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マーレーの過去

 セレスの洗脳が解け、目を覚ましたマーレーはしばらく自分の置かれている状況が理解出来ないでいたが、段々と先ほどの記憶が断片的ではあるが蘇ってきた。

 自分が天使に洗脳され、目の前のアスタロトに向かって戦いを挑み、そして無惨にもやられてしまったという事を。


 そして、大事な事を思い出した。

 それは、自分の使い魔であるカーバンクルの命が失われてしまったという現実だ。


 これまで共に歩んできたカーバンクルであるが、その姿は禍々しい姿へと変わってしまい、そして目の前のアスタロトに無惨にもやられてしまったのだ。


 しかし、その事でアスタロトに怒りを向けるのは違う事ぐらい分かっている。

 全ては、天使に洗脳され、そして大事なカーバンクルをあのような姿に変えてしまった自分が悪いのだから。


「マーレー?平気?」


 起き上がろうとするマーレーに、クレアが心配そうに声をかけてくれた。


 クレアは、マーレーにとってたった一人と言ってもいい大事な友人だ。

 そんなクレアの存在が、今のマーレーにはとても温かく、その優しさに自然と目から涙が流れ落ちた。


「私は……。」


 何か話そうと思ったが、言葉が続かなかった。

 色々な思いが駆け巡り、言葉にならなかったのだ。


 先程のやり取りで、自分はこの時代の人間ではない事はクレアも皆ももう知っている事だろう。


 自分が、グルノーブルの生き残りだという事も。


 今から1000年前、魔族による侵略により、今まさに魔族が自分達の住む城の前まで迫ってきたその時、マーレーは父と母によりこの時代へと魔術で飛ばされてきたのだ。


 そのあとの事は、歴史として学んだ。

 自分の愛した国、グルノーブル共和国は1000年前に魔族により滅ぼされてしまったという事を。


 それはつまり、グルノーブル共和国の王であった父、そして母もあのあと殺されてしまったという事なのだろう。


 その事を考える度、最後に見た父と母の顔を思い出す。

 そして、もう二度と二人に会えないという現実が、マーレーに重くのし掛かるのであった。


 グルノーブル共和国の敗北には、ディザスター帝国が絡んでいた事をこの時代に来てから知った。

 確かに、あの時帝国側が守護をしていたはずの一角から、不自然に魔族達が共和国へと一斉に流れ込んできたのだ。


 それにより、共和国は内部から切り崩されて、そのあとはあっという間に国中が魔族により蹂躙されてしまったのだ。


 その事を、今の時代の人間に言っても仕方のない事は分かっている。

 しかしそれでも、マーレーにとって父と母、そして国を奪った帝国、そして魔族という存在だけは許せなかった。



 そして今、自分がこの時代へと飛ばされた事は偶然ではないと思っている。

 それは、魔族や帝国の人間を蹂躙したとされる大悪魔が、再びこの地に現れた時代だからだ。

 アルスがあの大悪魔を召喚した時は、胸が飛び出そうになる程驚いたのを覚えている。

 自分にとって、仇をとってくれた存在である大悪魔が、目の前に現れたのだから。


 それにあの魔術は、代々国に受け継がれてきた秘術の一つで、かつての天使様が我々人間に与えて下さったものだと母から教わった事がある。


 だからこそ、この時代、自分が天使様から与えられた役目がきっとあるはずだと信じて今まで生きてきたのだ。

 正直それも、先程まで天使様に洗脳され、憎き魔族と帝国の人間を滅ぼしてくれたアスタロト相手に戦いを挑んでいたというのだから、それもよく分からなくなってきたのだが。


「お前は、グルノーブルの娘だったのだな。今この時代におるという事は、成る程な……すまない、お前の父と母、そして国を守ってやることが出来なかった。」


 頭がグルグルになり、ただクレアの腕の中で泣くことしか出来ないでいたマーレーに向けて、アスタロトが謝罪をしてきた。


 あの時、国や両親を守れなくてすまないと。


「……父と母を、知っているの?」

「あぁ、二人とも出来た人間であった。あの二人だからこそ、グルノーブルがあそこまで栄える事が出来たのだろう。」


 まさかこの時代に、自分の父と母を知る者がいるとは思わなかった。

 それが、マーレーには嬉しくて嬉しくて仕方がなく、また涙が溢れ出してきた。


 これまでずっと胸に抱えてきた孤独が、少しだけだが救われたような気がしたのだ。


 自分の自慢の父と母を知ってくれている人がいてくれる。

 それだけで、堪らなく嬉しかったのだ。


「あの時のチビが、まさかお前だったとはな。……これも、クリスの見た未来の一つなのだろうな。」


 そう言うと、アスタロトは優しい表情を浮かべながら、マーレーの頭をそっと撫でてくれた。


 その手には、まるで亡き母親に撫でられた時のような暖かさがあった。

更新が大分遅れてしまい、申し訳ありませんでした。

活動報告に書いたように、全話文章の修正作業に時間を取られてました。

(物語の内容には変更は入れてません。単純に、下手くそな記述の修正を行いました。)


修正作業が一先ず完了したので、これからまた更新していきたいと思いますので、改めまして宜しくお願い致します。

良ければ、評価やブクマ等頂ければ幸いです。

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