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ゴエティアの魔王達

「それで、なんで我々が集められたのかさっさと説明して貰おうか。」


 サタンが席に着くと、苛立ちを隠せない様子の獣王セタスがすぐに質問を投げ掛けた。


 獣王セタス。

 大柄で鋼のような肉体を持つライオンの獣人である。

 新たな魔王の1人として、ゴエティアの内獣人達の住まう国エルドーを統治している。


 魔王の中でも1番の武道派で、とにかく好戦的なのが特徴である。

 それは、例え他の魔王や大魔王であるサタンに対しても変わりはない。


 エルドーでは、常に強い存在が魔王を務めるという慣わしがあり、セタスが魔王となって以降はずっとその座を守っている。


 そんな獣人族の歴史において、セタスは歴代最強の魔王としてその地位は最早揺るぎないものとなっていた。


「そうよ、私達だってやる事あるんだから早くしてちょうだいな。」


 頬杖をつきながら気だるそうにセタスに同調したのは、セタスと同じく最近魔王となった1人炎の女王メルディだ。


 炎の女王メルディ。

 赤く燃え盛るような長髪が特徴で、露出度の高い赤いドレスを着たサキュバスだ。


 魔王の1人として、サキュバスや吸血鬼達が住まう常闇の国ヤクリムを統治している。


 通常、サキュバスとはそれほど戦闘に特化した存在ではないのだが、このメルディはただのサキュバスではなかった。


 全身から炎が漂うようなその容姿のとおり、メルディの身体は炎の聖霊と同化しており、炎系統の高位の魔術を自在に扱うことが可能なのであった。


 そもそも、聖霊と同化するというのは非常に稀な事である。

 聖霊とその対象の存在の波長が合わなければ、基本的に聖霊と同化する事などあり得ないからだ。


 また、同化出来るのは成長段階である幼少の頃だけであり、その上で滅多に人前には現れない聖霊と出会い、そして同化まで成し遂げるなどというのは、魔族領全域をもってしても片手で足りるぐらいしか過去に事例がない程である。


 それだけ珍しい事であるのだが、その分得られる力も計り知れなかった。

 何故なら、聖霊と同化した存在は聖霊の力をそのまま扱う事が出来るため、非常に強力な魔術を無制限に扱う事が出来るからだ。


 ヤクリムでは、これまではヴァンパイアロードの中から最も力を持つ者が代々魔王を務めてきた。


 だが、そんな中成長したメルディは己の力を試すべく、ヴァンパイアロード相手に一方的に戦いを挑み次々に勝利を重ねていくと、気が付くともう誰もメルディに歯向かうヴァンパイアロードは居なくなっており、そのままサキュバスとして初の魔王まで登り詰めたのである。


 そのためメルディは、ヤクリム内ではサキュバス達には持て囃されているが、ヴァンパイア達からは疎まれている。


 それでも、メルディの持つ力はヤクリム内では圧倒的であり、そんなメルディに対して反発する者はもう誰も居なかった。


「黙れ小わっぱども、そう急かすでない。これよりサタンから説明があろう。」


 苛立つ二人に対して、氷のような視線を向けて制止をしたのが冥府の女王サリエラだ。


 冥府の女王サリエラ。

 透き通るような真っ白な肌をし、水色の髪を縦ロールに巻き黒いゴシックドレスを着た小柄な女性だ。


 サリエラは、ゴエティアの内アンデッド達が住まう黄泉の国ミレディアを統治している。


 魔族領ゴエティアとなるとより遥か昔から、サリエラは黄泉の国を統べる存在であった。


 そのため、サリエラは1000年前の大悪魔アスタロトとの戦いに居合わせた魔王の1人でもある。

 サリエラは、元々戦闘を好むタイプではなく、当時の戦闘においては進軍側ではなく魔族領に残り領地の守護統括に務めていた。


 だが、サリエラの目には、遠く離れた場所の光景も映し出す事が出来る力があり、当時の戦いをその目にしっかりと納めている。


 映し出した光景の先では、魔族達が次々と、しかも簡単に屠られて行く様を目の当たりにしたサリエラは、この世に生まれて以来初めて恐怖という感情を味わった。

 ゴエティアが誕生するより遥か昔から黄泉の国を護ってきたサリエラにとって、悠久とも言える時の中で積み重ねた経験や知識が、全く通用しないであろう未知の存在が現れている事に恐怖したのだ。


 だから、サリエラはサタンと同様に今回の議題には早急に対処すべきだと考えている。

 あれは、決して触れてはならない存在なのだと。


「では、早速だが本題に入られて貰おうか。」


 サリエラの促しを受け、サタンは大悪魔アスタロトが再びこの世界に現れた事を語り始めた。


 サタンの話を一通り聞くと、魔王達の反応は様々であった。


 セタスとメルディは、何を大袈裟なと言いたげな下卑た笑みを浮かべており、サリエラは瞳を閉じながらただ黙って聞いていた。


「サタン様がそれだけ警戒するほど、やはりその大悪魔アスタロトというのは危険な存在なのですね。」


 一通り話を聞き、最初にそう発言したのは竜王ドラゲルクだった。


 竜王ドラゲルク。

 全身を漆黒の鱗で覆った、エンシェントドラゴンである。

 その身は他のドラゴンに比べると小柄ではあるが、実力は竜族最強の力を持っている。


 ゴエティアの内、ドラゴンやリザードマン達が住まう国、竜国エルザードを統治する新たな魔王の1人だ。


 エルザードでは、代々エンシェントドラゴンが王を務めてきたため、先代の魔王に代わってドラゲルクが新たな魔王となった。


 ドラゲルクがまだ生まれて間もない頃、当時エルザードで王を務めていたドラゲルクの父ドラバルドは、かつての大悪魔との戦いの中でその命を落としているのだ。


 だから、ドラゲルクにとってその大悪魔というのは父の仇でもあった。

 だがドラゲルクは、恐らく今の自分より強かったであろう父を倒せる程の実力を持つのが大悪魔なのであれば、最大限の警戒をすべきだと考える。


 正直、エンシェントドラゴンである自身が戦いにおいて負けるなど、目の前にいるサタン様や一部の魔王相手以外考えられないのだが、事実として今の自分より強かったであろう父が倒されているのだから、その実力は疑いようがなかった。


