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アルブール王

 アスタロトさんの常識外れな知識と力を前に、ここクリストフ魔法学校の全授業は前提から覆されるような事ばかりが続いたが、一応無事?今日の授業は終了した。


 ルドルフ先生は授業のあと、アスタロトさんを我が師匠と呼ぶようになり、魔術についてあれこれ質問攻めをしようとしたところで、アスタロトさんの逆鱗に触れ敢えなく魔術で拘束されてしまっていた。


「うるさい奴だな。。まずはその魔術でも解析しておれ。10分もすれば効果は無くなるだろう。」

「うぐっ!み、身動きが!?これは拘束魔術か!?凄い!凄いぞぉ!!」


 と、身動きが取れず尻餅をつきながらも、新たな魔術を体感してテンションを上げているルドルフ先生は、状況に反してとりあえず楽しそうだったので皆そのままそっとしておく事にした。


「アルスくん、このあと少しいいかな?」


 授業も終わったので帰ろうと支度をしていたところ、スヴェン王子が声をかけてきた。


「大丈夫ですけど、何かありましたか?」

「うん、それがね……父、アルブール王が一度アルスくんとアスタロトさんに会いたいって言うんだ。僕の権限でアルスくん達の事には触れないように頑張ってはみたのだけれどね。。」


 少し気まずそうに、スヴェン王子はそう説明した。


 ……そりゃそうだよね。

 こんな圧倒的な力を持つアスタロトさんを、この国が放置しておく方がおかしいと思う。


「正直、僕なんかが国王様とお会いするなんて畏れ多いのですが、そういうお話なら断るわけにもいきませんよね。アスタロトさんも大丈夫ですか?」

「ふむ、アルスが良いのなら我はそれに従おう。ただし、もし我の力を欲してアルスに危害が及ぶような事があれば、その時はそれ相応の対応をさせて貰うぞ。」

「ありがとう。もし父が……いや、この国がアスタロトさんを少しでも利用しようとするならば、アルブール王国第一王子である僕が全力で阻止する事をお約束します。」

「よかろう。お前の事は信用しておるぞ。」


 アスタロトさんの指摘に対して、スヴェン王子は真っ直ぐと受け止めそれを否定した。

 同じクラスメイトであるアルスを、国のいざこざに巻き込ませるつもりはないと断言してくれた事で、アスタロトさんもスヴェン王子を信用したようだ。

 こうして、アルス達はスヴェン王子に連れられて急遽アルブール城へと向かう事になった。




―――――


 スヴェン王子が、アルブール城の王室の扉を開ける。

 そこには、まさに豪華絢爛と言える装飾の数々が部屋中に飾られており、誰が見てもここが王室なのだと一目で分かる部屋が広がっていた。


 正直覚悟はしていたつもりだけど、いざ来てみるとあまりの場違いさに気圧されてしまう。。


「君がアルスくんかね?よく来てくれた、いつも息子が世話になっている。」

「い、いえ!滅相もございません!!こ、こちらこそいつもお世話になっておりますですっ!!」

「ハッハッハッ、そんな緊張せずともよい。とりあえず立ち話もなんだ、そこに掛けてくれたまえ。」


 ヤバい、緊張しすぎて変な事を口走ってしまった。。

 僕は顔を真っ赤にしながら、指定された席へと向かった。


 こうして国王様、スヴェン王子を前にして、僕とアスタロトさんが向かい合う形で席につく事となった。


 ……うわぁ、このテーブルも椅子もすっごく高そうだなぁ。。

 ってダメだ、話に集中しなくては!


「急な呼び立てをして申し訳なかったな、アルスくん。そして、アスタロト殿。」

「い、いえ!大丈夫です!!」

「それで、我とアルスに何の用だ?」


 ちょ、ちょっとアスタロトさん!?

 国王様に対してその態度は不味いですよ!?

 ……ダメだ、胃が痛くなってきた。。


「ハッハッハッ!すまんな!いやなに、あの伝説の大悪魔が私の国におるというのに、私が会わずにいるわけにもいかないだろう!」

「会ってどうなるものでもあるまい。」

「違いないな!だが、話に聞くとアスタロト殿はサミュエルにも圧勝したそうじゃないか。一応あれでも、この国最強の魔術師なのだ。それを容易く打ち破られたとあれば、国王として見過ごすわけにもいかんのだ。」

「人が我に敵うわけがなかろう。それで、見過ごすわけにもいかないならば、我を捕らえでもするか?」

「無理を言うな。そんな事できるなら、こうしてここに呼び出す必要もないであろう。だがそうだな、長話もあれだ、単刀直入に言わせて貰おう。」


 そう言うと国王様は、朗らかな表情から真剣な顔付きに変わり話を続けた。


「ここアルブール王国は、隣国ディザスター帝国と常に対立を続けておる。そんなわけで、アスタロト殿の存在があちら側へ伝わった場合、何かしら干渉しようとしてくる事は確実であろう。最悪の場合、それを理由に再び大規模な戦闘になる事すらも起こり得る。」


 そんな……つまりそれは、アスタロトさんがこの国にいるから戦争になるっていう事ですか。。


「だが、それはアルスくんやアスタロト殿に責任があるわけではない。帝国が一方的に仕掛けてくるだけの事だ。我らには、帝国を凌駕する魔術師団だってあるしその辺の心配は無用だ。ただ、帝国からの刺客がアスタロト殿……いや、アルスくんに直接危害を加えようとした時が1番の問題となろう。」

「話は分かった。だが、アルスの事は心配無用だ。どこに居ようが、我が常に近くにおれば何の心配もない。」

「それもそうだな。すまない、その件は私の杞憂であろう。とりあえずは、アスタロト殿と話をしておきたかったのと、帝国の情報共有が目的だ。アスタロト殿がいれば充分かもしれないが、我々アルブール王国も君達の安全を守ることをここに誓おう。」


 そう言うと、国王様はニッコリと笑いながらアルスに向かって手を差し出した。

 しかし、いきなり国王様に手を差し出されたアルスは、手を取り握手をしたがそのあとどうしたらいいのか分からず固まってしまった。


「父上、お話はこの辺で宜しいでしょうか?アルスくんがそろそろ限界なようなので。」

「ハッハッハッ、これはすまんな!では私は次の仕事もあるのでこの辺で失礼させて貰おう。アルスくんは息子の学友でもあるのだ、これからも宜しく頼むぞ!」


 そう言って、笑いながら国王様は自室へと去っていった。


「あれがこの国の王か、騒がしい奴だな。」

「すみません、父はあのような性格でして。今日はお時間頂きありがとうございました。日も落ちてきましたし、寮へと帰りましょうか。」


 こうして、あっという間だが非常に長く感じられた時間から、ようやく解放されたアルスであった。


 でも、凄くパワフルな国王様だけど、気さくで素敵な人柄だったなぁ……と、やっと落ち着いてきたアルスはそんな事をぼんやりと思い出しながら帰路についた。

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