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ゲンブ

 奈落エフの外れに、ひっそりと1つの集落が存在する。

 そこには、現魔王であるガルド達によりかつての里を滅ぼされたアサシンオーガ達が移り住んでいる。

 数は当時の3分の1程まで減り、当時の戦いから長い年月は経っているものの、未だにその傷は癒えきってはいなかった。


 だが、本来であればこうして改めて新しい集落を構える事自体あり得ないことだった。


 アサシンオーガ以外にも、サイクロプスやヴァンパイアなど、同じく現魔王によりかつての里を滅ぼされた魔族、魔物がそれぞれ集落を構える事が出来ているのだ。


 ここ、奈落と呼ばれるゴエティアの中でも混沌とした国において、何故そんな事が可能になっているかと言えば理由は1つ。


 この地域一帯を縄張りとする、圧倒的な力を有する権限者による後ろ楯があったからである。


 アルブール王国に一番近い、ここ奈落エフの南部一帯を統べる者。

 その名を、サイリスという。


 サイリスは現権限者の1人であり、権限者の中でも一番謎に包まれ、また唯一現魔王に敗れてはいない1人である。


 サイリスは、圧倒的な力を持ちながらも基本的に争い事を好まない性格をしており、当時ガルドがエフの統一に動いた際、サイリスはそれに抗う事はせず南部一帯はガルドに降伏する選択をしたのである。


 当然、南部にはガルドに支配される事に反発した勢力も存在したのだが、「魔王の有無など我々には関係ない。皆の安全こそ守られるべき。」というサイリスの信念により、唯一エフにおいて血を一滴も流す事なく戦乱の時代をやり過ごしたのである。


 そして、サイリスの行動により唯一戦乱後荒れる事なく守られた南部の存在を知り、戦いの中で半壊状態となったアサシンオーガやサイクロプスなど南部へやってきた部族を受け入れたのもまた、サイリスであった。


 南部には魔族が少なく、広大な自然が広がる地域であったため、資源の豊富さ、また森林に隠れて生活する事が出来る環境の良さが幸いし、今こうして壊滅する事なく沢山の部族が生活を維持できているのであった。


 そのため、この地域に移り住んできた部族は皆、サイリスには感謝してもしきれない念を抱いている。


 それは、ここ南部に住む民全てにとって、神にも近しい存在として崇められる程に。




 ――――――――


 サイクロプス達に案内され、夜が明け昼下りとなった頃、アルス達はミスズの故郷であるアサシンオーガの集落ゲンブへと無事到着した。

 ゲンブは、集落と言われてはいるが、建物は木造建築でしっかりと建築されており、アルブールとは全く異なる様式だが、それでもしっかりと整備された綺麗な街であった。


 人の行き交いも多く活気に溢れており、正直アルスの故郷と比べてもこちらの方が発展している程であった。


「ミスズちゃんじゃねぇか!おう、この果物持ってってくれ!」

「わー!ミスズお姉ちゃんだぁ!」


 帰って来たミスズに気付き、八百屋のおじさんから道行く主婦、そして子供達が次々にミスズの元へと集まってきた。

 ミスズは、ここゲンブの長の娘として広く愛されている事がアルス達から見てもすぐに分かった。


 こうして、すれ違う里の人々から次々に声をかけられながら、アルス達はミスズの実家へと連れてこられた。


 そこは、他の家よりも遥かに大きく、周囲を積まれた石に囲われたとても立派なお屋敷であった。

 最早家というよりも、城と表現した方が適切な程、初めて見る様式でありながらもそれは見事な建築であった。


 ミスズに案内されて部屋の中へ入ると、そこには1人のアサシンオーガの男が目を閉じて座っていた。


 その男は、ここに来るまでに見てきたアサシンオーガとはまるで違い、額からは立派な角を生やし、身体も一回り大きく、一目見ただけで目の前の人物は他のアサシンオーガとは比べ物にならない程の強者である事が分かった。


 そして、ミスズ達が来たのに気が付くと、アサシンオーガはゆっくりと目を開け、そして奥の扉から1人の女性を呼び隣に座らせた。


「ミスズか、帰って来たのだな。」

「はい、ただいまです。父さん、母さん。」


 二人は、ミスズの父と母であった。

 つまりは、ここアサシンオーガの里ゲンブの長こそが、今目の前に座るこの男性という事になる。


「あ、紹介するね!前にも言ったけど、私が人間の国に行って初めて出来た友達の皆です!」


 そうだったと、ミスズは慌ててアルス達を父と母へ紹介した。


「そうか、娘が世話になっておる。私は、そこのミスズの父であり、ここゲンブで長を務めるジンという。そしてこちらが妻のミサトだ。」

「初めまして、私はアルブール王国の第一王子、スヴェン・アルブールと申します。今回は、友人であるミスズさんのご厚意により、こうして友人一同招待して頂きました。」

「アルブール王国の王子であるか、これは驚いた。まさか私の娘が、そんな高貴な方と友人関係を結んでいるとはな。改めて、歓迎させて頂こう。ようこそ、ゲンブの里へ。」

「ありがとうございます。これをキッカケに、アルブールとゲンブ、皆にとって良い交流が生まれる事を願います。」


 こうして、立ち上がったジンとスヴェン王子は互いに握手を交わした。

 種族は違えど、未来を見て、互いを受け入れるという前向きな意思を込めて。


 人と魔族の代表者による交流。

 これは、1000年前の人と魔族の対立以降、実は初めての出来事なのであった。

ゲンブについては、江戸時代の街並みに近いものになります。

そのため、ミスズの実家はお城です。

実はこの子、お姫様だったんですね。

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