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草原での戦い④

 おいおい、マジかよ……。


 ガリュウは、目の前で繰り広げられる思いもしなかった光景に、ただ固まる事しか出来ないでいた。


 あのデタラメな大悪魔に指示されてここまで来たのだが、奴は何故かここにいる人間達の相手をしろと言うのだ。


 ガリュウは、これまで喰らい尽くしてきた人間の数なんて覚えちゃいない。

 つまりはガリュウにとって人間など、その程度の種族なのだ。

 魔族や魔物に比べれば酷く脆弱な愚かな生き物であり、ただの食料。

 その程度にしか思っていなかった。


 だから、大魔王が何故あんな脆弱な生き物どもを隣にのさばらせているのか不思議でしょうがなかった。


 当時、面倒だとガリュウは参加しなかった1000年前の侵略戦争において、大悪魔一匹により魔族軍が全て滅ぼされたという話は聞いている。


 人間に一匹の悪魔が加わった程度で、大魔王率いる魔族の軍勢が蹂躙されたと言うのだ。


 ガリュウは、大魔王と一度戦った事があるが故、あいつの圧倒的とも言える強さを知っている。


 だからこそ、何の冗談だと思った。

 他の魔族や魔物ならまだしも、あの大魔王が敗れるだと!?

 そんな馬鹿な話があってたまるかと。


 あいつは、この俺を!ガリュウを!顔色一つ変えずに簡単に倒した相手だぞ!!


 それに、その配下の魔王達にしてもそうだ。

 ベルゼブブやサリエラ、更にはここ奈落の当時の魔王であるあいつがついていながら、魔王軍が蹂躙されたなんて事は有り得ないのだ。


 だから、この話には必ず何か裏があるのだと思った。

 何か事情があって、進軍を止めざるを得なかったのだと。


 ガリュウが想像するに、きっと誰か魔王クラスの者が戦いに乗じて大魔王を裏切ったのだろう。

 それ故、人間の相手をしている場合ではなくなり一度撤退したのだと。


 現に、圧倒的な力を持っていた当時の竜国の魔王は戦いの中で命を落としたと言う。

 しかし、魔王を倒せるのは魔王だけだ。

 つまりは、架空の悪魔の仕業に見せかけて、実際は反旗を翻した魔王を大魔王が滅ぼした。

 それが事の真実なのだろうと思っていた。


 だからこそ、ガリュウはそんな魔王云々には極力関わらないように生きていく事を決めていたのだ。

 自分と同等、もしくは格上の化け物と睨み合いながら生きていくなんて更更御免だった。


 だが、それもガルドの出現により事情が変わってしまった。


 魔王達とぶつかるのは避けたい。

 だが、ここ奈落で魔王の座に座っていいのは後にも先にも一人だけなのだ。


 あいつが帰ってくる前に、ガルドなんかに魔王をやらせておくわけにはいかなかった。


 しかし、ガリュウは惜しくもガルドに敗れてしまった。

 だからこそ、思いを同じくする仲間達を集めたのだ。

 ここ奈落に住まう、圧倒的な力を持つ仲間達を。



 しかし、これはなんだ?


 ガリュウの目の前で、次々にそんな頼れる仲間達が倒れていくのだ。


 炎の大剣を持った少年、上空から魔族以上の魔術を何度も放つ少女。


 それに、遠方から高位の魔術を放つ二人の少女。


 しかしあれはなんだ?

 片方の少女は、エルダーリッチクラスの魔術レベルを持っていると思われる。

 それだけでも、ただの人間がそれ程の高位の魔術を扱える事に驚きなのだが、問題はもう片方のあれだ。


 ガリュウの配下でも、一番魔術を得意とするエルダーリッチを、あいつはあろう事か魔術でエルダーリッチを氷漬けにしてしまったのだ。


 エルダーリッチの放った魔術を、上から全て喰らい尽くした上でだ。


 あり得ない、ただの人間がエルダーリッチに魔術で勝るなんて事あるはずがないだろ!


 そして、あの大剣を持つ少年も異常だ。

 それまで少年を追い込んでいたデュラハンや魔物達が、あの大剣が現れてからは嘘のように防戦一方になり、そして簡単に斬り裂かれてしまったのだ。


 あの炎の剣はなんだ?

 ギガントタートルの岩より硬い甲羅を斬り刻んでしまったのだ。

 ガリュウであっても、ギガントタートルの甲羅を斬り刻む事なんて容易ではない。


 それなのに一体、何がどうなってやがる!?


 瞬く間に、ガリュウの仲間達はその全てが瀕死状態まで追い込まれてしまっていた。


 ここ奈落に住まう強者達が、あろう事か人間の子供により敗れてしまったのだ。



 ここでようやく、ガリュウは思い知った。

 あの大悪魔が、ただの人間を寄越してくるはずがなかったのだという事を。


 ガリュウでは全く敵わなかった大魔王ですらも逃げ帰ったという大悪魔。


 そんな冗談にもならない笑い話が、真実であったように。


 そんな大悪魔が連れてきた人間もまた、普通なはずがなかったのだ。


 ダメだこりゃ、もうメチャクチャだ。

 いきなり現れた大悪魔に負けた次は、異常な強さを持つ人間達に仲間が全部やられちまった。


 全く、何の冗談だよ。

 ようやく、あのクソガルドにリベンジしようって時によ。


 あーもう、ちくしょう!

 こうなったならもう、やるしかねぇよな!


「おい、人間ども!よくもやってくれたな!お前達に致命傷を負わせる事は禁じられていたのだが、止めだ止めだ!お前達を敵と見做して、全力でやらせて貰うことにした!手加減抜きだ!」


 ガリュウは、目の前に立つ人間達にそう告げると共に、大きな雄叫びをあげた。


 その雄叫びにより、大地が、そして空気が大きく揺れる。

 それはまるで、その場に漂っていた敗北の空気を吹き飛ばすように。



 ―――よくもやってくれたな、人間ども。覚悟しろよ。


コロナの影響で、在宅ワークが始まり色々バタバタしておりました。

外出が自粛される世の中ですが、そんな中この作品で少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


宜しければ、評価やブックマーク等頂けましたら励みになりますので、宜しくお願い致します。

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