クラス対抗戦⑥
「ここから先へは行かせない。」
こちらへ突撃してくるダンとサリーと対峙したマーレーは、氷の壁で二人の進行方向を塞いだ。
「あんたがアタイらとやろうってのかい?」
「サリー、油断は禁物だぞ。相手はあのマーレーだ。」
「分かってるよ、そんじゃ行きますか!」
荒々しい性格をしたサリーだが、相手がマーレーだと分かると小さくニヤリと微笑み、そして気を引き締め直すと握っている木刀に魔術を込め高速移動でマーレーに斬りかかった。
しかし、マーレーは迫り来るサリーを気にする素振りも見せず、無表情でそちらを見ているだけであった。
「はん!?余裕だってか!?アンタ死ぬよ!!」
その態度に苛ついたサリーは、渾身の力を込めてそのままマーレーを斬りつけた。
その一撃の威力は凄まじく、ドゴォン!と激しい衝突音が鳴り響いた。
だが、そんなサリーの渾身の一撃であったが、マーレーの前に見えない壁があるかのようにその剣撃は弾かれてしまっていた。
「なっ!?なんだい、これは!」
「プロテクション。」
驚くサリーに、マーレーは淡々と答えた。
プロテクション。
それはシールド魔術の上位魔術であり、第5位階に属する高位の防御魔術である。
通常のシールドとの1番の違いは、その強度だ。
より高密度に張られたその結界は、いくらサリーの剣撃であっても突破するのは不可能であった。
「サリー!そいつは簡単には突破できねぇ!魔術で応戦するぞ!」
状況を直ぐ様判断したダンが、マーレー目掛けて火の球を放った。
しかし、その火の球を受けても尚、マーレーのプロテクションの突破には至らなかった。
「おいおい、魔術も弾くとかチートかよその防壁は。」
「ダン、あんまりモタモタもしてらんないよ!使い魔を召喚してさっさとやっちまおう!」
サリーはそう言うと、マーレーと一度距離を取りつつ自らの使い魔を召喚すると、グリーンドラゴンが現れた。
だが、それはただのグリーンドラゴンではなかった。
他のグリーンドラゴンと比べると一回り身体が大きく、ただでさえ大きいグリーンドラゴンだが、サリーの召喚したグリーンドラゴンはレッドドラゴンよりも大きくまさに巨大生物そのものであった。
ドラゴンは、その身体の大きさに比例して力も増すと言われており、サリーのグリーンドラゴンは他のグリーンドラゴンよりも明らかに強い個体である事が分かる。
そしてサリーは、召喚したその巨大なグリーンドラゴンへ指示を出し、直ぐ様自らと共にマーレーに再び突撃を仕掛けた。
そしてもう1人、ダンの召喚した使い魔はまさかのワイバーンであった。
ワイバーンは、その大きな翼で空を自由に移動し、レッドドラゴンと同じくファイヤーブレスで範囲攻撃を得意とする超上位魔物の1つであり、スヴェン王子のレッドドラゴンにも匹敵する超上位魔物の一種だ。
ダンは召喚したワイバーンに跨がると、一気に上空へと飛び上がった。
こうして、陸からは巨大グリーンドラゴンとサリー、そして上空からはワイバーンとダンがマーレー目掛けて一気に襲いかかった。
しかし、それでもマーレーの表情は変わらない。
なんの感情も感じさせない無表情のまま、マーレーも自らの使い魔を召喚した。
カーバンクルだ。
マーレーのカーバンクルは、以前召喚した際の姿に比べると身体が一回り大きくなっており、短期間ではあるが成長しているのが分かった。
カーバンクルは常に成長していく魔物であり、その成長度に比例して力を増加させるという特徴がある。
マーレーの前に立ったカーバンクルは、飛びかかるワイバーンに向けて大きく口を開いた。
すると、口から白いレーザーのような波動が飛び出し、そのままワイバーン目掛けて一直線に放たれた。
それに気が付いたワイバーンも、直ぐ様ファイヤーブレスで応戦しカーバンクルの攻撃と相殺した。
攻撃を防がれたカーバンクルは、ワイバーン目掛けて駆け出すと、全身を覆っている毛の色を茶色から黒色に変え、青色だった瞳も赤色に変えた。
これもカーバンクルの特徴の1つで、全身の色を変えると共にそのステータスや戦い方を変化させる事が出来るのだ。
黒色という事は、近接戦闘に特化したモードだ。
「俺のワイバーンと互角にやり合うとかマジかよ!?使い魔までおっかねぇの従えてやがるな!サリー!一斉攻撃だ!」
「あいよ!!」
ダンは炎の魔術を込めた木刀を構え、ワイバーンに乗ったままマーレー目掛けて一気に急降下した。
それと同時に、ワイバーンは突撃しながら再びファイヤーブレスをマーレーとカーバンクル目掛け吹き掛ける。
だが、降下してくるワイバーンに向かって、カーバンクルは物怖じする事なく物凄い速度で跳躍すると、そのままワイバーン目掛けて飛び掛かった。
カーバンクルは全身にワイバーンのファイヤーブレスを浴びているが、炎をものともせずそのまま突破すると、そのままワイバーンの胴体を爪で大きく切りつけた。
硬い鱗で覆われているワイバーンであるが、カーバンクルの攻撃を防ぐには至らず、身体を大きく斬りつけられたワイバーンはそのままバランスを崩して地面へと墜落してしまった。
「くそっ!なんだありゃ!あんなちっこいのに俺のワイバーンがやられただと!?」
驚くダンだが、すぐさま気を取り直すと、近くまで迫っていたカーバンクルの背後から一気に斬りかかった。
それは、身体強化魔術により超速で撃ち込まれた一撃であったが、カーバンクルは迫り来るダンに気が付くとそれを上回るスピードで簡単に剣撃をかわすと同時に、そのままダンを爪で切りつけた。
「なん、だとっ!?」
脇腹を爪で深く切りつけられたダンは、血を流しながらその場に蹲ってしまった。
「よくもダンを!」
そう叫びながら、サリーは雷属性の魔術を付与した木刀でマーレーに斬りかかる。
また逆サイドからは、グリーンドラゴンがその大きな牙を広げながらマーレーに襲いかかる。
「第6位階魔術 氷の世界。」
だが、それでも相変わらず表情1つ変えないマーレーは、氷の世界を唱えた。
マーレーの氷の世界により、襲いかかるサリーとグリーンドラゴンであったが、その足元から凍りついてしまいその動きを止めたのだった。
「なっ!なんだいこれは!?」
そう驚くサリーであったが、驚いたのも束の間、徐々に足から腰、そして胸へと次第に下から凍りついて行く。
「ちょ、ちょっとこれ洒落にならないんだけど!!」
焦るサリーは必死に身体を動かそうとするが、しっかりと凍りついた身体は言うことを利かず、既に首元まで凍りついてしまっている。
それはサリーだけではなく、あの巨大なグリーンドラゴンをもってしても同じであった。
「わ、分かった!降参!降参だよ!!」
「そう。」
打つ手なしのサリーは慌てて降参を告げると、マーレーは興味無さげにそれを受け入れると、すぐに魔術を解いた。
こうして、クレアと同様にマーレーもまた難なく勝利を上げたのだった。
普段から謎に満ちているマーレーだが、まさかの第6位階魔術を使っても尚、まだ本気を出しているようには見えなかった。




