とほぼ同時に、ライガは遥か彼方まで吹き飛ばされた。


「ライガアアアアアアアアッ!!!」


 一瞬で姿が見えなくなってしまったライガの身を案じ、ケインは叫ぶ。

 シマシマが冷静に髭でケインの腕を掴みながら言う。


「大丈夫。ヒノデ国のはじっこまで飛ばされたけど、割と元気。魔力も有り余ってるみたいだし……」


「よくもライガを!!!ヘンテコ城人間め!!!!!」


 ケインたちのやり取りが全く耳に入っていなかったのか、猛り狂うシーノが飛び出すも、直前と全く同じ展開となった。


「あ……で、でかいでかいでかいでかいでかい……!!はぶっ」


 吹き飛ばされたシーノの無事を察知したシマシマは、苦笑いしながらそれをケインに伝えた。


「無事ならいいんだけどさ……ちょっとは考えて動いてくれないかな…」


 ぼやきながらシマシマにククを任せ、ケインは飛び降りた。

 ギガライコーをどう攻略するか、未だ考えは浮かばない。

 同じく思考していたオーロは、ケイン一行の戦力も同時に分析していた。

 ギガライコーに殴られる寸前に衝撃を軽減すべく身を引いていたライガとシーノの動きを、オーロは決して見逃していなかった。


「あの身のこなし、それに素手での戦闘……二人ともグラブの生き残りか。サラミババアのドラゴンも何故かケインといる。上に乗ってるロリボインの方はからっきしダメっぽいが、ありゃあケインの趣味か…?ケイン自身の力も、前に会った時より増しているようだし……これが片付けば、どうやら本格的に『敵』と見なさなきゃあいけねえようだな」


 心のどこかで喜びを感じつつ、まずは目の前の敵、ギガライコーに意識を向ける。

 ギガライコー内部では、既に勝ったつもりでいるヨリミツが高笑いしていた。


「ぬはははははははは!!どうだ海賊オーロよ!!見たかこの圧倒的超パワー!!これぞギガライコーの力よ!!」


「ガキ二人を吹っ飛ばしただけで勝ち誇ってんじゃあ、たかが知れてんぜ。お前さんが相手してんのは、この世で最も恐ろしい不死身の海賊キャプテン・オーロだってこと、忘れてもらっちゃあ困るな」


