バレた。
今日は気分が良かった。昨日子供達と戯れた後、なんと子供達をお持ち帰り出来たのだ。無邪気な子供達はキャンプへ戻っても元気一杯で非常に癒された。
お手伝いもしてくれて夜は背中を拭くのを手伝ってくれたしご飯を口一杯に頬張る姿は愛らしかった。親の娼婦さん達は夜の方が忙しいため喜んで預けてくれたのだ。
子供達に背中拭いてもらう時、ユミルは非常に不服そうな顔していたけどね。拭く度に身体弄るの好きだからね君は…。
だが、僕の機嫌はすぐ悪くなる。朝子供達を送った後、僕は騎士に呼びだされた。なんでも昨日の騎士のことで少し問題が起きたようだった。
憤るユミルを説得してテントへ残し貴族の集まる本陣近くの天幕へと向かう。今回の件にユミルは関係が無いし下手に介入させて立場を悪くするのも良くないためだ。
「すまない、状況と証言では君達が被害者であると証明出来るんだが…。」
「あのぽっちゃり騎士が騒いでるんだね?」
「微妙に権力があるからな…鬱陶しいことだ。回復魔法に直接戦闘も出来るお前さんが居なくなるだけで損害が増えるんだから何もしなければいいんだがなぁ…。」
「まぁ、上手く他の人達を味方に出来れば無罪放免、出来なかったら首か慰み者行きかな?」
呼びに来たのは昨日駆け付けてくれた騎士さんの一人だった。世間話と言うか愚痴の言い合いしながら天幕へと到着する。騎士さんはゲンナリしていた。
「ここから先には他のお貴族様もいらっしゃる。あの人達は礼儀には非常にうるさいからな。その辺は気をつけてくれよ。」
「わかってるさ。まぁ、冒険者にそんなこと期待されても困るけど前向きに検討した後善処はするよ。」
「政治家みたいな返答だな…。まぁいい。昨日の暴力事件のことで呼び出された冒険者を連れてきました!お取り次を!」
天幕を守っていた騎士は敬礼すると中に入っていった。わざわざ確認を取りに行ったんだろう。この辺のことは必要なんだろうか…中の人に聞こえてるんだろうに…。
「どうぞ、中で他の方々がお待ちです。」
しばらく待っているも先程の騎士が戻って来てそう告げる。入口で剣と槍を騎士に預けて入って行く。服装は冒険者的正装であるフル装備で来ていたからだ。
中はプレゼン用会議室のような机を複数組み合わせた縦長の長机が用意され、そこにおそらく貴族であろう方々が集まっていた。
今回はただ冒険者や集まった商人なりのトラブルではなく騎士団に所属する騎士が起こした事件である。そのためただ喧嘩なりした者を追い出すなり収容施設行きになるのでは無く裁判のような形式で判断されるとのことだ。
その判定をするのは勿論上の方々。ここに集まっているのはその判断を行う者達なんだろう。今はスタンピードの事で忙しいだろうに呼び出された人達は迷惑そうな顔をしている。
「はぁ…。やっと来たか。なら早く始めようではないか。」
「そうだな。早く終わらせて軍議を再開しなければ…。」
「どう見たって子供ではないか…。あいつは何考えてんだ…。」
本当に迷惑そうだ。なら騒いだ馬鹿のためになんで呼んだし。
「これで当事者は集まった。では、早速始めようではないか。」
その言葉と共に今回起こった事件について同伴した騎士さんが説明し始めるがそれはすぐに遮られる。
「いやはや、本当に困ったものだ。まさか私が声をかけたのは娼婦の真似事をしていた冒険者の小娘であつたとは。
この私の目を欺き剰え暴言と暴力の数々。この様な者が我が軍に従軍していようとは…この私に恥をかかせた上何の謂れのない罪をでっち上げたこの冒険者に相応しい処罰を期待します!」
勿論、昨日のぽっちゃり騎士だった。その声は自分に恥をかかせた相手にどうやって落とし前を付けさせてやろうかと嗜虐心と優越感が多分に含まれている。
その嬉々として他者を陥れようとする言動に集まった者達に露骨に顔を顰められたり、ため息を吐いたりされていた。本人は全く気付いている様子も無く朗々と自分色に脚色された事の顚末を話していたが。
「ほう?他の者達からの話しとは食い違う意見だがそれは事実かね?もしそうならまた状況等洗い直さないといけないのだが?」
彼は自分が有利になるようにない事ばかり話しているがここに集まっている人達は勿論他の騎士達に状況の報告はされていた。明らかに聞いていた話しと違うため呆れた様子で疑問を口される。
「いやはや、まさか報告を行った者が虚偽の報告を行うとは!これは私を陥れるために違いありません!是非私が用意した証人の報告も聞いて欲しいですな!」
