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理想的な配偶者

作者: かわ

「今なら特別にカスタマイズ料金も含めてなんと60万円ぽっきり!まだ未婚のあなた、今が買い時ですよ!もしもお気に召さなかった場合でも1年以内なら返品可能!」


喋っているのはテレビの中の男だった。男が売りつけようとしているのは未婚の男女向けの人型ロボットだった。聞くところによると、数ヶ月前に大企業が作り出したこのロボットは生きた人間のような振る舞いをするらしい。


夜になると眠り、朝になると起きる。教えれば簡単な労働ならスムーズにこなす。その上、購入者が望んだ性格にカスタマイズできるのだというから大したものだ。


大抵の購入者はこのロボットを自分好みの異性にカスタマイズして、配偶者として生活するのだそう。


「俺もいい歳して独身というのもあれだから買ってみるか。もし合わなければ返品すればいい。」


購入を決意してからは早かった。テレビ画面に映っている電話番号に繋いで注文すると、翌日には分厚い書類が送られてきた。


初恋の女を思い出しながら、細かい人格やら見た目のイメージやらを書類に書き込んでいった。一生を共にするかもしれない相手だ。妥協はしない。


ようやく全ての書類を書き終えて送り返すと翌日、早くもロボットは到着した。イメージした通りの肌の質感、造形だった。


早速電源を入れてみるとロボットは動き始めた。会話や動作に違和感はなく、本物の人間の女性となんら変わりないように思えた。動力は人間と同じく食事から得られた。人間と同じように生活でき排泄機能や生殖機能も有していたが、経年による身体的な成長はないらしい。


ロボットは要望通りお淑やかで物分かりが良く、働き者だった。


1ヶ月も一緒に暮らすと俺はそのロボットを自分の妻として扱うようになった。ロボットは理想的な妻だった。平日は7時に起こしてくれ、毎朝朝食にハムエッグトーストとコーヒーを用意してくれ、夕食は好物ばかりを作ってくれた。休日は10時に起こしてくれ、一緒に近くのカフェで朝食を取り、映画館に行ってラブロマンスを見るのがルーティーンになっていた。独身でいた時よりもはるかに幸せな生活を送っていた。


ロボットを買って3年の月日が経った。人型ロボット達は社会に少し溶け込んできていた。ロボットはやはり理想的な妻だった。平日は毎朝7時に起こしに来て、朝食は毎回ハムエッグトーストとコーヒーを用意し、夕食は好物ばかりを作っていた。休日は10時に起こしに来て、一緒にカフェで朝食を取り、映画館にラブロマンスを見に行った。変わらない日々の有り難さをしみじみと感じていた。


それから更に10年も経つと、人型ロボットは街中に溢れていた。世界の大人の約5分の1はロボットを配偶者として生活していた。ロボットは相も変わらず理想的な妻だった。平日は毎朝7時丁度に起こしに来て、朝食は毎回必ずハムエッグトーストとコーヒーを準備し、夕食は好物しか作らなかった。休日は10時に起こされ、一緒にカフェで朝食を取り、映画館にラブロマンスを見に行った。


映画館から帰ってきてテレビを点けると、男が喋っていた。


「人型ロボットの今の性格に飽きてきたあなたに朗報です!今なら50万円ぽっきりでロボット性格の変更を受け付けます!」

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