権限者との戦い②
「クレアちゃんはやっぱり、アルスくんが好きなの?」
「なっ!?ちょ!?そんなわけ!!」
クレア、マーレー、ミスズ、それからマリアナとサリー。
ここゲンブの里へ来ている女子メンバー全員は、ミスズの自室へと集まり女子トークを繰り広げていた。
「そんな照れなくてもいいのにぃ!私はね、マークがすきだよ!」
「ふーん、やっぱり貴女そういうことなのね。」
「なーにマナリアちゃん?それはやっぱり、貴女もマークの事好きってことかなぁ?しかし、その大きな胸は強敵だな……。」
「は!?わ、私はあれだよ!マークとは戦友っていうかなんて言うか、そういう関係だから!」
「もう、皆素直じゃないなぁー。さっきからこっちを睨んでるサリーちゃんもだよ。」
「!?な、なにが!?」
「ほらやっぱり素直じゃない。あ!マーレーちゃんはどうなのかな?さっきから本ばっか読んでるけど、皆で話そうよー!」
女子トークをかき乱すミスズは、マーレーにも質問した。
マーレーの好きな男子は誰なのかと。
「私は……そういうのはまだ、よく分からない。」
「えーそうなの?一緒に居たらドキドキするー!とか、そういう気持ちになったりはしないの?」
「……よく分からない。」
「ちょっとミスズ、マーレー困ってるからそのぐらいにしてあげて。」
「あー、ごめんごめん!そっか、でもじゃあマーレーちゃんはこれからだね!」
そんな女子トークに花を咲かせていると、突然外から激しい爆発音が轟いた。
突然の出来事に全員驚いたが、すぐに緊急事態である事を察し、直ぐ様全員部屋から飛び出した。
音がしたのは庭の方だ。
ミスズが我先にと庭までたどり着くと、そこでは既にアルスとスヴェンが襲撃者との戦闘の最中であった。
そして、その襲撃者の正体に気が付いたミスズは、思わずその場で固まってしまった。
「……死神だと!?」
ミスズが固まるのと同時に、同じく爆発音に反応してやってきていたミスズの父ジンが驚きの声を上げる。
そう、今自分達の目の前にいるのは、ここ奈落で知らない者などいない存在。
死神ダイル。
それは、自分達アサシンオーガの上位種とされるシャドウオーガにして、サイリス様と同じくこの国の権限者の地位にある化け物の一人。
そんな雲の上のような存在が、何故だがここゲンブの里に現れ、そして主人であるマークの学友であるアルスとスヴェンと戦闘の真っ最中なのだ。
正直、あり得ない相手だ。
今すぐ全員でここから逃げ出すのが正解なのだろう。
しかし、ここはミスズの故郷、ゲンブの里だ。
であれば、相手がなんであろうともう戦うしかない。
家を、家族を、里の皆を守るために。
だが、直ぐ様助太刀しようとするミスズ達にスヴェンから声がかかった。
「ここは僕達に任せて下さい!他にも沢山の魔族達がこの里へとやってきています!皆さんはそちらに!」
「なんだと!?」
スヴェンのまさかの一言に、ジンが驚きの声をあげる。
他にも魔族が!?
同じく驚きながらもミスズは、直ぐ様跳躍して周囲の状況を確認する。
すると、1キロ程先のところに、魔族、そして魔物の集団がここゲンブの里へと押し寄せてきているのが見えた。
「何事!?」
遅れてクレア達も庭へとやってきた。
「混族による襲撃です!外にも沢山の魔族が里へ攻め込んできてるの!お願い皆、力を貸して!!」
恐らく、先程見えたのはミスズ達アサシンオーガよりも上位の魔族や魔物の集団だ。
ミスズは、マーク達と共に過ごす中で確実に以前よりも力をつけてはいるものの、自分より上位種の、しかもあの数の敵を相手になんて、出来るはずがなかった。
であれば、ここへ一緒にやってきた、信用できる仲間達に助けを求めるしかなかった。
「なんだかよく分からねぇが、ミスズの頼みだ。任せとけ!」
声のする方を振り返ると、そこには同じく騒ぎに駆けつけたマーク達がいた。
「ここは僕達でなんとかするので、皆さんは早く外の相手を!」
死神を牽制しながら、アルスがそう叫んだ。
その声に従い、他の全員は一度頷くと、覚悟を決めて一斉に外へと飛び出した。
―――――――
里の外に広がる平原へとやってきたミスズ達は、既に目前まで迫ってきている魔族達と対峙した。
そこにはエルダーリッチ、獣人、ヴァンパイア、虫の魔物、狼の魔物など様々な種族の、しかもその中でも上位である事が一目で分かる程の強者達が20以上。
そして、またしてもミスズはあり得ない事態に気が付きその場で固まってしまった。
最後尾にいる存在。
それは、他の魔族や魔物達より明らかに強い力を持つ魔物。
その名は、ガリュウ。
ここ奈落で、その名を聞くだけで全ての者が恐怖する程の圧倒的強者にして、魔物の頂点とされる存在。
そして、先程のダイルと同じく権限者の一人でもある。
権限者の中でも、唯一現魔王にも匹敵すると言われているガリュウまでもが、あろうことか今まさに自分達の里へと攻め込んできているのだ。
「大丈夫かミスズ?あの奥にいる奴だろ、確かにあれはやべぇな。」
絶望の表情を浮かべるミスズの背中を、軽くポンと叩きながら声をかけてくれたマーク。
「だが、一人では無理でも、俺達なら絶対に勝てない相手でも無いはずだ。皆を守るんだろ?」
「うん……でも……。」
でも、あれと戦うという事は、皆無事でいられるわけがない。
初めて出来た友達の皆、それから自らの主であり、恋心を抱く相手でもあるマークまでもが、あれと戦うというのならば命を奪われるかもしれない。
それ程までに、あのガリュウという存在だけは決して敵対してはならない相手というのが、ここ奈落での常識であり、そして絶対なのだ。
「ミスズの言いたい事は分かる。だが、ここで逃げたらきっと一生後悔する。俺は俺に嘘はつきたくないんだ。だから俺だけでも戦うぞ、例えどんな相手でも。」
戸惑うミスズを余所に、マークは真っ直ぐな眼差しをミスズに向けながらそう告げた。
そうだ、マークは元々そういう男だった。
悪魔が現れた時も、アスタロトさんと戦った時も、いつだってどんな相手でも立ち向かうのがマークなのだ。
だからこそ、そんなマークの事をミスズはいつしか好きになっていたんだ。
「……分かったよ、マーク。力を貸して。」
「あぁ、行くぞミスズ。」
こうして、マークとミスズは一度お互いの顔を見合い、そして笑みを交わした。
これから始まる決死の戦いを、互いに鼓舞し合うように。
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次回、ついにミスズサイドも決戦開始!




