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長い1日の終わり

 アスタロトさんとサミュエル団長二人の戦いも無事終わり、ようやくアルス達は寮へ帰宅出来る事となった。

 本当に色々あったけれど、なんとか無事に1日を終えることが出来た事に、アルスはそっと胸を撫で下ろした。


「帰られる前に、一つ宜しいでしょうか?こんな事、魔術師団長である私がアスタロト殿に頼むのも可笑しな話かもしれませんが、もし宜しければお暇な時で構いませんので、私どもに魔術を教えて頂けますでしょうか?」


 アルス達が訓練場を去ろうとした所で、サミュエル団長が思いきった様子でアスタロトさんへお願いを申し出てきた。

 確かに、先程見たとおりアスタロトさんの扱う魔術の次元は文字通り超越しており、あのレベルの魔術を扱える存在など、多分この世の中他には居ないと思える程に。

 でも、王国魔術師団の団長が、悪魔であるアスタロトさんに魔術を教えて貰うという構図は、どこか可笑しいようにも思えてしまう。


「ふむ、お前は我に魔術を教わってどうしたい?」

「……はい、私はこれでも王国最後の砦として、この国の国民を護る義務がございます。しかし、今回手合わせ頂いた事で、まだまだ己の実力不足を思い知りました。ですので、今より魔術の腕を上げ、今後起きる障害に対してこの国の民を護りきる力が欲しいのです。」

「なるほどな、我はこの世の闇を司る存在だ。自分の請け負うものの秩序を護る立場にあるという意味では、我とお前は似ている存在なのかもしれんな。」


 そう言うと、アスタロトさんはアルスの方を向いた。

 どうしたら良いか、判断は委ねるという事だろう。


「僕は、アスタロトさんさえ良ければ構いませんよ。」

「ふむ、では暇があれば稽古ぐらいつけてやろう。ただし、我の最優先はアルスだ。その上での条件となるがな。」

「なんと!宜しいのですか!!勿論構いませんとも!!」


 こうして、アスタロトさんはサミュエル団長へ稽古を付けると約束した。


 アルスはこれまではサポート系重視で学んできたけれど、そんなサミュエル団長の姿勢を見ていると、せっかく魔法学校で学んでいるのだから、卒業後村の皆を護れるぐらいにはちゃんと力を付けたいなと思った。

 あのサミュエル団長でも、こうして自らお願いをして力を付けようとしているんだ。

 それなのに、学生の僕が才能が無いことを言い訳にして現実から逃げてどうするんだ。


「アスタロトさん!その、僕にも魔術を教えて頂けないでしょうか!!」

「ん?アルスも魔術を極めたいのか?」

「はい!アスタロトさんが使い魔であれば不要なのかもしれませんが、それでも僕自身の手で自分の大切なものぐらい護れるようになりたいです!」

「ふむ、良い心がけだな。頼み事などせずともアルスは我の主だ。アルスが望むのならば、我はそれに応えよう。」

「あ、ありがとうございます!!」


 快く受け入れてくれた事に、アルスは礼を言い頭を下げた。

 すると、アスタロトさんは僕の頭にそっと手を置き撫で出した。


「ちょ、ア、アスタロトさん!?」

「なに、素直なアルスが可愛くての。」

「か、可愛いって!」

「構わんではないか。」


 そう言って、アスタロトさんは満足するまで僕の頭を撫で続けた。


「いやはや、これが本当にあの大悪魔だとは誰も思うまい。」


 なんてサミュエル団長は、僕らを見て笑っていた。

 他の魔術師団の人達からは、何故か良いなぁなんて声も聞こえてきたが……聞かなかった事にしよう。


「そ、そろそろ帰りますか。」

「そうだな。」


 こうして、長い長い一日が終わった。



 ―――と、さっきまで思っていた僕がいました。


 そうだった、これから帰るのはアルスの部屋だが、今後アスタロトさんもアルスの部屋で一緒に住む事になっているのだった。


 むしろ、これから先が1番のピンチであった事を思い出したアルスは、急に胸がドキドキして鳴り止まなくなっていた。

次回、アルスvsアスタロト@1つ屋根の下!

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