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大天使 vs 大悪魔

 ―――アスタロト様、至急報告がございます。


 ―――あぁ、分かっている。


 ジークから、アスタロトへ向けて思念が届いた。

 アスタロトは、その内容は聞くまでもなく分かっている。


 ―――危険です。私もすぐにそちらへ向かいます。


 ―――いや、その必要はない。あれの相手はお前でも難しい。


 ―――……畏まりました。ご無事で。


 そして、ジークとの思念での会話を終えたアスタロトは、その場にいる人間達に向けてそれぞれプロテクションを展開した。


 展開されたそのプロテクションは、以前マーレーが使ったそれとは最早次元が違った。


 絶対障壁。

 その言葉が一番ピッタリくる程、そのプロテクションは触れる事すら許されないレベルで強力なものである事が一目で分かった。


 しかし、何故いきなりプロテクションを展開されたのか、そこにいる全員が理解出来ないでいた。


「その中から決して出てくるのではないぞ。」


 そう言うと、戸惑うアルス達を置いてアスタロトはゆっくりと前へと歩き出す。


「そこに居るのだろう。」

「あら?分かってたの?」


 アスタロトが呼び掛けると、突如上空に1人の天使が現れた。


 セレスだった。


 悪魔を、そしてマーレーをも洗脳しアスタロトへ攻撃を仕掛けてきた張本人である。


「此度の件、どういうつもりか説明せよ。」

「そんなに怖い顔しないでよ。これも貴女のためなんだから。」

「我のためだと?」

「えぇ、そうよ。貴女はこんな所に居るべきじゃないのよ。貴女は、私の隣に居てくれればいいの。だから、貴女を一度拘束するためにそこの子に力を与えてみたのだけど……やっぱりダメね、思った以上に弱すぎたわ。」

「貴様も相変わらずだな、話は分かった。」


 すると突然、昼間であったはずの景色が一瞬にして夜のような暗闇に包まれた。


「消えろ。」


 そして、アスタロトは静かに一言そう呟くのと同時に、突如セレスの周りに無数の黒い蔦のような物が現れた。


「……これは、ちょっとやりすぎたかしら。あぁでも、怒る貴女も素敵よ。」


 不味い状況になった事を即座に理解したセレスは、咄嗟にプロテクションを展開した。

 しかし、そのプロテクションごと両腕、そして両足を拘束されたセレスの腹に、渦を巻いた黒い蔦が突き刺さった。

 人間であれば、この時点で即死であっただろう。

 しかし、セレスはそれを受けても変わらず、本気モードになっているアスタロトに見とれているのであった。


 これが、人と天使の違いである。

 天使とは、その身に受ける外傷で命が尽きる事などない。

 そのため、大きな穴の空いたセレスのお腹であったが、光輝きながら瞬く間に自動で修復されていくのであった。


 だが、そんな事はアスタロトも当然承知の上である。

 自動で修復されていくセレスに向けて、アスタロトは攻撃を止める事なく何度も黒い蔦を突き刺し続けた。


 穴が塞がっても、またすぐに新たな蔦が休みなく突き刺さるのだ。


 痛覚はあるため、流石にこれには怯んだセレスは、己を拘束する蔦を自力で剥がすと、高速で移動し迫りくる蔦から逃げようとする。

 しかし、どこへ行っても直ぐに背後から現れる黒い蔦により再び拘束されると、その身にまた風穴を空けられてしまうのであった。


「流石にちょっと不味いわね。アスタロト、また会いましょう。」


 口から血を流しながらも、セレスはアスタロトの方を振り返りながらニコリと微笑んだ。

 そして次の瞬間、セレスの全身が光輝き出すと、そのままその身を光の粒子へと姿を変え、そしてその場から弾けて消えてしまったのである。


「逃げたか。」


 それを確認したアスタロトは、チッと舌打ちをすると共に、その恐ろしい攻撃を解いた。

 すると、暗闇に包まれていた景色は元の昼間の景色へと変わっていった。


 やはり、先程の暗闇もまた、アスタロトによる仕業であったという事だろう。


 プロテクションの向こうで、ただ状況を見守る事しか出来ないでいたアルス達は、ものの5分程度で終わってしまった出来事であったが、あまりの衝撃にその場に固まり動く事など出来ないでいた。


 圧倒的なアスタロトの攻撃の前では、大天使であるセレスでさえも逃げ出す事しか出来なかったのだ。

 あまりにも一方的に行われたあの攻撃は、最早魔術の段位がどうこうというレベルではなかった。


 まさに今のは、必中必殺と言える大技だったのだ。


 こうして、再び現れた大天使セレスであったが、アスタロトにより返り討ちにあったのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] セレスの上司が誰か気になる。
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