「ぬふふふふ……言われずとも、貴様にも味わわせてくれるわ。このギガライコーの究極無敵大パワーを!!!」


「いまどきガキでも言わねえよ、ンなワードよォ!!」


 コンリード・バートン号が浮かび上がり、その上でオーロはサーベルを抜く。

 ギガライコーもそれに応じ、いつの間に用意されていたのか、腰部分に帯刀していた超巨大刀を抜く。


「『クサナギノブレード』!!!」


 巨大刀が振り下ろされ、オーロのサーベルとぶつかり合う。


「ぬぅうううううぁあああああ!!!!!」


 腕力と船の浮力で抗うオーロだが、その常識を超えた大きさの刀と勝負できるはずもない。

 可能であれば力で打ち破りたかったがそうもいかず、オーロは刀を受け流し、横に逸らすだけで精一杯だった。

 逸らした際に左腕に傷を受け、巻き付けている黒い布が落ちそうになるのを庇い、再度巻きなおす。

 下でケインやシマシマが必死に巨大刀を避けているのは意に介さず、更にコンリード・バートン号を浮上させる。

 ついにギガライコーの上を取ると、オーロは不敵な笑みを見せた。


「撃てェ!!!」


 号令と共に、船からありったけの砲弾が撃ち出される。

 コンリード・バートン号はオーロの意思のままに動く。

 装備されている大砲もその一部であり、砲弾さえあれば人も火薬も必要なく撃てるのだ。

 だが、あくまで威力は海賊船のそれ。

 砲火に晒されたギガライコーだが、視界が悪くなるだけで何ら痛手を受けてはいない。

 相手に絶望を植え付けるためにわざと砲撃を受け続けることもオーロの計算の内で、その隙に右手に魔力を溜め、頭上には雷雲を呼び寄せる。

 砲弾が切れて爆炎が晴れる頃には、ギガライコーの真上には雷雲が広がり、オーロの右手はそれを受け入れる準備が整っていた。


「雷撃魔法を超える極上の雷撃……俺のオリジナル技、喰らってみろよ」


 雷雲に溜め込まれた雷が解き放たれ、オーロの右手の中で彼の魔力と混ざり合い、増幅された後に撃ち出された。


「『海賊の激情(センティオーロ)稲妻(ラッビア)』!!!!」


 自然現象の落雷と雷撃魔法の合体攻撃がギガライコーに迫る。

 だが、オーロの本気の攻撃を予測せずただ静観しているほど、ヨリミツやエーサイは能天気ではない。

 黙って砲撃を受けていたのは、完全なる防御技を発動させるための準備時間でもあった。


「『ヤタノミラーシールド』、展開!!!」


 ギガライコーの兜から虹色に光るバリアーが展開され、オーロの雷撃は阻まれるや否や使い手自身に返された。


「くぁっ!!!」


 間一髪、防がれることを予期していたオーロの回避行動は間に合い、雷撃は雲に吸い込まれるようにして還っていく。

 それを見送ったオーロの顔に冷や汗が流れる。

 力では打ち破れない。

 究極と自称するだけの攻撃力と防御力を兼ね備えたギガライコーを前に、そう思ってしまっていた。

 それは常軌を逸した巨大さに頭が現実味を感じられない状態に間近で自慢の技を防がれる様を見せつけられたからこその弱気であり、逆にそれを見ていたケインは冷静にギガライコーの弱点となり得る箇所に目をつけていた。

 早速ギガライコーの足元まで駆け寄り、右手に魔力を込めて解き放つ。


「『バ・ビル・ブルル』!!!」


 以前デュナミクの侵略隊、副隊長ジャンニーノが使っていた、対象物を粉砕する振動波。

 見様見真似からスコットとの特訓を経て、ケインは実用性が高いと見ていたこの技を自分のものにしていた。

 ギガライコーの右つま先部分から、徐々に脚が砕けていく。


「こ、小癪なァ!!!」


 慌ててギガライコーの右脚が持ち上げられ、ケインを踏みつぶそうと迫る。


「たかが旅行客が生意気な!!潰れてしまえェェイ!!」


「やべっ」


 慌てるそぶりを見せながら、ケインはギガライコーの脚が着地する地点よりも遥か遠くまでさっさと逃げていた。

 巨大すぎるため全力で避けねばならないが、避けようと思えば、ギガライコーの動作は大して速くはない。

 そして足回りが、その巨大さ故にお粗末なほどに隙だらけ。

 それがケインの見つけた、ギガライコーの弱点だった。

 避けられつつも体勢を立て直そうとギガライコーの右脚が着地する寸前、背後に急接近する二つの影。

 その正体を知っていたケインはほくそ笑んだ。


「でりゃああああっ!!!」


「せやあああああっ!!!」


 ライガとシーノ、二人の飛び蹴りが炸裂した。


「むおおおおっ!!」


 二人は吹き飛んだ直後、大きく外側からギガライコーの背後へと回り込んでいた。

 気付かれることなく攻撃するため直感的に選択した行動は見事功を奏し、片脚で立っていたギガライコーはたまらず前に倒れ込む。

 ケインは、そうなることまで考えていなかった。

 自分やシマシマたちの方へ倒れてくることまでは。


「ヤバアアアアアアアアアアイ!!!」


 咄嗟にククを庇いながら、シマシマと共にギガライコーに巻き込まれないよう離れる。


「ぐぅぅ!!おのれぇぇぇ!!!」


 内部でのヨリミツの操作により、ギガライコーは完全に転倒してしまうのを防いだが、両手を地に着いて隙だらけとなってしまった。


「なんだ、案外呆気ねえもんだな。そんじゃあ、遠慮なくぶっ壊して中の宝石いただくとするか」


 弱点さえわかってしまえばオーロにとっても脅威ではない。

 そしてさらけ出した隙を突かずに黙って見過ごしておくほど、ケインたちもオーロもお人好しではない。

 マキシマムサンストーンを取り戻すべく、仕留めにかかろうとしたその時だった。


「えぇい何をしておるか!!ショーザン!!ザクロ!!この者どもを止めい!!」


 発せられたヨリミツの言葉。

 それに瞬時に応え、ギガライコーに一番接近していたライガに斬撃を与えたのは、ショーザンだった。


「がっ!!!」


 肩を斬られ悲鳴を上げるライガの横で、シーノが反撃に出ようとする。

 それをライガは無言で制した。


「ライガ!?」


 制止を振り切ろうとするシーノだが、ライガの表情を見て踏みとどまる。

 スコットを殺したほどの相手。

 それほどの相手が、何故一撃で仕留めずに、肩を軽く傷つける程度に留めたのか。

 それは、その一撃が不意打ちだったからに他ならない。

 面と向かっての命のやり取りをこそ望んでいるこの剣狂に堂々と勝負を挑むことの意味と勝ち目のなさ、そして剣狂の狂気を、改めてライガは肌で感じ取っていた。

 そんなライガの緊張を察し、シーノも冷静さを保てていた。

 二人の戦士は、初めて己の意思で正面からの戦いを避けようとしていた。

 ショーザンは二人に意地の悪い笑みを見せる。

 二人が自分との戦いを避けようと考えていることなどお見通しであり、なんとしてもその気にさせたくてたまらないといった様子だ。


「どうしましたぁ?あんたらのお仲間さんは、勇ましく私に向かってきましたよぉ?あの人には及ばないまでも、あんたらだってそこそこにはやれるでしょう?二人がかりならなんとか五分に持ち込めるかも……とか思いませんか?あの人の仇討ちがしたいとは思わないんですかぁ?」


