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麻薬エルフ   作者: 銀玉仮面
メキシコ編
8/26

4-2

車は次に『ARAYA』と言う店で停る。駐車場に車を停め、店に入る。首都でかなり広い敷地と駐車場を持っているという事実が、この店の人気ぶりを物語っていた。


店に入ると、カラミティの姿を確認したスーツの男性が近づいて来る。オールバックの金髪をワックスでキッチリと固めており、表情はお手本の様な笑顔。


「お久しぶりですゴールドウィン様!本日はご指名有難う御座います!お嬢様のコーディネート、このカゲツが努めさせて頂きます!」


「相変わらず元気そうだなカゲツ。少々特殊なオーダーでな。お前達にしか頼めないと思って来た。」


「身に余るお言葉!仕立てるのはそちらのお嬢様のお召し物で?」


「ああそうだ。名前はシナトラ。シナトラ、好きに選んでくれていい。金は気にするな。」


「シナトラお嬢様、本日は宜しくお願い致します〜!本っ当に可愛いらしくて、お人形さんみたいで」


カゲツが少女の頭を撫でようと手を近付けた瞬間。


「...止めて。」


「...し、失礼致しました...。」


鞄に手を入れ、カゲツに聞こえる様にリボルバーの撃鉄を起こす。何時でも抜ける体勢を取り、カゲツから距離を取る。


「この子は極度の男嫌い...でな?採寸等は女性の従業員にやらせてくれ。」


「畏まりました。お嬢様、申し訳御座いませんでした。」


「良いけど、不意にやられたら次は撃たない自信が無いわ。だから、いきなりはやめてね?部下にも言っておいて。」


「それはもう!...ンンッ!では、こちらへどうぞ。ご案内致します〜!」


カゲツに案内され、様々な洋服が並べられた広い店内の奥の従業員用の部屋から、更に奥の部屋に案内される。


部屋には姿鏡と採寸用の型紙や道具置かれていた。そして、そこには似つかわしく無い射撃場もあった。


「お嬢様、何点か質問をさせて頂きますね。オーダーメイドのドレスですが、タイプはお任せでよろしいですか?」


「ええ。2着お願い。細かい要望は出させて貰うから、調整お願いね。」


「承知致しました。ご使用のタイミングは?」


「何時来ても可愛いヤツ。」


「色のご希望は?」


「黒とワインレッド。」


「では次。袖はロング?ショート?」


「ロング。」


「スカートの長さは?」


「膝より少し上が良いわ。」


「背中と鎖骨は見せますか?」


「見せないわ。首元まで隠したい。」


「フリルは?」


「ん...ワンポイント位で。」


カゲツは質問の答えをメモにまとめて行く。


「畏まりました。戦闘は想定されていますか?」


「防弾加工と耐魔力コーティング、それと防刃加工も出来る?」


「可能です。防弾加工ですが、ドレスの表面生地は耐魔力コーティングを施したシルクになります。裏地に強化カーボンファイバー、生地との間にはマイクロ構造のクロム鋼帷子を挟んでいます。裏地と帷子で銃弾の侵攻は止められますが、無傷では済みません。痣は残るでしょうし、相当な痛みもあります。」


「それ位は覚悟の上よ。」


「防刃に関しては、一般的なコンバットナイフ程度なら余裕で跳ね返せます。ただ対装甲突撃刀や、異世界産の魔剣相手になりますと少々分が悪いですね。接近戦は避けた方がよろしいかと。」


「了解よ。」


「では採寸に取り掛かります。レディーズ、カマンッ!」


カゲツのパパン!と小気味良い手拍子と同時に、ドアから女性従業員が3名入って来る。一糸乱れぬタイミングで同時にお辞儀をする。


「アドラは背丈と背肩幅、背幅もね!サマンサは袖丈とバスト!お嬢様こちらの椅子に。...ジェシーは股下と首回り!パッパとやる!」


素早い指示を飛ばすカゲツと、それに完璧に追従してみせる彼女達。嵐のように一瞬で採寸は終わる。


「後は微調整ですね。お届けはゴールドウィン様のVIPルームで?」


「ああ。頼む。それと、普段着やらも買っていくよ。」


「ありがとうございます〜!」


その後はカゲツとレディーズに見送られてVIPルームを出て、少女の下着や普段着を購入し退店する。太客という事もあってか、車が発進しても見えなくなるまで見送られた。


時刻は既に夕方近くになっていた。ホテルへ戻る車の中、少女はタブレットを弄り、カラミティはただ静かに座っていた。


「信用されてるのね。裏の連中に、だけど。」


「この世界で私も長いからね。裏切られるまで殺さず、有能な人材に投資する。これが出来なければ長生きは出来ない。」


「ふーん。貴方も何かありそうね?」


カラミティが少女の方を向く。牛の頭蓋骨の目があるはずの窪みには黒い靄があり、一瞬金色の目が光る。


「秘密だ。何れ教えるさ。...それより、戻ってから何をする?」


「勉強するわ。他の国の言語と、銃の知識。後は歴史とか色々ね。片っ端から脳に詰めて行くつもり。」


「素晴らしい。君の部屋を用意してあるから、そこで勉強すると良い。」


「感謝するわ。」


「君は有能な人材でもあり、もう私の娘みたいなものだ。」


「酔狂な人ね。...待って、貴方ってヒトなの?」


「さあ?」



車は屋敷の地下駐車場に停車する。


車から降り、エレベーターで屋敷に戻る。


「さて、子供達も帰って来ている頃か...。夕食は出来るだけ全員で取るんだが、参加は...」


「する訳ないでしょ。部屋に届けさせて。」


「困った子だ。」


「養子は何人いる?」


「4人だ。」


「...小さい子も居るの?」


「ああ。」


「その子達の前では銃は撃たないし、人も殺さないようにする。...よう、善処するわ。」


「不安だな...。ま、そうしてくれ。」


エレベーターガールから降りてエントランスに向かうと、赤髪の男が玄関から入って来るのが見えた。

3人は互いを視認する。


「親父か。ん?隣のちっこいのはなんだ?」


「新しい家族だ。名前はシナトラ。彼はベレト。順番では次男だな。」


「いやぁ驚いた。エルフの女だからてっきりコレクションか娼婦かとおもったんだが、...ぐあっ...!?」


下卑た笑いで少女を見下ろすベレトの股間に、少女は凄まじい速さで方足蹴りを叩き込む。

ベレトは痛みで失神しそのまま倒れる。


「喧しいガキね。死ななきゃ分かんないタイプ?」


「言ったそばから...。まぁいい。誰か!ベレトを部屋に運んでやれ!」


直ぐに使用人が数人駆けつけ、ベレトを連れて行く。


「...さて、夕食まで時間もある。部屋にはスマートフォン等必要な物は置いてある。欲しいものがあれば言ってくれ。...連れて行ってやれ。」


カラミティは使用人に指で合図しする。


「ありがと。さっきの奴にはよく言っといてね。」


使用人の後に続き、割り当てられた部屋に向かう。電子キーも貰い、部屋に入る。


「...誰?お姉ちゃん。」


「...それはこっちのセリフよ。」


部屋には何故か先客が居た。

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