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権限者

 ソリンの緊急召集により、奈落エフの中心にある王城の一室に、ガルド、そしてこの国に散らばる権限者達が集められた。


 話題は勿論、この間の大魔王の時と同じく大悪魔についてだろう。


 ガルドは、正直たかが悪魔1人の事で、わざわざ権限者どもを集める程の事ではないと思っているのだが、これまで共にガルドの右腕を務めてくれたソリンの言う事なので一先ずは黙って会議へと参加する事にした。


 権限者は全部で5人いるが、召集に応じたのはそのうちの3人だけであった。

 だが、ガルドからしたら3人集まっただけでも正直意外だった。


 権限者とは、ガルドには劣るものの、それでも他の魔王達にも匹敵する程の力を有した化物揃いなのだが、そのせいもあってか好き勝手に行動する者ばかりで統制が全く取れてはいないのだ。


 正直、またいつガルドに歯向かってくるかも分からないような連中なのだが、その時はまた力でねじ伏せれば良いと考えている。

 ガルドはそんな事を考えながら、1番最後に席に腰を掛けるとソリンに会議を開始するように目線で促した。


「それでは、緊急会議を始めさせて頂きます。議題は既に皆ご存知でしょう、最近またこの地に現れたという大悪魔についてです。」


 ソリンが今回の会議を開いた理由を説明する。

 どうやら、例の大悪魔がこの国へとやってきているらしい。

 そして、監視をさせていたソドムによると、その力は桁が違っていたと。


「話は分かった。大魔王もソドムも、その大悪魔とやらを目にした者は皆口を揃えてあれとは関わるなと言うのだな。で?正直に言って構わないが、その大悪魔とやらは俺より強いのか?」

「あぁ、ガルドの旦那でもあれには敵わねぇよ。というか、この世界にあれとまともに戦える存在なんて居やしねぇだろうよ。」

「あらソドム、あんたそれでも権限者なの?たかが悪魔一匹相手に情けないこと。」


 大悪魔を恐れるソドムに対して、鼻で笑いながら横やりを入れたのは、同じ権限者であるマリーだった。


 魔女マリー。

 この奈落エフにおいて、魔術でマリーの右に出る者はいないと言われている。

 単純に魔術の力量だけで言えば、ガルドの右腕であるソリンをも上回る程、マリーの魔力はガルドから見ても目を見張るものがある。


 マリーは、ガルドが魔王となる遥か昔からこの地に住まう魔女なのだが、元々は黄泉の国ミレディアに住んでいたらしい。

 しかし、そこであのサリエラとトラブルを起こし、以降ここ奈落へと移り住んできたのだという。


 マリーは魔女と言われているが、その正体はエルダーリッチだ。

 禁術により不老不死の身体を手に入れたマリーは、長い歳月を費やし己の魔術を磨き続けた結果、その圧倒的魔力を手に入れたという。


 だが、そんなマリーであったがエフ統一の際ガルドとの一騎討ちに敗れ、今はこうして権限者の1人としてこの国の政へと参加しているのだった。


「おいマリー、絡むんじゃねぇよ。あの大悪魔相手だったら、お前の魔術なんか鼻くそみてーなもんなんだよ。」

「鼻くそ、ですって?あんた、死にたいわけ?」


 ソドムの一言に、一触即発の空気になるマリー。

 だが、そんなマリーを気にも止めずソドムは続ける。


「あのな、お前はあれを見てないからそんな悠長な事言ってられんだよ。あんな化物と対立するなんて、俺は死んでもゴメンだ。というか、確実に死ぬ。」


 そんな挑発にも乗らず真顔で忠告をするソドムに対して、マリーは納得はしていないが黙って話を聞く事にした。


 マリーは、過去にソドムと何度か衝突した事があるため、ソドムの実力をよく知っているのだ。


 ソドムはマリーから見てもかなり強い。

 そんなソドムがこれだけ言うのであれば、煽りではなく本当にマリー以上の魔力を有しているのかもしれない。

 そう思い、マリーはとりあえず話だけは聞く事にした。


「ふん、下らぬ。そんな悪魔一匹、俺の手で叩き潰してやろう。」


 しかし、そんなソドムの話を聞いても尚、ガルドは信じなかった。

 というか、信じる信じないの問題ではなく、仮に本当にそれだけの実力を有するというのなら、尚更ガルドとしてはその力を試さずには居られなかった。


 結局信じれるのは、己の力のみ。

 ソドムはガルドでは大悪魔には敵わないと言うが、ガルドはまだソドムの前で全力を見せた事などない為、どうでも良かった。


 ガルドは、かつてのエフの魔王を越える為だけに磨き上げたこの力を、初めて試せる相手が現れた事に喜びすら覚える。


 あの大魔王が逃げ出す程の大悪魔が、自分の国へとノコノコとやって来たというのだ。


 易々と帰すわけにはいかない。


「アサシンオーガの里へと向かっているとのことなので、そちらは私の管轄となります。ですので、私の管轄内での争い事は止めて頂きたい。」


 一通り話を聞いていたサイリスが、ガルドの考えを察したかのように静かに意見した。


 ガルドにとって、権限者の中で1番油断ならないのがこのサイリスだ。

 サイリスは、ここ奈落エフの南部一帯を統治する権限者の一人だ。


 ガルドにとって、エフ統一以降唯一戦っていないのがこのサイリスだ。

 当時は、ガルドとしても余裕があったわけではなく不要な対立は避けたかったため、サイリスの降伏を素直に受け入れた。

 しかし、ガルドから見て権限者の中で1番強いのはこのサイリスで間違いない。

 だから、そんなサイリスが実際どれ程の力を持ち、そして一体何を考えているのかが分からないという不気味さが常にあるのだ。


「であれば、サイリス。お前の力でその大悪魔とやらを処分してくれるのか?」

「武力での対立だけが全てではないと思います。私は私のやり方で、対処させて頂きます。」


 ガルドのちょっとした挑発も、簡単にかわされてしまう。

 そう、いつもサイリスは武力での解決を好まないのだ。

 まさに、ガルドと真逆とも言える価値観を持っているのが、このサイリスという男だ。


「ガルド、私もあの大悪魔を下手に刺激する事は反対です。まずは様子を見て、この国へ来た理由から確認すべきでしょう。そのため、権限者に動かれては困るため召集をかけたのですが、あの二人には困ったものです。」


 二人というのは、今この場にいない残りの権限者の事だろう。

 確かに、今ここにいる権限者と違い、あの二人は特に自由すぎるのだ。

 だが、もしあいつらが大悪魔に手を出したのなら、それはガルドにとっては都合が良かった。

 何故なら、それにより大魔王やソドムの言っている事が真実なのか否か計る事が出来るからだ。


 仮に、もし仮にその力が本当だったとしたなら……やはり、尚更戦ってみたい。


 大魔王すら逃げ出す悪魔を己の手で倒す事が出来たのならば、それ即ちここゴエティアでの最強を手に入れたに等しいのだから。

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