2日目の朝
クリストフ魔法学校。
アルブール王国にある、世界中から魔術の才能があると認められた若者が集められた世界屈指の魔術の学舎である。
13歳から18歳まで、最新の環境で魔術の全てを学ぶ事ができ、ここクリストフ魔法学校を卒業した者の将来は約束されたものとされている。
クリストフ魔法学校へ入学するには、毎年各学年50人が定員となっており非常に狭き門とされている。
毎年おおよそ1000人以上の人が受験し、魔術適切検査及び基礎学力試験を経て、成績上位者50名しか入学が許されない。
それほど、ここクリストフ魔法学校に在籍するというのは、それだけで物凄い事だと羨望の対象となっているのであった。
アルス・ノーチェスは、自他共に認める平凡を絵に書いたような少年であった。
たまたま魔術の才能が見られたため、親の猛プッシュの末魔法学校への試験に挑んだけれど、魔術適切があるだけで特別秀でていたわけでもなく、それまでまともに勉強した事も無かったので基礎学力なんてゼロに等しかった。
それなのに、どうしてここクリストフ魔法学校に入学出来たのか今でも正直理由が分からないでいた。
でもせっかくこんな所で学べるのだ、入学して以降座学は一生懸命学び沢山の知識を蓄える事は出来た。
しかし、実技の方は生まれもった才能の差が露骨に現れており、学年でもずっと下の方の成績のまま今に至るのであった。
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結局昨日は、本当に色々ありすぎたおかげですぐ眠りにつく事が出来た。
刺激的すぎるアスタロトさんが何度も脳裏に過ったが、それよりも眠気が勝ってくれて本当に良かった。
目を覚ましリビングへ向かうと、既にアスタロトさんは起きており1人テーブルでお茶を飲んでいた。
「起きたか。おはようアルス。」
「あ、おはようございますアスタロトさん。早起きですね。」
「なに、昨日はお陰様でゆっくり休ませて貰った。使い魔の我が、主より遅く寝ているわけにもいくまい。」
「そんな事気にしなくても大丈夫ですよ。」
アスタロトさんは既に昨晩のネグリジェ姿から、普段の黒と赤のドレスへと着替えていた。
ザ・いつもの悪魔スタイルであった。
あぁ、この格好もかっこよくて素敵だなぁ……なんて、結局何を着ていてもアスタロトさんの美しさには全然慣れないアルスなのであった。
朝食は食堂で自由に済ませれるため、アルスも早く支度をして食堂へ向かおうと支度を始めた矢先、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
こんな朝早くに誰だろうと扉を開けると、なんとそこに居たのは寮専属のメイドさんであった。
「スヴェン様からのお申し付けで、アスタロト様の制服をお持ち致しました。」
制服?と思って差し出された服を見てみると、確かにそれは女生徒用のクリストフ魔法学校の制服であった。
「今日からアスタロト様も魔法学校へ通われるとの事で、普段の格好では目立つでしょうとのスヴェン様のお気遣いでございます。サイズはおおよその目測でお持ち致しましたので、もし不都合があればまたお申し付け下さい。」
「あ、なるほどです。そうですよね分かりました、わざわざお持ち頂きありがとうございます。」
「いえ、それでは失礼致します。」
そう言って制服を渡すと、メイドさんはすぐに部屋から去っていった。
そうか、アスタロトさんも今日から一緒に学校へ通うんだったっけ。
……確かに今のドレス姿では、クラスどころか全校からきっと浮きまくりである。
本当、スヴェン王子には色々と助けられっぱなしだな。
「アスタロトさん、スヴェン王子からアスタロトさん用の制服を頂きました。今日から学校へ通う場合、こちらの服を着た方が目立たなくて良いでしょうとの事です。」
「ふむ、昨日クレアが着ていた物と同じやつか。なるほどな、郷に入れば郷に従えだ。我もその制服とやらを着るとしよう。」
そうすんなりと受け入れてくれたアスタロトさんに制服を渡すと、そのままアスタロトさんは着替えに自室へと入って行った。
アルスも支度があるので手早く済ませ、学校へ通う準備が整った所で丁度アスタロトさんも部屋から出てきた。
「……ふむ、あまりこういう服は着慣れてはおらぬのだが、どうだろうか?」
その声に振り替えると、そこにはクリストフ魔法学校の制服を着たアスタロトさんが、少し不安そうな顔をして立っていた。
ブラウンのブレザーの下に白のシャツを着て、下はネイビーベースのチェック柄のスカートを履いている。
それから、黒のタイツにブラウンのヒールが高めの革靴を履くというのが、ここクリストフ魔法学校の女生徒用制服である。
ちなみに男子は、同じくブラウンのブレザーに白のシャツ、下はネイビーのチェックパンツというのが制服になる。
共にブレザーの胸元にはクリストフ魔法学校のエンブレムが刺繍されており、一目で魔法学校の生徒だと分かるほどのインパクトあるデザインとなっている。
……とりあえず、普段のドレスや昨晩のネグリジェもヤバいんだけど、これはこれでちょっとヤバすぎるのではないだろうか。。
しかし制服を着ると、普段の大人っぽい雰囲気と変わって同年代の少女そのものに見えるから不思議だ。
そんな、学校が始まって初めて現れたのではないかというレベルの美少女が、制服を着て僕の目の前に立っているのであった。
「……なんだ、どこか可笑しいだろうか?」
「い、いえ!とてもお似合いですよ!あまりにも似合っていたもので。。」
「そ、そうか?なら良いのだが。一応学校へ通うのだから、角は隠しておいたが良いか?」
「えぇ、まだ僕のクラスメイトぐらいしかアスタロトさんの事は知らないでしょうし、角は隠しておいて頂けると不要なトラブルは避けられるかと思います。」
「わかった、そうするとしよう。」
やっぱり、角があるだけで驚く人も多いだろうから、出来るだけ普通の生徒として振る舞った方が良いだろう。
こうして、制服を着たアスタロトさんを連れて、アルスは寮の食堂へ向かった。
角を隠せば大丈夫!
次回、アスタロトさん食堂へ行く