シルフィの日常★
どぞー(っ・ω・)っ見てる人が居ればですがw
「シルフィ様、おはようございます」
優しく揺さぶられる感覚とセシルの声でシルフィは目を覚ました。
シルフィが転生してから早数日。
何かと可愛らしいパジャマを着させられているが最近慣れ始めている彼女は覚醒しきらないながらも身体を起こす。
「んぅ…せしーはよー」
意識して言ったわけではないがまだ身体が幼いためか気を抜いていると滑舌が少し怪しくなるのが最近の悩みのシルフィ。
これが妙に恥ずかしく、どうにか直らないかと懸命に舌を動かすことを心がけているこの頃。
そんなシルフィの様子に気付かず、セシルはベットから降りたのを見計らい着ていたパジャマを脱がせて着替えさせていく。
最初の頃は恥ずかしさと申し訳なさから何度か抵抗を試みたことはあったが、今ではほぼ無抵抗でそれを受け入れている。
これはシルフィが幼いからではなく貴族は皆そんなものらしいとセシルから説明を受けたからだった。
パジャマはシンプルなネグリジェであり複雑な服でもないため自分で着ようとすれば着られるが最近は諦めて着せ替え人形と化している。
「はい、ばんざいして下さい」
「あーぃ」
前世も看護師達に色々されたが身体がちゃんと動く以上迷惑をかけない方法は熟知しているため作業はスムーズに進む。
「シルフィ様は着せ替え……いえ、着替えがし易くて助かります」
「んぅ…?そう?」
「はい」
シルフィからすれば充分に美人さんなセシルに服を脱がされるのは、すとーんペターンな幼女とは言え心は男のため気恥ずかしさが凄まじく、目線は絶えず泳いでいた。
勿論セシルはそんなことには気付かない。
子供になったためか最近身体に精神が引っ張られているのか感情の抑制に失敗してすぐ涙目になったりプルプルしたりする。
そのため何気に気持ちを昂らせないように気を付けているがこの辺は未だに慣れないのか今も少しプルプルしている。
ちなみにこのプルプルには恥ずかしさ以外に自分の身体そのものへの物も含まれている。
記憶が戻り、慣れ親しんだ身体から変わり、自分の身体から有るモノが消えた。この数日、勿論生理現象にも見舞われたし、風呂にも入った。
前世、ノーマルだったため特に何か危ない思考になることはなかったが、それでも受けたショックは小さくなかった。
この数日は夜、涙で枕を濡らした程だ。
次の日、セシルから涎と勘違いされたが…。
ちなみにいつもならセシルはシルフィのお気に入りではあっても仕事の担当は別にあった。
それでもシルフィの身の回りの世話をしているのは転落事件でシルフィ父と喧嘩したからだ。
その日以来、どこに行くにも何をするにもセシルを常に同伴させるようになった。
お気に入りでもあったためそうさせるのはそう難しいことではなかった。
それどころかどこかへ居なくなろうとすれば出来る限り後を追いかけて見張っているような状態だ。
シルフィ父が逆上して何かして来るかもしれないからだ。
名誉のため言っておくと元々冷静な人物であり、そんな理不尽なことをする人ではない。
一応、念のためだった。
そしてそんな姿が数日見られ、お気に入りの侍女の後をトコトコ付いていくシルフィは多くの者に見られほっこりされるのは本人の預かり知らぬところだ。
結局セシルの手によって簡素だがピンクのヒラヒラドレスを着せられ、そのまま髪を櫛で髪を解かされる。
結局身嗜みを整えるのに30分以上時間をかけ、衣装のダメージと相まってどことなくゲッソリしたシルフィはトボトボとセシルを連れて部屋を出る。
そのまま大きな食堂まで案内されて朝食をいただく。
この世界はシルフィの知識で言うなら中世ヨーロッパ風のため食事はパンにスープやサラダといったメニューが多い。
多いのだが何故だかたまに日本食のような物も出てくる。
醤油や味噌で味付けされたであろうメニューや米があるのだ。
シルフィは最初こそ醤油に似た魚醤のような物だと思っていた。醤油に似ている物で昔からありそうな物と言えばそれ位しか思いつかなかったからだ。
だが、その予想はすぐに変わり今では普通に醤油だろうと思っている。
むしろ魚醤の方があまり味を知らなかいからだ。
それに味噌の方はスープ…いや、味噌汁として出てくる以上はやはり醤油も魚醤ではないのだろう。
カリッと焼かれたトーストに新鮮そうなサラダに野菜スープとバランスのとれたメニューを食べ終えると同じく食堂で食事をしていたシルフィ父を横目に日課へと出かける。
喧嘩中のシルフィ父はどう話しかけようと目を彷徨わせ、口を開けようと反開きにしてはまた閉じ、と挙動不審になっていた。
