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校門前での戦い

「マーク、本当にやるんだね?」

「あぁ、俺達にとっては初の実戦となる。気を引き締めて行くぞ!」

「「おう!」」


 マークとマリアナ、それにレオン、ビーン、ダン、サリーの4人が続く。

 そう、彼らこそがマーク達のクラスの上位者6人だ。

 その実力は、既に魔術師団の一団に匹敵する程高いと言われている。


 襲撃を仕掛けてきた悪魔達を退治するため、自分達の教室に戻り非常時用に備えていた真剣を腰に下げると、急いで校門の方へと駆けつけたのであった。



 マーク達が校門へ着くと、既に駆けつけていた先生達が悪魔と戦っていた。

 他の生徒の避難は既に済ませてくれているようで、その場には悪魔と先生達以外誰もいなくて助かった。


 これで、思う存分戦う事ができる。


「先生!!助太刀します!!」

「き、君は!マークくん!いやでも、いくら君でも危険だ!生徒に悪魔の相手をさせるなど!」

「先生、今はそれどころじゃないでしょう?いいから私達も手伝うわよ、第4位階魔術 土の壁(サンドウォール)!」


 マリアナは得意な土の壁(サンドウォール)で悪魔達を囲った。

 そして、直ぐ様自分の使い魔であるゴーレムを召喚する。


 それに合わせて、マーク以外の4人も己の使い魔を召喚した。

 サリーのグリーンドラゴン、ビーンのグレーターグリフォン、レオンのリッチ、そしてダンのワイバーンだ。


 そして、リーダーであるマークにはそれらが束になっても敵わない最強の使い魔だっている。


「マーク、あの悪魔達倒してもいい?」

「あぁ、ミスズ。今回の獲物は根絶やしにして構わない。」

「分かった。」


 そう言うと、ミスズは今まさに魔力の尽きかけた先生に襲いかかろうとする悪魔の影を伝い、後ろから悪魔の首を一気に跳ね飛ばした。


 こうして、ミスズにより4体いた悪魔の内、1体が簡単に倒れた。


 だが、ミスズからしたらこの程度狩りのうちにも入らなかった。

 それほどまでに、これらの悪魔などミスズの相手ではなかったのだ。


 この4体は、所謂下級悪魔だ。

 第5位階魔術まで扱えるため、その実力はリッチや魔術師団員と同等レベルと言われている。


 だが、悪魔というのは魔術のレベル以上にその身体能力の高さが1番厄介と言われている。


 魔術師団員レベルの魔術を扱いながら、同時に悪魔はその高い身体能力で直接襲い掛かって来るため、魔術師が悪魔と戦う場合、常に距離と数的有利を保ちながら戦う必要がある。


 それだけ、悪魔と戦うのは例え下級悪魔であっても厄介とされている。


 そしてそれは、ここクリストフ魔法学校の教師であっても同じであった。

 複数の先生が、使い魔も使いなんとか数的有利を作りながら戦ってはいるが、それでも常に隙を狙って突いてくる悪魔の相手をするのは簡単では無かった。


 だが、ミスズはそんな悪魔を簡単に屠って見せた。

 それこそが、最強の使い魔と言われるアサシンオーガの実力である。


 そしてそれは、ミスズだけではない。

 ミスズの主であるマークにとっても同じであった。

 得意魔術の炎の聖霊(イフリート)を使う事もなく、身体強化魔術だけで悪魔との間合いを一気に詰めると、そのまま悪魔の首を斬って跳ねたのであった。


 他の5人も、近くの先生と協力しながら残りの悪魔の相手をしているが、彼らの実力ならば時間の問題であった。


 こうして、マーク達が駆けつけた事により、学校を襲撃してきた悪魔達4体は呆気なく討伐されたのであった。




「ヤブンがいないな。」


 悪魔を倒しきったところで、マークは気が付いた。

 主犯格と思われるヤブンを捕らえるつもりだったが、肝心のヤブンが突如としてこの場から消えてしまっていたのであった。


「ちっ、逃げられたか。」

「大丈夫ですよ。貴殿方の相手は私が致しますので、ご安心を。」


 ヤブンを逃した事に舌打ちをするマークに、突然後ろから声がかかった。

 驚いたマークは、直ぐ様声のする方向を振り向き臨戦態勢を取る。


 マークが振り向くと、そこには先程の悪魔より一回り大きく、全身を黒く染めた禍々しい悪魔が立っていた。


「貴様が親玉か?」

「さて、どうでしょうね。」


 そんな会話をしていると、直ぐ様悪魔の影からミスズが飛び出し悪魔の首目掛けて斬りかかった。


 相手に隙があれば、すぐに殺しにかかる。

 それこそが、アサシンオーガの理不尽なまでに徹底した必殺の戦闘スタイルなのである。


「今話しているところです。野蛮な鬼ですね。」


 だが、斬り掛かったミスズの短刀を、悪魔は片手で受け止めてみせたのであった。


「なに!?」


 まさか自分の不意打ちの攻撃を防がれるとは思っていなかったミスズは、驚きつつも短刀を手放して直ぐに悪魔との距離を取った。


「良い判断です。倒し損ねてしまいました。」


 どういう事だ?とマークはミスズの方を見てみると、ミスズの服の前部分が大きく切られてしまっていた。


 な、なんだ?いつの間に!?


