蘇生
ほんの数分前の喧騒が嘘のように、静寂だけが残された。
突如現れた3人の魔王と、その配下の一万を越える上位魔族達が、僅か数分の間に全て殲滅されてしまったのである。
それは、100を越える禍々しい悪魔達による、あまりにも一方的な撲殺であった。
だがしかし、今目の前に立つこの大悪魔ならば、きっと先程の悪魔達より容易く殲滅出来たのだろうと思うと、恐怖すらも飛び越えて最早抱く感情など何も無かった。
「ふん、逃げたか。」
大悪魔は、そんな事を言いながら何者かに苛立ちを見せたが、先程まで発していた激しい圧は解かれていた。
「面倒だが、これは流石にこの世界の秩序に反するのでな。」
またしても、大悪魔は訳の分からない事を告げると、先程悪魔を召喚した時以上の魔法陣を展開した。
先程と違うのは、今度の魔術はたった1つであり、先程まで魔族の軍勢がいた大地を全て覆う程のサイズの魔法陣が展開されていた。
「散り行く魂達よ、再びこの地へ蘇る事を我が許可する。―――死者蘇生。」
大悪魔がそう唱えると、巨大な魔法陣が赤く激しく輝き出した。
そして、先程まで血の海だったところから、次々に魔族達の姿が現れた。
そこにはなんと、先程の惨殺で死んだはずの魔王達の姿もあった。
「そ、蘇生魔術……だと……!?しかも、こんな広範囲に……あり得るのか……!!」
そのあり得ない光景を前に、サリエラは酷く驚いていた。
無理もない。
蘇生魔術自体禁忌の魔術であり、天使や神々にのみ使用できるとされる究極の魔術なのだ。
サリエラ自身、それを扱いたくても扱えないが故、ネクロマンサーとして死者を使役しているのである。
だが、今目の前で起きているこの光景は、紛れもなく蘇生魔術だった。
そして、その対象は1つではなく、広範囲に並行して行使されているのである。
こんな大魔術は、天使や神々でも恐らく不可能だろう。
つまりは、今目の前にいるこの大悪魔は、それすらも超越した存在に他ならないのだろう。
もはや、大悪魔という言葉なんかで称していいのかどうかすら分からない存在だった。
「あ、あれ?私は確かにあの時化け物に……そうよ、じゃあここは何?地獄!?嫌よ……嫌、嫌ぁあああ!!」
蘇生されてすぐ、正気を保てなくなったメルディが奇声をあげた。
同じく蘇生されたセタスやドラバルド、それから一万を越える魔族達も同じく事態が飲み込めず戸惑っていた。
だが、少し経てばここが先程自分達が惨殺された場所である事に気が付き、確かに自分達は一度殺されたという恐怖と、何故か再びこの地に現れている事に対する疑問で混乱していた。
「洗脳は解けている。あとはお前達同士でなんとかしろ。」
やれやれと、大悪魔はサタン達にそう告げると、興味無さげに人間達の元へと帰って行った。
そんな大悪魔の背中を見ながら、サタンは笑うしかなかった。
あの大悪魔は、彼らが何者かに洗脳されていることを察していた。
だから、一度殲滅した上で蘇生する事で、その洗脳を解いてみせたのだろう。
なんて大雑把で残酷な対処法なんだ。
それだけの力があるのならば、もっと穏便に洗脳を解く事は出来なかったのだろうか。
だがしかし、もしここに大悪魔が居なければ、恐らく我々の手で彼らを殺すしか無かっただろう事を考えると、今サタン達が得られる結果としては、これ以上無い程良い結果となった事は間違い無かった。
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