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戦いを終えて

「戦いはこれまでだ。しかし、お前達は我の期待を大きく上回る結果を残してくれた、誇るがよい。」


 突如上空から現れたアスタロトが、先程までの熾烈な戦いを一言で止めると、ここにいる全員に向けてそんな事を告げた。


 期待を大きく上回る結果とは?

 何故アスタロトが現れ、そして何を言っているのかマーク達全員理解が追い付かなかった。


「ちっ!サイリスまでもか……。あーもう!これでいいんだろ?俺はお役御免だ!」


 そんなアスタロトの一言に、悪態をつきながら踵を返すキマイラ。

 という事は、状況から察するにこのキマイラ達の軍勢はアスタロトが仕向けたという事になる。


「どうして貴女がこんなことをするの!?」


 同じくその事に気が付いたクレアが、アスタロトに向かって詰め寄る。

 何故、こんな魔族や魔物の群れをこの里へ向けるような真似をしたのか、マーク達には全く意味が分からないのだ。


「これも訓練だ。こやつらには最初からやり過ぎないように命令していた。最も、最後のこやつの動きはそうではなかったようだが……?」

「ちょ!あれは!ちょっと熱くなっちまっただけで分かっていたぞ!!」


 そう言って、アスタロトがチラリとキマイラの方に目を向けると、すぐに慌てて怯えるように言い訳をするキマイラ。


 あの、マーク達では歯が立たなかった圧倒的強さを誇る伝説級の魔物キマイラが、あろう事かアスタロトのたった一言に恐れ縮こまってしまったのだ。


「まぁ今回だけは大目に見てやろう。次は無いと思え。」

「……あぁ、分かってるよ。。」

「ふむ、しかしマーレーよ、良かったな。」

「……はい。帰ってきてくれた。」


 良かったなと言うのは、先程の戦いの中でマーレーが再び召喚に成功したカーバンクルの事だろう。


 しかし、あの時は戦いに精一杯で考える余裕はなかったが、思い返せばあの使い魔の持つ力は凄まじかった。

 それこそ、あのキマイラすらも凌駕する程の力を秘めていたのだ。

 最早、人間が従える使い魔の領域を越えていると言える。

 まぁそれを言ったら、このアスタロトが使い魔をやっている時点で訳が分からないのだが。


「いつまで寝ておる、お前達にはまだ仕事がある。」


 そうこうしていると、アスタロトはマーク達に倒された魔族や魔物達に回復魔術を施した。

 その魔術により、倒れていた魔族や魔物達の傷は瞬時に無くなり、全員ヨロヨロとその場に立ち上がった。


「なっ!?なんで回復させてるのよ!?ちゃんと説明しなさいよねっ!?」

「あぁ、こやつらは我の配下だ。此度は、お前達に実戦を経験させるため動かしたまでだ。」

「実戦って何よ!?そのために、この里を襲わせたっていうの!?」

「先程も言った通り、本当に襲わせたわけではない。お前達に我の居ない状態での戦闘を経験させるために仕向けたのだ。」

「な、なんでそんな事する必要があるのよ!?」

「逆に聞こう。何故、ここ魔族達の住まう国へやって来て、自分達は無事だと思うのだ?」

「だって、ここはミスズの里だから……。」

「人間同士でも争うのだ、それだけでは理由に成らないだろう。里の外部からの侵略だって起こり得る。」

「だ、だからって、こんな事するなんて……!!」

「だがまぁ、お前の言う事も最もだ。急にこやつらを仕向けた事は詫びよう。」


 そう言うと、すまんかったなとクレアに頭を下げるアスタロト。

 その様子を見た魔族や魔物達が一斉に驚いた。

 まさかあの大悪魔が、一人の人間の少女に頭を下げるなんて思いもしなかったのだろう。


「ま、まぁ無事に済んだからい、いいんだけどっ!次からはもうちょっと程度ってもんを考えてよねっ!!」

「あぁ、そうしよう。しかし、お前達は我の期待を上回る結果を残してくれた。これならば、この世界のほとんどの存在に対して遅れを取ることはなかろう。」


 アスタロトの取った行動の理由は分かった。

 まぁ、正直ギリギリの戦いであったが、マークとしてはこうして無事に済んだのならばとりあえず後はどうでも良かった。


「先程の一太刀、見事であった。」


 遠巻きに、そんな事を考えながら終戦に気の抜けていたマークの元に、先程戦ったデュラハンがやってきて手を差し伸べてきた。


「いや、こちらもギリギリだったよ。やられるかと思ったぜ。」


 マークは、そんなデュラハンに返事をすると、その手を取り互いを讃え合った。


 しかし、これまではデュラハンなんて凶悪な魔物としか思っていなかったが、こうして接してみると種族が違うというだけで、ちゃんと向き合えば互いに理解し合えるものなのだという事を実感した。


 こうして、マークは互いに全力を出し合い戦った魔族や魔物達としばしの会話に花を咲かせたのであった。




 ◇


「サ、サイリス様!!どうしてここに!?」

「ん?あぁ、君はゲンブの里のミスズくんだったかな?そうだね、私もつい先程、こちらのアスタロトさんに敗けちゃいましてね。」

「サイリス様が!?あ、でもお師匠が相手だったらそうか……でも……。」


 突然現れたアスタロトに驚き、何故か隣にいるサイリス様に驚き、そしてまさかサイリス様が敗けたということに驚くミスズ。


 確かに、お師匠であるアスタロトは物凄く強い。

 だが、ミスズからしたらサイリスも同じく圧倒的な力を持つ存在であり、そんなサイリス様が戦いにおいて敗けるなんていう事が正直信じられなかった。


 しかし、これはもう今のミスズでは届くことのない領域の話であり、推し量る事など不可能な話なのだろうと一先ずは納得する事にした。


「ふん、何を言う。お前はまだ全力ではなかったであろう。」


 サイリスの一言に、アスタロトは鼻で笑いながら二人の会話に入ってきた。


「まさか、私にそんな余裕ありませんでしたよ。それを言うなら、貴女の方こそその力の3割も出していなかったでしょう。」

「あぁ、我が全力を出したら、この世界など容易く滅びるであろうからな。」

「それは恐ろしい。呉々も怒らせないように注意する事と致しましょう。」


 そんな二人のやり取りを見て、安堵するミスズ。

 どうやら、自分達の神様のような存在であるサイリス様と、自分のお師匠であり世界最強の大悪魔であるアスタロト、二人の仲は悪くないようで一安心した。




 ◇


「では、お前達。明日より引き続きこやつらの戦闘訓練に付き合え。同時にこれは、お前達の訓練にもなるであろう。」


 ようやく落ち着きが生まれた所で、アスタロトはこの場にいる全員にそう告げた。

 それを受けて、マジかよとゲッソリするキマイラにクレア、笑みを浮かべたままのサイリス、そして明日から宜しくと手を取り合うマークやデュラハン達の姿がそこにはあった。


「ねぇ待って、アルスくん達の方はどうなったの?」

「あぁ、あっちは心配ない。ここより先に決着がついておる。」


 そんなクレアの問いかけに、アスタロトは不適な笑みを浮かべながらそう答えたのであった。

色々とバタバタしており、更新が遅れてすみませんでした。

また、更新の頻度を上げられたらと思いますので、宜しくお願い致します。

宜しければ、評価や感想、ブックマーク等頂けますと、執筆の励みになりますので宜しくお願い致します。


次回、アルスサイド。

ついにアルスの真骨頂が発揮されます。

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[一言] サイリスは、なんだかんだ戦いたかったのか?
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