表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/90

豹変

トキを連れて、デート。いつぞやの、やり直し。レイは仕事、サクラも自宅で作業があるようだ。


「珍しいね、キミが外に誘ってくれるなんて。と言うか、NLJOの中の方が綺麗な場所が多そうだけどね」


「前のデートがエスコートされっぱなしだったからな、今日は任せてくれ」


「有り難う、キミと一緒に歩けるだけで嬉しいよ」


トキがにこりと笑う。そっと手を繋いでくる。


水族館、レストランでランチ、映画館、カラオケ・・・それなりに調べて計画したが、やはりセンスには限界があると感じた。それでも楽しんでるように見えて・・・本当に愛おしい。


夕日の公園、一応綺麗さで定評のある場所。オリジナリティーはない。そんなぐだぐださ・・・それでも・・・


「解子さん・・・話がある」


「ん?何だい?」


「解子さん・・・俺と・・・結婚して欲しい」


指輪を差し出す。


「おや。・・・そうだね、僕も結婚を避けている訳ではないし、キミは非常に好ましい存在だ。この申し出は非常に嬉しいよ」


トキは微笑んで、指輪を受け取る。


「一応、僕達は婚約者として世間では通っているからね。婚約指輪ではなく、結婚指輪でも良かったのだけど。それともそのつもりだったのだろうか?今から結婚指輪を選ぶなら、後日一緒に行こう。式場は・・・」


淡々と手順の説明をするトキ。びっくりした、以上の感情は特にない。それでも言っておきたい。この愛しい人に。


「解子さん・・・そしてトキ・・・聞いて欲しい」


「何だい?結婚の話ならやぶさかではないのだけど?」


きょとん、とするトキ。


「これだけは言わせて欲しい。レイを遠ざける為の口実とかじゃない。誰でも言い訳じゃ無い。そして、お姉さん、フェルの代わりでもない。俺はフェルにそんな気持ちを抱いた事は一度もない。俺が好きなのは、結婚して欲しいのは、解子さん、貴方だ。貴方が、好きなんだ。俺が見ているのは、貴方だ」


そんな事は分かっているのだと思う。それでも、言っておきたかった。


「え・・・僕を・・・って・・・だって姉さんが・・・レイが・・・」


「俺が好きなのは解子さん、貴方だ」


ぎゅっと抱きしめる。そのまま黙るトキ・・・沈黙が痛い。


「と、とにかく、その話は受けるし、問題はないよ」


最後までぐだぐだだったけど・・・良かった。


「有り難う・・・行こうか」


手を差し出し、トキの手を取・・・


「ひゃっ」


手に触れた瞬間、トキが手を引っ込める。


「・・・トキ?」


「な、何かな?!」


力いっぱいこちらをじっと見るトキ・・・あれ・・・こっちから握手するのは無し?仕方ない、握手は諦めよう。


「トキ、行こうか」


「は、はいっ」


何時もより力強く言うと、しかしその後は無言になりうつむいて、後ろを付いてくる・・・あれ・・・何時もなら話題を色々振ってくれ、こちらが楽しく聞くというパターンが多いのだけど。・・・何か話題を・・・


「さっきのカラオケだけど」


「ひゃ、ひゃい!」


・・・?!・・・また沈黙。結局微妙な雰囲気のまま帰宅する事となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