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シュナイダー

 ゴルドール様の指示を受け、いつも通りシュナイダーは隠密任務を遂行した。


 アルブール王国へ侵入し、アスタロトの周りの情報収集をする中で、ヤブンという使えそうな少年の存在を知った。


 そうして隠密活動を進める中、部下より帝国が予定通り悪魔の召喚に成功したという連絡があった。

 しかも、召喚する予定であった悪魔よりも更に上位の、デーモンロードが召喚に応じてくれたという。

 更に都合が良いことに、アスタロトの話をするとデーモンロードはアスタロト討伐に乗り気になってくれたというのだ。


 それを知ったゴルドール様は、この千載一遇のチャンスを逃すべきではないと作戦を変更した。


 ―――情報収集ではなく、ここで確実に大悪魔アスタロトを潰せと。


 それに従ったシュナイダーは、悪魔との直接の話し合いの結果、やはりヤブンという少年は使えそうだという事で悪魔の元へと連れていった。


 悪魔の力を手に入れたヤブンは、予想を大きく上回る力を発揮してくれた。


 そうした準備の上で、シュナイダーは今日ここ魔法学校に悪魔達と共に侵入してきたのであった。




 予定通り、例の大悪魔が現れたところでシュナイダーはその身を隠した。

 シュナイダーの存在が漏れる事で、この件にディザスター帝国が絡んでいる事が漏れてしまう危険があるためだ。


 この件は事前に悪魔とも協議済みだ。

 そもそも、人間の力など必要としてはいないと、二つ返事で承諾されたのは助かった。



 こうして、シュナイダーは得意とする隠蔽スキルを駆使して、悪魔同士の戦いを陰から観戦する事にした。

 ちゃんとこの目で、アスタロトが打ち破られるところを確認する必要もあるためだ。


 シュナイダーにとって任務が最優先であるのだが、それでもやはり帝国最強である立場もあるため、悪魔同士の戦いというものにも興味があったのだ。


 そうして、すぐに悪魔達の戦いが始まったのだが、その結果はというと、シュナイダーの想定を大きく外れてしまっていた。


 しかも、最悪レベルで悪い方向に。


 目の前で、圧倒的と思われた悪魔の軍勢がたった一人の悪魔に全て蹂躙されてしまったのである。


 それも、通常の悪魔だろうと、シュナイダーでは到底敵うわけがないと思えるような上位の禍々しい悪魔だろうと関係なく、全て等しく一撃で消え去って行くのだ。


 これは何か、悪い夢を見ているだけに違いない。

 そう思わなければ、今目の前で繰り広げられている戦いにもならない戦いを自分の中で処理する事などできなかった。


 そして、そのままアスタロトが全ての悪魔を簡単に消し去ったところで、意を決したイワンはアスタロト目掛けて大魔術を放った。

 これまでにシュナイダーも数々の戦場を潜り抜けてきたのだが、イワンの放った魔術はこれまで見たどの魔術よりも高位の魔術であり、その威力は本当に凄まじかった。



 ―――だが、それを受けても尚、アスタロトは無傷のまま何事も無かったようにその場に立っていた。


 そこでシュナイダーは理解した。

 我々帝国は、絶対に敵対してはならない存在に攻撃を仕掛けてしまったのだという事を。


 1000年前からの伝承を、信じながらも見誤っていたのだ。

 いかに、大悪魔アスタロトが圧倒的かつ恐ろしい存在なのかという事を。


 デーモンロードが召喚に応じてくれた今がチャンスだと、アスタロトを討ち取れる気になったのが大きな勘違いであった。


 隣にいた白い女、セレスはこう語った。

 アスタロトは、彼ら悪魔を庇護する存在だと。


 つまりは、そもそもが間違っていたのだ。

 同じ悪魔だから、最上位のデーモンロードであれば互角以上だろうだなんて考えが甘かった。


 セレスはこうも言った。

 イワン達下界の存在に、我々上界の存在を倒せるわけがないと。


 通常であれば、シュナイダーはそんな話を信じたりなどしないのだが、アスタロトの圧倒的なまでの強さを目の当たりにした今なら、その話を信じざるを得ない。


 そこにいるアスタロトやセレスは、我々とは別次元の、もはや神に近い存在なのだろうという事を。



 非常に不味い事になったのは避けられない。

 だからシュナイダーは、いつもより数段慎重になった上で、すぐにこの場から撤退する事を決めた。