「またあの悪夢が現れたのかと思うと、いやはや恐ろしいですなぁ。」


 やれやれとそう語ったのは、蝿の王ベルゼブブだった。


 蝿の王ベルゼブブ。

 大柄で筋肉質な体つきをしている、白髪をオールバックにまとめた初老の男だ。

 いつも丸縁の黒いサングラスをしているのが特徴だ。


 ベルゼブブは、魔王の1人としてゴエティア内の魔物達が住まう国、魔物の国カーネルを統治している。


 1000年前の戦いにおいて、ベルゼブブは魔王の側近としてサタンと共に軍を率いて戦いの最前線に立っていた。

 進軍は順調に進み、もう暫くすればこの世界は魔族による統治がされるだろうと思っていた矢先、大悪魔アスタロトにより自軍のほとんどを壊滅に追い込まれてしまったのだった。


 あれは、本当にあっという間の出来事であった。

 暴れまわる大悪魔を止めるべく、早急に自身の護衛を務めていた指折りの実力者である精鋭達を全て向かわせたが、それすらも瞬殺されてしまったのだ。


 それを目の当たりにしたベルゼブブは、驚愕すると共にこの場から今すぐ逃げ出さなければ、自分も同じように消されるのも時間の問題だという事を悟った。


 それからは、全力で逃げ続けた。

 幸い、ベルゼブブは羽を広げ空を高速で飛ぶことが出来たため、アスタロトが向かう先とは逆の方向に飛んで逃げる事が出来たので、なんとか命を落とさずに済んだのだった。


 だが、それも今思えば空を飛べる事などあの悪魔の前では関係無かったようにすら思う。

 だから、今こうしてベルゼブブが生きているのは、本当に単純に運が良かっただけなのだろう。


 当時、サタンに次ぐ実力者であったベルゼブブでもそう思える程、あの時の戦いはあまりにも一方的だったのだ。


「話は分かった。だが、我々は我々の判断で行動させて貰おう。」


 最後にそう語ったのは、新たな魔王の1人漆黒の王ガルドだ。


 漆黒の王ガルド。

 ゴエティアの中においても、種族など問わない混沌の一角である奈落エフを統治する魔王だ。


 奈落エフでは、エルドー同様に実力のある者が上に立つ事になっているが、エルドーと違いそのルールや慣わしなどはない。

 そのため、1000年前の大悪魔との戦いにおいて、当時エフの魔王であった者が大悪魔に敗れて消え去って以降、エフにおける魔王の座はずっと空席となっていた。


 だがしかし、近年になって突如としてエフの魔王として現れたのがこのガルドだった。

 ガルドは、全身を黒いフルメイルで覆った謎の多い男であり、その実力はサタンからしても未だに計り知れないものであった。


 それでも、あの混沌とした無法の奈落エフを統治したのだから、その時点で実力は保証されていると言えるだろう。


 だが、それでもだ。

 それでもあれだけは敵に回してはならないのだ。


「ガルドよ、これだけは忠告させて貰う。あの大悪魔だけは関わらない事だ。場合によっては、ゴエティアの安全すら脅かされないからな。」

「ふん、それが大魔王ともあろう方の発言とは思えないな。」

「妾もサタンに賛成だ。もし、貴様らがあれに関わろうと言うのであれば、その前に妾がその者を止めると忠告しておこう。」


 サタンの忠告に聞く耳を持たないガルドに対して、明確な殺意を込めたサリエラが重ねて忠告をした。

 ガルドだけでなく、もし貴様らがあの大悪魔へちょっかいを出そうと言うなら、その前に自分が貴様らを倒すと。


 それを受けた魔王達は、一瞬表情を変えた。

 サリエラから発せられる圧に、一瞬気圧されてしまったのだ。

 ゴエティアが誕生する以前より魔王を勤めているサリエラであるが、その実力は魔王達からしても未だ未知数であった。

 だがそれでもガルドは、無言のままそれを聞き流すと、もう話は終わったとばかりにそのまま会議室から出ていってしまった。

 それに続いて、セタス、メルディ、ドラゲルクも退室して行った事で、魔王会議は解散となった。


「やれやれ、あの若造は何をやらかすか分からんな。」

「そうだな、サリエラの忠告すらも無関係のようであったな。」

「ふん、妾をも侮るかあの若造。まぁよい、もしその時が来たら、国のため妾があやつを止めるだけだ。無知とは時に恐ろしい。」

「大悪魔の前に、わしからしたらサリエラも十分恐ろしいのだがね。ではサタン様、我々もこれで戻らせて頂くよ。」

「あぁ、わざわざご苦労であった。」


 こうして、魔王会議は解散となった。

 正直、新たな魔王達の抑止に繋がったかと言うと不安しか残らないが、引き続き大悪魔対策の準備を継続する必要があるだろう。


 大悪魔アスタロト。

 あの圧倒的な力が、ここゴエティアに向かう事だけは必ず避けなければならないと改めて誓ったサタンであった。

更新が遅れて申し訳ありません。

今週仕事が忙しく、また今回の話を書くのに時間を要しました。


引き続き執筆は必ず続けますので、良かったらブクマ等頂ければ幸いです。

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