 二人の心を抉るように挑発する。

 それを受け、ライガとシーノは却って平静を保ったままでいられた。

 だが、向かってこないならそれはそれでと、いずれショーザンは襲い掛かる。

 ライガはそれを予期し、シーノと共に距離を取りながら拳圧を飛ばして牽制する。

 余裕で防いではいるが、それはショーザンにとっては極上の挑発でもあった。


「あぁー……鬼ごっこ、ですか。んじゃあ、始めていきましょうかねぇ」


 慣れない距離を取ろうとしながら戦うライガとシーノ、それを追うショーザン。

 その戦いから、倒れるギガライコーを挟んだ場所でケインと対峙していたのは、ショーザンの娘ザクロだった。


「ここから先へは行かせません。ザクロ=アケチがお相手致します」


「……こんな大きな娘さんがいるような年には見えなかったけどな、ショーさん」


 互いに剣を構え、様子を窺う。

 隙のなさから剣での戦いを捨て、魔力で勝負をかけようとケインが判断した時、シマシマが声をかけた。


「気を付けろケイン。その女、あの人斬りと同じくらい強いぞ」


「マジで!?」


 それに一瞬気を取られ、先手を仕掛けるザクロの斬撃に、剣を合わせる形となってしまった。

 もちろんショーザンより数段実力が落ちるなどと甘く見ていたわけではない。

 それでも、自分の方にやって来たのがショーザンではなくこの女であったという事実は、ケインの心に僅かな安堵と期待をもたらしていた。

 それを呆気なく打ち砕かれ、防戦一方のままケインは攻めに回ることができない。

 背後にいるシマシマやククに危害が及ばないよう、踏みとどまるので精一杯だった。


「あ!そうか!私がこっち来ちゃったら、ケインさんにはザクロが向かってるのか!」


 今更なことをわざわざ声に出してショーザンはしまったという顔をしていた。

 ザクロには実戦経験がない。

 それは即ち、人殺しの経験がないということでもあり、ショーザンにとって今回はまさにザクロの経験不足を埋めるのにうってつけの場であった。

 しかしその相手がケインだというのは、ショーザンを苦悩させることとなった。


「うわあどうしよ。ケインさんは是非私が殺しときたいのに、でもザクロにこっち来させるってのも、こっちはこっちで私が殺したいし……うーわぁー……」


 お菓子売り場で何を買うか迷っている子供のような仕草であったが、ショーザン自身としては真剣な苦悩だった。

 そして結論を出せないままの戦いは、ライガとシーノの寿命を延ばすこととなっていた。


「……で、俺んとこには誰も来てねえが、人選ミスってるだろ」


 上空でオーロは再度雷雲を呼び寄せ、右手に魔力を集中させていた。

 今度は兜からの防御技が展開されないよう、背中の中心部を狙って。

 それをギガライコー内部で見ていたエーサイがヨリミツへと進言する。


「今こそギガライコーの真の力を見せる時ですぞ」


「わかっとるわ!!!天守五影!!準備はできておろうな!?」


「御意!!!」


 遠方から声が聞こえ、思わずオーロはそちらへと顔を向ける。

 今の今まで気が付いていなかったが、そこには五つの城が立ち並んでいた。

 いずれも大きくはあったが、ヨリミツ城には及ばない。

 まさに影とでも呼ぶべき地味さを持った城だ。

 声はその内のひとつの屋根から、天守五影棟梁赤影によって発せられたものだった。

 各城に一人ずつ、屋根の上で鎮座している。


「ギガライコーの真の力、ねえ」


 オーロはいつの間にか右手の魔力をかき消してしまっていた。

 まだ上があるというのなら、それを見てからでも遅くはない。

 それはオーロも自覚している悪癖だった。


「やるぞ皆の衆!!良いな!?青影!!」


「うむ!!やるぞ黒影!!」


「オーゥケェーイ!オ()ラはドーダイ?」


「オ()ラやけど。桃影もできとるなぁちゃんと!?」


「無論だ!」


「『氣界念操(キカイネンソウ)機械(カラクリ)の陣』!!!!!」


 五人が一斉に氣を練り上げ、城を包む。

 すると、赤影の城は龍、青影の城は鷹、黒影の城は蛇、緑影の城は猿、桃影の城は虎の形にそれぞれ形状を変えていく。

 やがてそれぞれが変形し終えると、今度は一箇所に集まり、合体し始めた。

 城に取り込まれるように五人は中に入っていき、その中でも集中力を高め続け、氣を練る。


「今改めて合体するのなら、最初に変形せずとも良かったのではないか!!?」


