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決戦後

 アスタロトさんが悪魔を屠り、そしてアルスくんが帝国の魔術師シュナイダーを討ち取った。


 スヴェンは、その場に居合わせたにも関わらず、事の全てをただそこに立って見守る事しかできないでいた。


 アスタロトさんの強さは、まさに圧倒的だった。


 教室に現れた悪魔なんて比じゃないと思える程の、凶悪な悪魔。

 そして、その悪魔が召喚した禍々しい悪魔がおよそ100体。


 目の前に、まさにこの世の終わりを告げるかのような悪魔の軍勢が現れたのだ。


 もはや、絶体絶命に思えた。


 だが、アスタロトさんは顔色1つ変えずにその全てを倒してしまったのだ。


 それも、まるで飛んでくる虫を払うように、いとも簡単にだ。


 化け物染みて強いのは理解していたつもりだった。

 だが、改めて認識を改めなければならない程、アルスの召喚したこの大悪魔の実力は圧倒的すぎたのだ。


 そして、それはアルスもだった。

 あの、帝国魔術師最強と言われるシュナイダーを、目の前で一撃で倒してしまったのだ。

 以前の帝国との戦いにおいて、サミュエル団長と互角に戦ったとされる、あの大魔術師を相手にだ。


 アスタロトさんとは比べ物にならないのは当然であるにしても、それでも今のアルスの実力は、恐らくサミュエル団長以上という事になる。

 それはつまり、人間界最強の魔術師と言ってもいい。


 流石に、アルスはこの短期間であまりにも強くなりすぎている。

 魔術をイメージで扱うと言っていたが、本当にそれだけでここまで強くなるなんて正直考えられなかった。


 だが、今はその事は置いておこう。

 それよりも、この場にいたにも関わらずスヴェンは何も出来なかった事が問題だ。

 恐らく、先程対峙したほとんどの相手に対して、スヴェンでは敵わなかっただろう。

 それはヤブンであっても同じで、彼の手に入れた悪魔の力の前では、スヴェンでは瞬殺されていたに違いなかった。


 学年主席などと言っても、今繰り広げられた戦闘の前では、スヴェンなどただの役立たずでしかなかったのだ。


 それが悔しかった。


「私達、何も出来なかったわね。」


 隣のクレアも同じ気持ちなのだろう。

 無事、悪魔達からこの学園、更にはこの国が護られたというのに、その表情には悔しさだけが滲み出ていた。


「何が私が護るよ。護られてるのは私の方じゃない。。」


 掌をぎゅっと握りしめ、クレアは小さくそう呟いた。





 ――――――


「そこのお前。」


 目の前で色々な事が繰り広げられ、ただ呆然と立ち尽くす事しかできないでいたヤブンであったが、先程の圧倒的すぎる強さを見せ付けたアスタロトに声をかけられハッとした。


 そして、ヤブンはその恐怖で体を大きく震わせた。

 手に入れた悪魔の力など、この大悪魔の前では何の役にも立たないのは明らかだった。

 そんなものあろうがなかろうが、目の前にいるアスタロトの気分1つで、ヤブンの生死は簡単に決まるのだ。


「貴様は許されない事をした。だから、その命をもって償え。」


 そして、アスタロトから冷徹な一言がヤブンに浴びせられた。

 その一言により、ヤブンの人生はここで終わることが確定した。

 だが、これは仕方のない事だと思っている。

 学校では好き勝手振舞い退学になり、そして口車に乗せられた結果、こうしてその学校に悪魔達と共に侵略しに来ているのだ。


 おまけに、この大悪魔の主であるアルスに対して、またしても争いを仕掛けているのだ。

 それで、この悪魔であるアスタロトが自分の事を許すという方が無理がある話だろう。


 でも、1つだけ心残りがあった。

 それは、こんなダメな息子でもここまで育ててくれた親に対して、自分はまだ何も恩返しできていないのだ。

 こんな事なら、親孝行の1つぐらいちゃんとしておけばよかった。


 こんなダメ息子でごめんなとーちゃんかーちゃん。

 どうやら俺はここで終わりみたいだ。


「……覚悟は、できている。」


 そう言うとヤブンはアスタロトの方を向き、そして訪れる最後を待った。


「よかろう。であれば、貴様は今日からそこの悪魔の手下として働くがよい。」

「……へ?」

「分からぬか?そこのデーモンロードの下につけと言っているのだ。」

「こ、殺さないのですか?」

「あぁ。どちらでも良いのだが、先程我が悪魔を沢山消し去ってしまったのでな、この世界の悪魔不足が発生してしまったのだ。だから、木っ端悪魔相当には力のある貴様であれば、その代替としては充分だろうという判断をした。」


 ヤブンは困惑した。

 ここで殺される覚悟をしたのだが、そうではなく悪魔の手下になれと言うのだ。


 でも、一度は死を覚悟したが、命だけは助かったという事だ。

 生きてさえいれば、もしかしたら親に、そしてこの学校、それからアルスに対しても罪滅ぼしができるチャンスが訪れるかもしれない。


 その事に気付いたヤブンは、アスタロトの命令に素直に従う事にした。

 というか、今のヤブンに出来る事は元々それしかないのだ。


「ふむ。おい、そこの悪魔!聞いていたか?こいつを連れてさっさとお前達の世界へ戻るがよい。」

「は、はい!分かりましたアスタロト様!」


 そう言うと、イワンはボロボロの身体を起こすと急いでヤブンの元へ行き、そしてヤブンを連れて悪魔の世界へと転移した。



 こうして、気が付くとヤブンは悪魔の世界に来ていた。


 あれよあれよと話が進み、まだ自分の中で全然整理が追い付かないが、一先ずはあれだけの事をしでかしたにも関わらず、こうして生き残れたという事が、ヤブンの中でじわじわと実感として喜びに変わっていった。


「た、助かった……。」


 それは、隣のデーモンロードも同じであったようだ。

 この強大な悪魔であっても、額からボタボタと汗を滴ながらそう呟いている。


「あ、あの……俺はこれからどうしたら……。」

「あぁ……そうだな、命令通り私のサポートをして貰おう。実際手下が減って手が足りなくなるのは確かだからな。あの方の命令に逆らったら、どうなるか分からん。。」


 アスタロト被害者であるこの二人は、その実力や身分に違いこそあれど、そこには強い共感が生まれていた。


 もう、あの大悪魔にだけは絶対に逆らってはならないと。


「よ、宜しくお願いします!イワンさん!」

「あぁ、こちらこそだ。ヤブンくん。」


 こうして、デーモンロードとただの人間は、互いに生き残れた喜びを感じつつ、強く手を握り合ったのであった。

最上位悪魔イワンさんと、ただの人間ヤブンくんの友情!


今後に期待!

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