新旧魔王激突
大地を強く蹴り上げると、一瞬にしてガルドの元へと迫ってきたフェンリル。
光のごとく高速で移動するフェンリルを前に一瞬戸惑ったガルドであったが、直ぐ様攻撃でそれを迎え撃つことを決意した。
仮にここで飛び退いて距離を取ろうとしたところで、圧倒的にフェンリルの速度の方が上なのだから意味が無い。
そのことを即座に悟ったガルドは、迫りくるフェンリル目掛けて巨大化させた漆黒の右腕を容赦なく振るった。
ガルドは、あり得ない速度で迫りくるフェンリルに最初は驚かされはしたが、瞬時にこれはむしろチャンスである事に気付いた。
何故なら、裏を返せばこの速度で迫るフェンリルもまた、この一撃をかわすのは不可能な間合いとなっているからだ。
高速で迫る相手に、高速の技をぶつけるのだから、その間の時間などほんの極僅かだ。
それに気が付いたガルドは、呆気なくも早々に勝利を確信し、自然と笑みが浮かび上がった。
確実にこの一撃で沈める。
そう決心したガルドは、持てる力の全てを籠めてフェンリル目掛けて右腕を振り下ろしたのだ。
「これで終わりだぁ!!」
ガルドの放った右腕は、巨大な漆黒の刃のように激しい斬撃を生み、そのままフェンリルごと飲み込むと激しく地面にめり込んだ。
そこから生じる漆黒のエネルギーにより、辺り一帯に大きな窪みが生まれる。
そして次の瞬間、黒い波動と共に大地が一瞬にして空高く吹き上がった。
確かな手応えがあった。
フェンリルが消えてからというもの、磨きに磨い抜いた己の渾身の一撃なのだ。
例えフェンリルであっても、これを受けて無事であるはずがなかった。
「腕を上げたじゃないか、ガルドよ。」
だが、まるで何事もなかったかのように語るフェンリルの声がガルドの耳に聞こえてくる。
内心酷く驚きながらも、冷静を装いながらガルドは訊ねた。
「……確かに当たったはずだ。何故、貴様は無事なんだ?」
「お前の攻撃と同等の技で相殺しただけだ。」
さっきの一撃を相殺した?
この俺の全力の一撃を相殺する程の技を、あの一瞬で放ったと言うのか!?
「あ、あり得るかっ!!」
そんな事出来るはずがない。
フェンリルとは、かつて何度も戦った事があるガルドだから解るのだ。
さっきの一撃はフェンリルで処理出来るレベルではないと。
きっと何かのインチキをしているに違いないと判断したガルドは、怒りに任せて今度は両腕でフェンリル目掛けて叩き込み続けた。
ガルドの連続攻撃により、辺り一帯が爆風で砕け散る。
だが、フェンリル目掛けて何度攻撃を与えても、その全てがフェンリルの元へ届いていない事にようやく実感として気が付いたガルドは、慌てて攻撃を止めると後ろに飛び退いた。
「……なん、なんだ貴様は?」
「だから言っただろう。相殺するだけだと。」
「な、何故だ!?何故お前にそんなことが!?」
「確かにお前は前より一段と強くなっている。当時の俺ならば結果は分からなかっただろう。だが、俺はそんな低次元な争いから切り離された環境で特訓を続けていたのだ。お前があと何段強くなろうと、決して届くことはない方々に囲まれてな。」
ガルドは、フェンリルの言っている事の意味が分からなかった。
だが、この俺を、これまでの努力を、こいつは低次元だと一蹴した事だけは分かった。
そんな、フェンリルを越えるためだけにこれまで積み上げてきた努力を踏みにじる発言に、ガルドの怒りは瞬時にピークへと達した。
ならばよかろう、フェンリル!
お前に絶望を味合わせてやる!
怒りの感情とは裏腹に、ガルドの頭は血の気が引いたかのようにどんどん冷静になっていく。
何故なら、これからガルドの取る行動が決まったからだ。
「そうか、ならばお前に見せてやろう。この俺の本当の力をな。」
もうやめだ。
ガルドは、己に課していた縛りを解放する。
それは、この場にいる誰しもが知らないであろう真実を解放する事を意味する。
ガルドの側近であるソリンですらも知らないであろう、ガルドの真の姿を。
◇
ガルドの全身を漆黒のオーラが包み込む。
そのオーラは次第に大きくなっていき、辺り一帯全てを包み込んだ。
そして、そのオーラの中から、先程までのガルドとは似ても似つか無い何かがゆっくりと動き出す。
長く伸びた尾に、巨大な牙を持つ大きな口。
そして体長20mを優に越える程の巨大な蛇が、漆黒のオーラの中から姿を現した。
―――ヨルムンガンド
それが、ガルドの正体。
フェンリルと並ぶ、魔物の最上位に位置する伝説級の怪物なのであった。
またしても遅れてしまい申し訳ありません。
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