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ソリンの判断

「結論から言おう、ありゃダメだ。」


 奈落の中心にそびえ立つ城にある一室で、1人の男がそう告げる。


「ダメとは、どういう意味ですか?」


 そう問いかけたのは、奈落の実質No.2の実力者であるソリンであった。


「あんたに言われた通り、例の大悪魔をこっそり監視させて貰ったが、ありゃ化け物だ。あんな化け物と戦うなんて、俺はごめんだぜ……。」


 男は、思い出したのかその身をブルッと震わせながらそう言った。


 蟲使い ソドム。

 それが、この男の名だ。

 ここ奈落においても、圧倒的力を有する事で広く恐れられている実力者の1人だ。


 以前、ガルドとソリンが共にここ奈落の統一のため戦いを繰り広げる中で、ソリンと一対一で戦かった相手でもある。


 正直、あの時の戦いはソリンからしてもかなりギリギリの戦いであった。

 ソドムの使役する無数の虫達による波状攻撃を前に、ソリンはギリギリの所まで追い込まれてしまったのだ。

 何万もの空飛ぶ吸血羽虫から巨大カマキリまで、様々な虫が次から次へと襲いかかってくるのだ。


 ただ、ソリンは物理攻撃よりも魔術による範囲攻撃を得意とするため、魔術により虫達を一撃で屠る事が出来たため、なんとかソドムに勝利する事が出来たのだ。


 もしも、ソドムと対面したのがソリンではなくガルドだったら、流石に負ける事は無いとは思うが、それでも相当不利な戦いを強いられた事だろう。


 そしてあの戦い以降、ソリンとソドムは互いを認め合い、今ではこうしてソリンの友人として色々と協力してくれる関係となっているのだ。


 だが、そんな実力者であるソドムがこれだけはっきりと告げるとは、正直ソリンも予想はしていなかった。


「なるほど、貴方から見てもそうですか。」

「あぁ、あれだけはダメだ。俺やお前、そしてガルド、というか大魔王が束になってもありゃどうにもならないな。」

「それほど……ですか。」

「もしもガルドがあの大悪魔と対立するって言うなら、奈落だけじゃねぇ、ゴエティア全土が不味い事になる。」

「話は分かりました。どうやら、我々も考え方を改める必要があるようですね。」

「あぁ、そして最悪な知らせがもう1つある。大悪魔とその仲間達が、ここ奈落へと向かってきていやがる。」


 そのもう1つの報告を聞いて、それまで冷静であったソリンは初めて狼狽えた。

 まさか、大悪魔の方からこちらへ向かってくるとは、全くの予想外であったからだ。


「おい、言っとくが、俺の監視はお前の知っている通り虫の目を介して行っているから、流石にバレるわけねぇし俺のせいじゃねぇぞ。あいつらの中に、アサシンオーガの娘が混ざってやがったんだ。」


 狼狽えるソリンに、慌てて自分のせいじゃないと説明するソドム。

 確かに、ソドムのその監視能力の事はソリンもよく分かっている。

 だからこそ、今回の監視をソドムにお願いしたのだから。


 それよりも、状況はかなり不味い事になった。

 アサシンオーガと言えば、ここ奈落を統べる戦いの中で、ガルドにより半壊まで追い込まれた一族の1つなのだ。

 そのため、今ではアサシンオーガ達は中心部にあった里を離れ、奈落の端でひっそりと集落を構えている事を知っている。

 当然、彼らが我々に対してかなりの怨恨を抱えている事は知っているが、それでも我々の敵では無かったためこれまで野放しにしてきたのだ。


 だが、そのアサシンオーガの1人が大悪魔側にいるのだとしたら、この件を放置しておく訳にはいかなくなった。


「至急、奈落全土の権限者を集めます。早急にこの件について対処すべきでしょうからね。」


 ソリンは、この国の権限者を集める事にした。

 ここ奈落には、魔王にも匹敵すると言われる圧倒的実力を持つ者達が何人かおり、彼らにはその実力を評価し、ある程度の権限を与えているのだ。

 そんな彼らの事を、ここ奈落では権限者と呼んでいる。

 何を隠そう、このソドムもまた、その権限者の1人なのだ。


 それと同格なのが、全部で5人。

 ここ奈落が混沌と言われている理由が、彼らの存在に他ならないのだ。


 そんな彼らを集結させるのは、ガルドがこの国を統一して以降初の事になる。

 正直、そんな彼らを1ヶ所に集める事で何が起きるかなんて事はソリンでも予想がつかない。


 だが、猶予はない。

 早急に大悪魔に対処をする必要があるため、ソリンはすぐに行動を開始したのであった。

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