使い魔と契約?
「えっと、アスタロト、、さん?」
アルスは恐る恐る、突然目の前に現れたアスタロトさんに話しかけてみた。
「ふむ、なんだ?」
「えっと、すみません。僕は今学校で行う使い魔召喚の最中でして、そしたら何故か魔物ではなくアスタロトさんが出てこられた状況でして。。」
「なるほど、使い魔召喚か。だがそれはおかしいぞ、使い魔召喚で我が出てくるわけがなかろう。」
「いや、そう言われましても。。」
知ったこっちゃないよとは言えない。
「ならばお前、今一度魔法陣を我に見せてみよ。」
「あ、はい。えっと、これです。」
言われるがまま、アルスは再び魔法陣を展開して見せた。
起動はさせていないためか、今度はちゃんと白い魔法陣であった。
「あれ?さっきはこれが赤く光ってたんですけど。」
「ふむふむ、なるほどな。これは似ているが、お前らが使っている使い魔召喚のものではないぞ。この時代にこの魔法陣を展開できる奴がおるとは思わなかったが。」
「そ、そうなんですか?えっと、じゃあその、僕は使い魔を召喚しようとしたわけで、アスタロトさんを呼んだわけでは無いので無かったことには。。」
「ダメに決まっておろう。お前が我を召喚した事には変わらんのだ。」
「そうですか。。」
「なに、本来悪魔との契約は高い代償が伴う物だが、そんなものは木っ端悪魔にやらせておればいい。それよりも、我は長い間暇しておったのだ。だから、代償は我の暇潰しという事で、特別にこの我がお前の使い魔になってやろうではないか。」
「いや、僕の使い魔ですよ?それに今悪魔って。。」
「お前に選択権はない。我が使い魔になると言ったその時から、我はお前の使い魔なのだ。」
「は、はぁ。」
めちゃくちゃ言い出したよこの人。いや、悪魔?
「ということで宜しく頼む。そうだ、使い魔と言えば、我にも使い魔がおるから紹介しておこう。場合によってはお前もこいつを好きに使うがよい。いでよ。」
アスタロトさんはそう言うと、指をパチリと鳴らした。
すると、赤い巨大な魔法陣の中から、これまた巨大な黒い狼が現れた。
「主、お呼びですか?」
しかも喋った!
「ふむ、今しがた我はそこの人間の使い魔になったので、一応お前にも言っておこうと思っての。」
「は?主が使い魔!?」
「紹介しよう、こいつはフェンリルのポチだ。」
「え!?あの、えっと、よろしくおねがいします。」
「貴様のようなたかが人間風情が、主の主だと?……死にたいのか?」
そう言うとポチさんから、真っ黒なオーラが溢れだしてきた。
あ、これはめちゃくちゃヤバいやつだと本能で悟った。
多分一瞬で死ぬやつだ。
「黙れポチ、これは我が決めた事だ。我の決断に文句でもあるのか?」
「い、いえ、それであれば、私に言うことなど何もありません。」
「ふむ、話はそれだけだ、今日は帰ってよい。」
そう言うと、フェンリルのポチさんは納得できてない顔をしながら魔法陣の向こうへと消えていった。
というか、さっきあんなとてつもない魔物をアスタロトさんは好きに使っていいとかなんとか言ってたような……。
「やはり本当にあ、悪魔、アスタロトだと言うのか……あ、ありえん。。」
そんなアルスとアスタロトさんとの契約?が一通り終わったところで、近くでシールド魔術を展開していた先生が震えながら誰に言うわけでもなく語りだした。
「古い書物にはこう記されています。。大悪魔アスタロトは約1000年前にこの地に現れ、人も魔族も全てを蹂躙して去っていった最悪の悪魔だと。。最強の大悪魔、それが再びこの地に舞い降りたと言うのですか。。」
「ふむ、あれももう1000年も昔の事か。確かにそれをやったのは我で違いない。人の書物とやらも、意外とちゃんと継承されるものなのだな、中々興味深い。」
「な、なんと!?」
「だが安心しろ、今の我にはそんな気などない。そもそもあれをやったのは、お前達人間が生み出した結果だ。そして今は、我はこやつのただの使い魔でしかない。」
そう言うと、アスタロトさんはアルスの方を向いた。
「そう言えばまだだったな、名をなんという?」
「あ、はい。アルスです。アルス・ノーチェス。」
「ふむ、アルスか、良い名だな。これから宜しく頼む。」
そう言いながら、アスタロトさんはゆっくりと近付き、そのままアルスの隣に並んだ。
うわ、近くで見ると本当に美人だなぁ……じゃなくて!
「あ、あの、アスタロトさん?その、使い魔なのはもう分かりましたが、どうして隣に?」
「使い魔だからだが?」
「いや、皆はほら、使い魔は必要な時だけ呼ぶだけで、普段は魔法陣の向こう側に居て貰ってるわけでして。。」
「我はアルスと行動を共にする事にしたから、そんなものは関係ない。」
「そうですか。。」
これももう、アスタロトさんが決めたのならそういう事なのだろうと諦めた。
こうして、世界最強?の大悪魔様が、何故かアルスの使い魔になりました。