対アスタロト②
「お前達か、良かろう。修行の成果を見せてみよ。」
そう言うと、アスタロトさんはニヤリと笑みを浮かべながらスヴェン王子とマークの二人に向かってかかってこいと手招きをした。
そして、これが開始の合図となった。
まず、マークは得意の炎の聖霊をその身に宿らせると、クラス対抗戦の時とは比べ物にならない速度で一気にアスタロトさんとの距離を詰めた。
そして、マークの動きを瞬時に判断したスヴェン王子は、同時に素早く魔術を放った。
スヴェン王子が放ったのは、アスタロトさんへの攻撃魔術ではなく、マークへの身体強化魔術であった。
「第9位階魔術 鉄の肉体!」
スヴェン王子の唱えた魔術により、超速度で突進するマークくんの全身が鋼鉄のように硬化された。
これにより、マークくんの身体能力は更に跳ね上がり移動速度を増した。
そして、一気にアスタロトさんの目の前まで迫ると、マークは炎の聖霊と鉄の肉体により数段と攻撃威力を増した一撃を、勢いそのままにアスタロトさん目掛けて一気に放った。
「食らえ!!第9位階魔術 紅蓮の剣!!」
二重に身体強化された自身の身体能力であっても、未だ力足らずであろうと判断したマークは、更に自身の持つ最高位魔術を乗せてアスタロトさんへ渾身の一撃を繰り出したのだ。
紅蓮の剣により、マークくんの握る大剣からは勢いよく炎の渦が飛び出した。
そして、剣そのものもマグマのように真っ赤に膨れ上がり、溶岩と化した大剣を勢いそのままに一気にアスタロトさん目掛けて振り落とした。
しかし、この一撃を前にしてもアスタロトさんは、相変わらずニヤリと笑みを浮かべたまま避ける素振りも見せずその一撃をその身に受けたのだった。
その反応を見て、マークは表情を歪めた。
持てる力全てを込めたこの一撃に、スヴェン王子の身体強化魔術を合わせたとしても、未だ傷をつける事すら出来ないという事を悟ったためだ。
それは、スヴェン王子も同じであった。
スヴェン王子とマーク、言わば戦闘においては学年のツートップとも言える二人が力を合わせても、アスタロトさんからしたら避ける必要すらない一撃でしかなかったという事だから。
そうしてマークの放った一撃は、そのまま確実にアスタロトさんに直撃した。
紅蓮の炎と化した大剣が、アスタロトさんの首元に激しく叩きつけると同時に、その場には炎の大爆発が起きた。
爆発の勢いにより、アスタロトさんの周囲10メートル程の地面がその熱量で溶けてしまう程の激しい一撃だった。
そして、全身を紅蓮の炎に包まれたアスタロトさんであったが、平然と炎の中から片手を伸ばすと、そのままマークの大剣を握り、そして握力のみで大剣を砕いてしまった。
「腕を上げたな。」
全身を炎に包まれながらも、アスタロトさんは満足気にそうつぶやいた。
「……素手で紅蓮の剣を砕くとか、本当どんだけ化物なんだよ。。」
「ふむ、だが先程のお前の一撃だって、最早人間の成せる領域を越えていた。故に、ちゃんと我に届いたぞ。」
そう言うと、アスタロトさんを包む炎が徐々に薄れてくる。
そして、炎が完全に消え去った後には、驚くべき光景がそこにあった。
アスタロトさんの首元に、一筋の火傷のような痕がしっかりと残されていたのだ。
それは、先程のマークの一撃による傷で間違いなかった。
あの一撃により、確かにアスタロトさんに傷を負わせたのだ。
正直、あれほどの一撃をもってしても、一筋の傷を負った程度でしかなかったのは可笑しな話ではあるが、それでもあのアスタロトさん相手に傷を負わせたのは凄い事だ。
その事実に周りも気が付き、そして訓練場の全員がどよめいた。
「我に傷を負わせた人間は、お前が初めてだ。誇るがよい。」
「へっ、あの一撃でもその傷1つかよ。本当何から何までふざけた強さだな。……それに、さっきのだってお前は簡単に避けれたんだろ?」
「そうだな、我とまともにやり合いたいのなら、あと少なくとも10倍は力を付ける事だな。ふむ、しかし傷を付けられたら終わりと言ったのだが、これでは少々味気がないな。そうだな、今度はレベルアップして我からも攻撃をさせて貰おう。その上で、再度この身に傷を付けてみるがよい。」
アスタロトさんに傷を負わせたら終わりと言うルールだったけど、アスタロトさんはマークの一撃を敢えてその身に受ける事でそれは達成されてしまったため、追加条件を提示してきた。
それは、今度はアスタロトさん側からも攻撃をする上で、再度アスタロトさんに傷を負わす事。
言われてみれば、これまでアスタロトさんはその場を一歩も動くことなく全ての攻撃をその身に受けていただけなのだ。
「不味い!避けろマーク!!」
すると、後方からスヴェン王子が慌ててマークへ声をかけたが、一足遅かった。
話は終わったと、今度はアスタロトさんからマークの腹目掛けてただのパンチを繰り出したのだ。
その結果、本当にただのパンチであったが、直撃したマークくんはそのまま反対側の壁まで一撃で吹き飛ばされてしまった。
マークはアスタロトさんの攻撃に気が付き、咄嗟に防御の姿勢はとっていた。
そして、その身には炎の聖霊と鉄の肉体による身体強化を施していたにも関わらず、アスタロトさんの一撃をまともに受けたマークは弾き飛ばされ壁に激突すると、そのまま起き上がる事が出来ずその場に蹲ってしまった。
「さぁ、ぼさっと立っていてはやられるぞ?」
呆気にとられるアルス達に向かって、ニヤリと笑みを浮かべたアスタロトさんの放ったその一言が、セカンドラウンド開始の合図となった。
新年、明けましておめでとうございます。
年始は案の定公私ともに忙しく、更新がまた遅れてしまい大変申し訳ありません。
引き続き執筆は続けさせて頂きますので、本年も宜しくお願い致します。
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魔王も逃げ出すアスタロトさん。
マークくんの身体能力+イフリート+アイアンボディー+インフェルノブレードでやっと傷を負いましたね。
アスタロトさんが傷を負うというラインが、この世界ではどういうレベルを意味するのかって話ですね。
それはまた、後程回収される予定です。
大事なのは、アスタロトライン!!