思春期の娘相手なら明らかにウザがられる典型のような行動である。
イケメンとは言え大の大人がキョロキョロソワソワしているのは見てて少しキモい、などと失礼なことを考えながら、シルフィは食堂を後にした。
シルフィの向かう日課とは屋敷中を歩き回ることだ。
前世は身体の関係で激しい運動が出来なかったが、今世は健康そうな身体に生まれた。そのため、維持するため適度な運動を心がけているのだ。
「ふーん、ふふーん、ふーんふーん」
前世の好きだった曲を鼻歌で歌いながら屋敷内を歩き回る。
その曲は失恋歌ではあるがこの世界にそれを知る者は居ないだろう。
日課とは言え、半ば義務的にやっていることではあるが、これが意外と楽しいのだ。
部屋数も10や20では足りない程多い。その上、中世かそれ以前のヨーロッパ風のためまるで外国を観光している気分になるのが理由だ。
そしてもう一つ、この屋敷内で働いている人達と顔を合わせることだ。
将来、自分の協力者になってくれそうな人を探すためでもある。
最初に寄るのは騎士達が駐屯している待機場だった。
ここには大抵人が居る上、シルフィからすれば興味をそそられる武具が置いてあるためだ。
「どーん!」
気合を入れながら開けてもらったドアから突入するとやはり中に待機していた数名の騎士が武具の手入れをしていた。
数名は音と声に反応して近くの武器に手をかけた者も居たがシルフィに気付くと気まずそうに手を離した。
「シルフィ様いかがしましたか?」
「おぉ!」
話しかけてきたおそらく上役の騎士に視線を向けたシルフィは声を上げる。
心は男のシルフィからすれば銀色に輝く鎧もなんか凄そうな剣も憧れる対象なのだ。それを金髪碧眼の男が違和感なく着こなしている。
シルフィからすればまるで有名人でも目撃した気分になるのだ。
それと同時に、イケメンめ!爆ぜろ!などと考えてもいる。
人間とは相反する思いを持っていたりするものだ。
他の騎士達はシルフィを確認すると緊張からか直立不動で起立している。最近になって遊びに来るようになったからか困惑気味だ。
「んー遊びに来た!」
それらしい台詞を言いながら部屋を見渡すとすぐ側に置いてある短剣を発見する。
しめた!そう思いながら手を伸ばすとまたすぐ横から伸びてきた手が先に短剣を掻っ攫ってしまう。
「あー!」
「いけませんシルフィ様。これを扱うにしてもあと数年は辛抱して下さい」
シルフィに対応した騎士の仕業だった。
ここに来るようななってからこの攻防は毎日行われている。
シルフィからすれば持って怪我をするような扱いをする気はないが周りからすればまだまだ子供。触れさせるわけにはいかなかった。
その様子を見ていた他の騎士達はシルフィが視線を外したうちにメンテナンスのために置いてあった剣や槍を片付けてしまう。
規則正しい生活を心がけるシルフィの行動パターンは大体一緒のため、いつもの時間になると仕舞われてしまうが、今日は少々早かったらしい。
毎日やることは多いため、どうしてもシルフィへの対応はギリギリになってしまうためだった。
「むうぅぅぅ!」
若干癇癪を起こしながら頬を膨らませるシルフィを前に騎士達も苦笑いになる。
「ここで怪我をされると我々も困るんですよ。おそらく数年以内には武術の稽古が始まると思いますから、触れるとすればその時ですね」
騎士は宥めるようにシルフィを諭すが捲れるシルフィはペチペチ鎧を叩いて抗議する。
騎士達はそのままシルフィを宥めるためにしばらく時間を使い、装備のメンテナンス時間がなくなってしまうものの皆後悔はなかった。
可愛いなぁ……そんなことをほんわかしながら思うが背後から見ていたセシルはそんな騎士達にゴミでも見るような視線を向け騎士達の心を抉っていた。
一度は触ったり、振ったりしてみたいものだ。などと武具へ想いを馳せながらも機嫌を直したシルフィが次に向かうのは調理場だ。
すぐに上役が対応する騎士達の待機場とは違いほぼ真逆。ほとんど対応しないのが調理人達だ。
朝食を食べてからそれ程時間が経っていないにも関わらずそこは既に何人もの調理人達が所狭しと動き回っている。
昼食や夕食の仕込み等準備があるため忙しく、あまりシルフィに構っている余裕がないのだ。
「遊び来たー!」
前と似たようなことを言いながら周りの様子を伺うが皆、1度手を止めたもののすぐにまた自分達の仕事に戻って行く。
この対応にシルフィは気を悪くしたりはしない。元々忙しいとわかっていて遊びに来たと言っているんだから気にしないのだ。
