蹂躙
「貴様ら、何しにきた?」
突如現れた3人の魔王に対して、不機嫌そうにサリエラが告げた。
何しに来たと言ってはいるが、大方察しはついているのだろう。
「何って、アハハハッ!見ればわかるでしょ!」
そんなサリエラを嘲笑うメルディ。
メルディの背後には、数千のヴァンパイアやサキュバスが控えている。
中にはヴァンパイアロードの姿まで見えるところから、奴らは全戦力をこちらへ向けてきているのが分かった。
すると、その中から1人の少女が物凄い勢いでこちらへと飛んできた。
サタン達は直ぐ様戦闘態勢を取った。
理由は不明だが、我々を害そうとするなら分からせるしかなかった。
お前達が何を相手にしているのか、その身をもって味わうがいい。
「ま、待って!違うから!!」
だが、その少女から戦意は感じられず、その様は本気でこちらへ逃げてきたという感じであった。
「お前は。」
「ひ、久しぶりねサタン!私は戦う気は無いわ!それよりあの子達をなんとかして頂戴!」
近付いてくる少女の姿を見て、それが何者かが分かった。
成る程、こいつがこんなに慌てて助けをもとめてくるという事は、やはりヤクリムで何かが起きているのは間違い無さそうだ。
そうして、こちらへ飛んできた少女は、サタンの前に降り立つと助けを懇願した。
「急に国中の人達がおかしくなったのよ!私は影響されなかったけど、ワケわからないし下手に行動したら何されるか分からないから一緒についてきたらこれよ!どーなってるのよ!」
「成る程な。」
やっと普通な人に出会えた事に安堵した少女は、慌てて今の状況を説明し出した。
そして、その説明を聞いていた大悪魔が、不機嫌そうに一言呟いた。
「また貴様の仕業か。」
大悪魔は、誰に言うわけでもないが、誰かに向けてそう告げた。
その迫力は、先程サタン達に向けられていたそれとはまた異なるが、しかし先程以上の凄みを持った圧を発していた。
その圧に、一瞬この場の空気が揺れたのを感じた。
それは、見えない何かがまるで酷く怯えたように感じられた。
「不愉快だ。」
大悪魔はそう告げると、無数の魔法陣を展開した。
その1つ1つが、サタンをもってしても見たことがない高度な魔法陣だった。
それが100以上一瞬にして展開されたのだ。
これが只事でない事は、この場にいる全員が一瞬で悟った。
大悪魔の事をよく知らないであろう少女はガタガタと震えていたが、無理も無かった。
「蹂躙せよ。」
大悪魔がそう告げると、魔法陣の中から無数の悪魔が現れた。
悪魔召喚の魔術は、サタン達魔族も稀に用いる事はある。
だが、今目の前で繰り広げられているそれは、知っている魔術とは根本的に違った。
そこに現れたのは、体調20メートルを越える巨体の悪魔から、禍々しい姿をした死神のような存在など、どれも見たことも無い無数の悪魔達であった。
そしてサタンはすぐに理解した。
この一体一体が、自分達よりも遥かに上位の存在であるという事を。
そして、現れた100体を越える悪魔達は、3人の魔王の軍勢を目掛けて一目散に駆け出した。
それからは、まさに地獄そのものだった。
ここゴエティアにおける上位の魔族達が、まるで風に舞う木の葉のように簡単に弾き飛ばされ、一瞬にして命を奪われていく。
それは、1000年前の戦いすらも可愛く思えてしまうほど、あまりに圧倒的で悲惨な光景だった。
だが、この場にいる全ての存在がそれを止めることも、介入することも出来なかった。
圧倒的力をただ、黙って見ることしか出来なかった。
「な、なによこれ!?ひぇ!!く、来るな化け物!!」
そう叫びながら、無数の顔を持つ禍々しい悪魔に引き裂かれるメルディ。
「チ、チクショー!!ふざけんじゃねぇー!!」
巨大なアックスを振り上げ斬りかかるも、巨大な悪魔にアックスごと全身を飲み込まれてしまったセタス。
「グオォォォ!!」
エンシェントドラゴンの真の姿を発揮し、巨大な龍の姿となったが、それでも変わらず剣士の悪魔に一撃で真っ二つに斬られてしまったドラバルド。
そうして3人の魔王も、他の配下達と何も変わらず等しく簡単に屠られていく。
「も、もうやめてくれんか……やめて……。」
先程まで怒りを露にしていたサリエラだったが、目の前で繰り広げられる惨劇に怯え、耐えきれない様子で神に祈るように手を組み震えていた。
冥府の女王として、散り行く魂を憂いているのだろう。
だが、無情にも戦いとも呼べない戦いはあっという間に終結した。
時間にして、5分と少し。
たったそれだけの時間で、魔王を含む一万に近い上位魔族達が全て滅ぼされてしまったのだ。
そして仕事の終えた悪魔達は、大悪魔に向かって一礼をすると、その姿を消した。
悪魔達が去って行った辺り一帯には、先程までそこにあったはずの魔族達の血で溢れていた。
「な……なんだこれは……あっちにいたら私も……嫌……嫌嫌嫌……。」
こちらへと避難してきた少女は、わけが分からない様子で放心状態でブツブツと呟いていた。
少女だけではない。
ここに残された全員が、呆気に取られ固まってしまっていた。
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本気でキレたアスタロトは恐ろしい。