 この場にいる誰もが、悪魔の攻撃を目で追う事が出来なかった。

 そもそも、ミスズの攻撃自体完璧な奇襲であったのだ。

 しかし、それを簡単に防いだだけではなく、更には見えない攻撃でミスズを斬りつけてもいたのだ。


 それだけで、この悪魔が先程の悪魔の比じゃない事が分かった。

 マーク達6人、それにこの場にいる先生達の力を合わせても、目の前の悪魔の相手が出来るか否か怪しい程に、その実力は正直圧倒的であった。


 だが、それでもマークは引くわけにはいかなかった。


 この魔法学校を卒業したら、マークは魔術師団に入団する予定だ。

 父と同じく、この愛すべき国を守れる人間になると心に決めているから。

 そのためだけに、マークはこれまで毎日必死に魔術と剣の特訓を続けてきたのだ。


 そうして、覚悟を決めたマークは目の前の悪魔に立ち向かう。


「第5位階魔術 炎の聖霊(イフリート)!行くぞぉおお!!」


 相手は確実に自分よりも強い。

 だったら、最初から全力だ。


 意地でもこの悪魔を倒す!!


 そう決意を決めたマークは、炎の聖霊(イフリート)の効果をフル活用し目の前の悪魔目掛けて超速度で斬り掛かる。

 アルスに敗れてから、マークは更に己の剣を鍛え直した。

 そして今では、あの時以上のスピードと威力を出す事が出来る必殺の一撃を手に入れた。


「マークは私が守る。」


 それに合わせて、ミスズも悪魔に斬り掛かる。


 こうしてマークとミスズ、二人同時に超速度で悪魔に斬り掛かった。

 そして、それに気付いたマリアナや先生達も、二人の攻撃のタイミングに合わせて攻撃魔術を悪魔目掛けて放つ。


 この場にいる全員の攻撃が、1体の悪魔目掛けて一斉に襲いかかった。


「ほう、面白い。ですが、それでも駄目です。」


 すると悪魔は、避ける事もせずその身に多数の魔術を受けているにも関わらず、一切ダメージを負ってはいなかった。

 そして、悪魔は片手でマークの剣を受け止めると、逆の手でミスズを弾き飛ばし、そしてマークの腹を蹴り飛ばした。


 こうしてマークとミスズ、それにこの場にいる全員が全力の魔術で挑んだというのに、簡単に防がれてしまったのだ。



 その場に倒れたマークとミスズを見て、周りに動揺が走る。


 教師からしても、マークの実力は学生レベルを超越しており、戦闘においては既に自分達よりも強くなっている事を知っている。

 そして、そのマークの使い魔であるアサシンオーガは、説明不要の最強の使い魔だ。


 その二人が倒れ、自分達の全力の攻撃も簡単に防がれてしまった今、ここに残る者達にはこれ以上出来る事なんて何も無かった。



 動揺が絶望に変わる。

 そして、それに気付いた悪魔はニヤリと笑った。


「皆さん、良い表情になりましたね。そうです、お察しの通りですよ。貴殿方はこれから1人残さず私に殺されるのですから。」


 楽しそうに笑う悪魔。

 そう、この悪魔にとっては、最初から人間などただの狩りの対象でしかなかったのだ。


 そして、人がそれを理解した時、絶望の表情に変わるその瞬間が悪魔は大好きだった。


 こうなれば、あとはなんとか生き延びようと必死に逃げ出すだけだ。


 人間は弱く、愚かで、そして面白い。


 さぁ、今日も鬼ごっこの時間だ。

 1人1人、見せ付けるようにして殺していってあげましょう。


「やれやれ。アークデーモンが何故こんなところにおるのだね?」

「……誰ですか?」


 いざ狩りを楽しもうとする悪魔に、突然背後から声が掛けられた。

 通常、人間が近くにいればすぐに把握できるのだが、この声の主の接近には気付かなかったのだ。


 悪魔は警戒しつつ声のする方を振り向く。


 すると、そこには長身で白い髪をした初老の男性と、その後ろに魔術師が数人いた。


「なるほど、貴方なら気付かないのも納得ですね。」

「悪いが、お前の悪巧みはこれまでだ。大人しくここで消えて頂こう。」


 まさに絶体絶命の状況の中、そこに現れたのはサミュエル団長とその一団であった。

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