騎士達はむしろ暇でしょ?とでも言いたげに接しているが勿論彼らにも彼らでやることがあるが知らないシルフィは気にしない。
あまりこの世界に衛生管理などの概念はないがシルフィは気を使ってちゃんと手洗いやうがいをしてマスクなどを持参して中を歩き回る。
勿論、これ自体あまり褒められたことではないこともわかっているがシルフィの冒険と仲間探しの旅はその程度で諦める物でもないのだ。
「おやシルフィ様、おはようございます。今日もつまみ食いですかね?はい、あーんして下さい」
「ん?あーん!」
時々気を利かせた調理人がお菓子を作っていてシルフィに与えるがそれ以外にあまり何かされることはない。
シルフィも基本的にはお行儀良くしているが中にはあまり見たことのない調理器具もあり時々手を伸ばすがそのときだけは誰かが器具を回収していく。
調理台はシルフィの身長よりも高いため、足場台を運んで来るため分かりやすいのだ。
勿論それは用意している料理も一緒だ。近くで見たいと手を伸ばしても引っ込められて、味見もさせてもらえない。
「あーん!」
今日もシレッと手を伸ばした先にある料理を回収された料理をせがんでみたが、丁度近くにいた料理長らしいナイスミドルが苦笑い気味に拒否された。
「お嬢様…勘弁し」
「シルフィ!」
記憶にあるシルフィは名前で呼ばせたがった。お嬢様と呼ばれたくなかったためだ。記憶が戻ってもそれは変わらないため逐一訂正させている。
「…お嬢さ」
「シ・ル・フィ!」
「…シルフィ様勘弁して下さいよ」
料理長が折れた。
「まだ毒味も何もしてないんですから。これで毒でも入ってたら私の首だけじゃ足りませんよ」
首筋をトントン叩く料理長を見てシルフィは愕然とした。小説でそんなこと心配する場面があったがそれを現実で言われたのは少々ショックでもあった。
どうやら作った料理には毒味や毒鑑定が行われているらしく、シルフィはシルフィ父には善政を敷いていて欲しいと心配していた。
セシルは最後にシルフィ用に用意してもらったお茶菓子を回収していた。
トボトボと調理場を後にしたシルフィは次はドキドキしながら通路を歩く。行き先は男子禁制の侍女達の区画だった。
ここは他2つと違い、シルフィが訪れると構い倒す。
彼女達侍女も様々な仕事を担っているがそれでも仕事の休憩でこの区画で休んでいる者もそれなりに居る。
そこにシルフィが現れると仕事をしている侍女達は綺麗な顔をこれでもかと歪ませ、休憩中の侍女達は待ってましたとばかりにシルフィを包囲する。
「シルフィ様よ!」
「待ってました!どうぞこちらへ!」
「お菓子もお茶もバッチリですよ!」
どこからか調達してくるらしいお菓子を振る舞われて彼女達の休憩場で百合の花園が爆誕する。
あまり失礼なことはされないがそれでもちょっと頬を突かれたり頭を撫でられたり、顔を蕩けさせながらその様子を観察されたりと忙しない。
シルフィからすれば侍女達は皆美人ばかりなので触れられたり笑顔を向けられれば照れる。
そして側から見れば可愛い幼女がワタワタしながらはにかむ姿が見られ余計に構われる。
誰も抱きつくなどの一線を超えることはしないものの何名か怪しい手つきや表情をした者も確認され、セシルから要注意人物認定されている。
セシルに対してプニプニ触れられるのはなんとかして欲しいと苦言を呈したこともあるが今のところ効果は出ていない。
周りは美女ばかりで眼福ではあってもやめて欲しいものはやめてほしいのだ。でなければシルフィの心臓が保たなかった。
そんな時
「む?…あぁ…」
目の前でユラユラ揺れるそれを反射的に掴もうと手を伸ばすがそれはシルフィから離れてしまう。
「お嬢様?」
「シルフィ!」
「…シルフィ様?獣人にとって耳や尻尾は大切な物なんです。気軽に誰にでも触らせることはしません。まぁ、親しくなれば別ですけどね。後は小さな子なら触らせてくれることもありますけど…」
侍女の中には人種以外にも獣耳や尻尾の生えた獣人もや長い耳の尖っているエルフも居る。
反射的とは言え掴もうとすると怒られてしまう。
だがそれに触ろうとすると回避されるからだ。
シルフィからすれば初めて近くでみるそれに触ってみたかったため少しばかりムキになって追いかけ回したこともあった。
「むー!」
何度か諭され回避されて結局、侍女達の耳や尻尾は触れなかった。今でも時々チャレンジしているが未だに成功していない。
侍女達も子供のちょっとした悪戯と好奇心だと思っているためか止めることもなく微笑ましそうにしていた。
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