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使い魔の真実

 アサシンオーガの里へやってきたアルス達は、里の見物に出掛ける事にした。


 ミスズの父親であるジンの話では、かつての戦いによりこの地に逃げ延びて来たのだと言われたが、今ではとてもそうは見えなかった。


 石畳でしっかりと舗装された道、木造で細部まで装飾された家々、そして緑に溢れたとてもキレイな街並みなのである。


 これも全て、この地域一帯を管理しているサイリスという人物のおかげだとジンは言っていた。

 サイリスの庇護下にあるからこそ、これまで安全に生活できているのだと。


「しかし、まさかマークの使い魔であるミスズの里まで本当に馬車で来れてしまうとはな。」

「えぇ、俺も驚きました。使い魔ってのは、もっとこう遠く離れた別世界の存在が現れているもんだとばかり思ってた。」


 街を歩きながら、スヴェン王子とマークがそんな事を話していた。

 確かに、使い魔の住む場所へ、普通に陸地続きで来れてしまったというのは、アルスからしても想像とは違っていた。

 マークの言うとおり、使い魔とはアスタロトさんと同様に別の世界から呼び寄せられるものだとばかり思っていたのだ。


「そういえば、この間のクラス対抗戦で使い魔を失っていたんだったな。そろそろ、次の使い魔を召喚しなくてはならないな。」


 使い魔で連想したのだろう、スヴェン王子が思い出したようにそんな事を呟いた。


 使い魔も同じ生物だ。

 戦いの中で命が失われれば、それは人と同じで二度と召喚に応じる事は無くなる。

 何か魔力的な作用で、敗れても再び召喚可能なんていうご都合的な事は起こらない。

 だから、使い魔を失った魔術師はまた新たな使い魔を召喚しなくてはならなくなるのだ。


「そもそも、どういう仕組みで使い魔が我々の前に現れるのかすらもよく分からないのだがね。そういえば、アスタロトさんが以前、この魔術はクリス・クリストフが生み出したものとおっしゃってましたよね?」

「あぁ、それはクリスが作った魔術だ。そういえば、その魔術の矛先はこのあたりに向けておったな。」


 スヴェン王子の何気ない質問に、アスタロトさんはとんでもない情報をさらりと答えた。


 その衝撃で、各々雑談しつつ街並みを見物していた全員の足が止まった。

 召喚された側のミスズまでも、同様に驚きを隠せない様子で固まっていた。


「ん?なんだ?全員知らなかったのか。その魔術は、この地域一帯にいる己と近しいレベルにある魔物や魔族とリンクするようになっている。そして、互いの心を通わす魔術が込められているから、呼ばれた側は本能的に呼ばれた意味を理解するようになっている。」

「あ、そういえばそうだ。私もいきなり目の前に魔法陣が現れたんだけど、それが何故かマークによるものだってすぐ分かったんだ。だから私は、悩んだけど飛び込んだんだ。」


 アスタロトさんの説明に、ミスズが思い出したように語った。

 なんだか分からないけど、それがマークによるもので、またどういう目的でその魔法陣が現れたのか理解出来たのだと。


「ここ奈落には、この世界に存在する様々な存在で溢れているからな。それをクリスは利用した。」


 奈落と呼ばれるこの国には、ゴエティア全土から様々な種族が集まっているからこそ、使い魔となるバリエーションも豊富という事だろう。

 確かに、アサシンオーガやドラゴン、リッチにグリフォンと、これまで見た使い魔だけでも様々な生物が存在する。


「そうだった、マーレー。お前も使い魔を失ったままであろう?」

「?……はい。」


 思い出したようにアスタロトさんがマーレーに話しかけると、マーレーはアスタロトさんを見上げながら小首をかしげ、静かに頷いた。


 マーレーはあれ以降、ずっとアスタロトさんにベッタリだ。

 今もアスタロトさんの隣にピッタリとくっつき、なんとあのアスタロトさんと手を繋ぎながら歩いているのだ。

 しかし、そんな変わり果てたマーレー以上に、それを気にする事無く受け入れているアスタロトさんも正直意外だった。


「カーバンクルはある意味不死身の存在だ。この森のどこかで再び生まれ変わっているはずだぞ。」


 またしても、アスタロトさんからとんでもない情報が飛び出した。

 あの時、アスタロトさんにより伐たれたカーバンクルが、この地に甦っていると言うのだ。


 それを聞いたマーレーは、目を見開き、そして今まで見たこともないような喜びの表情を浮かべていた。


「またお前の使い魔として現れるかは分からん。だが、試してみる価値はあるだろう。」

「私の使い魔じゃなくてもいいんです!あの子が、あの子が生きてるならそれだけで私は嬉しいんです!だって、あの子をあんな風にしたのは私だから……。」

「落ち込むでない。あれはセレスによるものだ。お前は悪くない。」


 落ち込むマーレーの頭を、アスタロトさんは優しく撫でた。

 それが嬉しかったのか、はたまたカーバンクルの無事を知れて嬉しかったのか、マーレーはまた幸せそうな表情を浮かべながら撫でられていた。


 これはもう、周りから見たら完全に親子のようであった。


 そうして、そんな会話をしながらもゲンブの里の見学を終えると、日が落ちてきたため再びミスズの実家へとお邪魔させて貰うこととなった。


 皆で部屋へ上がろうとした時、アスタロトさんがそっと輪から離れていくのに気付いたアルスは後を追って声をかけた。


「アスタロトさん?どうかしましたか?」

「あぁ、アルスか。ちょっと用事を思い出したのでな。すぐに戻るから、お前達はゆっくりしていてくれ。」


 そう言うと、アスタロトさんはその場から消え去ってしまった。


 何事だろうと少し心配にはなったが、すぐに戻るというので一先ずはアスタロトさんの言葉を信じる事にした。


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