 得意の隠蔽スキルを駆使して、この場からすぐに離れるべく空気1つ揺らす事なく慎重に移動を開始する。


「待て、どこへ行く。」


 静かな声が聞こえた、アスタロトの声だった。

 どこへ行く、というワードに一瞬胸が飛び出そうな程驚いたが、今の自分は誰にも見られているわけがない術の最中である事を再確認し、自分の事ではないと落ち着いた。

 そして、気を取り直して再度移動を開始する。


「待てと言っておる。次は無いぞ。」


 だが、またアスタロトから冷たい声が発せられた。

 そこで、いよいよシュナイダーも覚悟を決めた。

 これは間違いなく自分に言っているという事に。


「見えているのですか……。」

「我を欺くにはレベルが低すぎる。バレバレだ。」

「そうですか……。」


 その言葉に、シュナイダーは諦めて姿を現した。

 突如現れたシュナイダーに驚く学生達を見て、ちゃんと術は発動していた事を再確認する。


 つまりは、この大悪魔は本当にシュナイダーの隠蔽を見破っていたという事だ。


「貴様は何者だ?」

「いえ、急な戦闘があったようなので、たまたま近くにいたのでこっそり様子を伺っていただけです。」

「う、嘘を付くんじゃねぇよ!俺とお前は一緒にここへ来ただろうが!!」


 シュナイダーが咄嗟に嘘を付くと、ヤブンは直ぐ様それを否定してきた。

 面倒なガキだと苛立ったが、シュナイダーが帝国の人間だとここでバレる訳にはいかないため冷静を取り戻す。


 このヤブンにも、シュナイダーが帝国の人間だという事は伝えていないのだ。

 最悪、自分の命だけで済むのならそれで良かった。


「貴方はたしか、ディザスター帝国魔術師団のシュナイダーですよね?」


 だが、そうはいかなかった。

 横から突如シュナイダーの正体を明かされてしまったのだ。

 驚いて声のした方を振り向くと、厳しい顔付きをしたスヴェン王子がそこにいた。


 そうか、よく見ればこの少年、アルブール王国の王子ではないか。

 シュナイダーともあろう者が、あまりの異常事態の連続に周りの把握がしきれていなかった。


 であれば、もうシュナイダーのとれる行動は1つだけだった。


「やれやれ、まさかこんなところに貴方までいるとはね。バレてしまったのなら仕方がありませんね、悪いですがここで死んで頂きましょう!」


 そう告げると、シュナイダーは覚悟を決めて即座に魔術を展開する。

 シュナイダーが帝国魔術師最強であるのは、優れた隠密スキルからではない。

 多種多様な魔術を巧みに操り、そこから生み出す強力な技の組み合わせによる攻撃こそが、シュナイダーの本当の強さなのである。


 まずは、第6位階魔術 分身(クローン)により、自身の複製を数体生み出す。

 そして、それと同時に第5位階魔術 大地の聖霊(ドリアード)により、大地の力で自身と分身体全てに身体強化を施す。

 これにより、分身体であってもデーモンレベルの身体能力を発揮する事が可能となる。


 こうして生み出した分身体と共に、シュナイダーはスヴェン王子達目掛けて一斉に襲いかかった。


 最悪、ここで破れるとしても、スヴェン王子だけでも討ち取る事が出来れば多少は帝国への貢献に繋がるはずだ。

 そう考えたシュナイダーは、確実に仕留めるべく、分身体ではなく自身で直接スヴェン王子目掛けて襲いかかった。


 だが、その攻撃は何者かに横から阻止されてしまった。


 アルスだった。

 何故か複数の分身体の中から、シュナイダー本体を一発で見破ると、シュナイダー目掛けて魔術を放ってきたのであった。


「な、何故分かった!?」

「貴方の魔力の流れを見ればすぐ分かります!」


 魔力の流れだと?こいつは人の魔力の流れを見通したと言うのか!?


 そうして驚くのも束の間、一瞬にしてシュナイダーの目の前は真っ白に染まった。


 第8位階魔術 大爆発(ビッグバースト)だった。

 大爆発(ビッグバースト)により生み出されたその激しい衝撃により、シュナイダーは一撃でその場に沈み、そのまま意識を失ってしまった。


 こうして、帝国最強の魔術師は、あろう事かアスタロトどころかただの学生により撃ち破られてしまったのであった。

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