「黙れ!!!集中しろ!!!!!」


 桃影の正論を赤影はバッサリと切り捨てた。

 その必死さは氣を練り上げることとは無関係なようにも周囲には見えたが。

 そんなやり取りをしている内に、五つの城は合体し、巨大な馬のような形になっていた。


「武神御用達!!!快足『グランドシャドウホース』!!!!!爆誕ンンンンンッ!!!!!」


 ギガライコーもいつの間にか立ち上がって、グランドシャドウホースを待ち構えるかのように中腰になっている。

 グランドシャドウホースは、ギガライコーへと素早く駆け寄っていき、その巨躯に見合わない速さによって生み出される風圧は、ショーザンやザクロ、そしてケインたちを吹き飛ばした。

 結果としてケインたちはグランドシャドウホースによって助けられたことになるが、ケインはその速さと、ギガライコーの真の力というヨリミツの言葉に嫌な予感がし、鳥肌を立てていた。


「来い!!グランドシャドウホース!!!合体じゃあ!!!」


 グランドシャドウホースの頭がギガライコーの股下に潜り込み、それを挟んだギガライコーの両足がグランドシャドウホースの頭部と合体し、半人半獣の異様な姿と化した。


「ちょっと待てよ、あのパワーにさっきみたいな速さが加わったら……!!」


「見よ!!!これぞ『ギガライコー・ケンタウロスモード』じゃアアアアアッ!!!!!」


 高らかに名乗るヨリミツ、それに操られポーズを決めるギガライコー。

 グランドシャドウホースと合体させるために必死に氣を練り、桃影に至っては既に失神しているが、そんな天守五影の苦労など、既に誰の眼中にもない。

 ケインはライガたちと合流し、ショーザンたちから離れて様子見していた。

 今のギガライコーは、自分が弱点だと見ていた部分を克服してしまっている。

 攻撃力と防御力、そして速さまで加わり、本当に無敵と化しているのだとしたら、最早オーロでさえ敵わない。

 撤退することも頭に置いておかなければならないと、そう考えていた。

 一方で、オーロはコンリード・バートン号でギガライコーから離れ、遠距離からの攻撃を仕掛けようとしていた。


「さっきみてえな速さが、そのデカいのを乗せた状態で出せんのかよ!?こんだけ離れた俺に届くくらいの速さをよ!!!」


 両手に魔力を込め、背後から突風を巻き起こす。

 それに魔力を乗せて、撃ち出した。


「『海賊の激情(センティオーロ)鎌鼬(トリステッツァ)』!!!!」


 自然現象の風と風魔法の融合。

 合間に挟まれている切れ味を伴う風を受けてなお、ギガライコーは平然と直立していた。

 反撃に出るべく、ギガライコーは巨大刀を構えて走り出す。

 人間の100倍のサイズで、本物の馬と同じように走る。

 その速度だけで、オーロの風魔法は相殺され、焦りを感じたオーロは遠ざかりながら攻撃を続ける。

 全速力で遠ざかるコンリード・バートン号よりも、遥かにギガライコーは速く迫り、ついに巨大刀で船を捉えた。

 斬撃と呼ぶよりは押し潰すようなその一撃は、コンリード・バートン号を傷つけることはなかったが、その上にいるオーロにダメージを与えるには十分なものだった。

 バランスを崩したオーロは船から空中に放り出され、衝撃から体勢を立て直すこともできず、ギガライコーが追撃のために構えていることにも気付けずにいた。


「これでトドメよ!!!『ヤサカニノブラスター』!!!!!」


 ギガライコーの胸元から熱線が発射され、オーロに命中する。

 遠くから見ていたケインは、その威力に絶句した。

 オーロの遥か後方にある山をも呑みこみ、熱線は見えている限り全てに阻まれることなく消滅させていた。

 熱線を撃ち終え、ヨリミツは高笑いして悦に入る。


「ぬぁははははは!!!あの海賊オーロが!あのにっくき海賊オーロが!!これほど容易く!!あれほど惨めな姿になるとは!!!!ぬはは!!ぬははは!!!ぬぁあわはははははははは!!!!!」


 体勢を立て直したコンリード・バートン号は、主を優しく受け止め、立ち上がるまで待っていた。

 船の期待に応え、全身火傷に爛れながらも、気丈にオーロは立ち上がった。

 鼻の奥に溜まっていた血を抜き、敵を見据えながら、苦笑する。


「やべえな。こりゃあ勝てそうにねえ」

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