彼はそう言うと証人だと男を連れて来るがどう見ても昨日、その場に居なかった男である。彼はぽっちゃり騎士に促されて証言するが勿論ない事ばかり口にしている。
わかってるんだろうか?この上層部のお歴々の前で虚偽報告を行う事がどんな行為だと言うことか。しかし、馬鹿はその者以外にも居た。平民から搾取することが当然と思っている連中である。
「おぉ!まさかそんなことが!これは許させざる暴挙!即刻罰を与えるべきですな!」
「然り然り。この様な者は後方担当よりも前に出して肉壁として使うべきであるな。高貴な身分の我らとは違う平民なのだから。むしろ我ら貴族の為にその身を捧げられることを光栄に思うべきである。」
「まさにそうですな!もしこの者が我らに対して誠意を見せるのであれば話しは別ですがな!」
彼らは欲望に濁った目で僕を舐め回す様に見ている。自分達貴族以外の平民には価値が無いとでも言いたげな態度だ。実際そう思っているんだろうが…。
ついでにぽっちゃり騎士は誠意を見せろと言うが何をしろと言うのか…ナニをしろって話なんだろうが御免被る。
その発言を聞いて眉を潜めたり露骨に嫌な顔をする人達もいるがその人達は比較的マシな人達なんだろう。何も弁護してくれないのは頂けないが…。
「もう良いでしょう!賛成して下さる方々も居ります!その上証言もこの通りでございます!処分は私が行います故判決を求めますぞ!」
ぽっちゃり騎士は自分に賛成してくれる者がいるので他の者達に何か言われる前に事を終わらせてしまいたいんだろう。焦るかの様に判決を迫るが流石にこれはないだろう。
「お待ち下さい!現場を見ていた者は他にも大勢おります!その者らにも証言をさせる必要がありますし、何より彼女は回復魔法を使える貴重な人材です!すぐに判決を迫るのは早計かと!」
送って来てくれた騎士さんは僕の弁護をしてくれるが
「黙れ平民風情が!貴様ら爵位すら持たぬ騎士とも呼べぬ者が我ら貴族に意見を言うなど無礼であるぞ!身の程を知れ!」
「然り然り!煩いこの者には退場願いましょう。連れて行け!」
「ハッ!」
馬鹿達が無理矢理騎士さんを連れ出してしまう。彼も抵抗しようとするが他の貴族の見ている手前、暴れる訳にもいかず悔しそうに僕を見ながら退場させられた。
(うーん、流石にここまで馬鹿が多いとは思わなかったなぁ…。それに他の人達も僕のことをどうでもいいと思ってるのかあんまり弁護してくれないし。)
このまま黙っていると勝手に有らぬ罪で妙な罰を課せられかねない。あまり使いたくなかったが救えない方々には後悔してもらおう。
「いくつか言いたいことがあるけど…発言してよろしいでしょうか?」
「ふん!平民ふぜ「よかろう。言ってみろ。」…えぇ!」
一人の男性が言葉を遮って先を促してくれる。彼はその人には逆えず黙ってしまう。権力者は権力に弱いらしい。
「それはどうもありがとうございます。では、先程彼が仰っていた暴言暴力の数々ですが、正直私は身に覚えがありませんね。
私はあの日確かに現場に居りました。ただ話しかけられた時、私は私服に剣を携えており、まず娼婦には見えなかったでしょう。
それに声をかけて来たのは彼からですし、その内容も高貴な自分に声をかけられれば喜んで股を開くべきだと言う傲慢な物でした。
それを拒否すると逆上した彼に斬りかかられ致し方なく応戦、捕縛したと言うことです。決して彼やその人が言っていたことなどしておりませんね。」
「だ、黙れ!嘘を言うんじゃない!平民ふ「さっきから平民平民とうるさいね。」」
「な!貴様!この俺の言葉を遮るなど!」
「一応、言っておくと私は平民ではありません。貴族ですよ?」
「ハッ!何を馬鹿なことを!平民風情が貴族を名乗るなど大罪であるぞ!処罰をキツくしなければいけないな!」
「いやいや、私は貴族ですよ。ですよね?お父様?」
「あぁ、確かに彼女は貴族だ。それもそこのへっぽこ騎士などとは格の違う…な。」
僕の問いに答えてくれたのは先程、へっぽこ騎士の言葉を遮ってくれた男性。僕のお父様であった。
正直、スタンピードが終息して逃走するその時まではバレずに居たかったが馬鹿のせいで台無しになってしまった。
僕は認識阻害の仮面を外して顔を晒す。見ていた貴族達は感心したかの様な声を出す。
「では、改めて自己紹介致しましょうか。
私はの名前はシルフィエット。ランクD冒険者であり、そこにいらっしゃるお父様の一人娘です。以後お見知り置きを。」
格好的に女性のカテーシーのようは礼では無く男性の礼の方が映えると思った僕は男性の礼をとり挨拶を終えた。




