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偽りの逢瀬

トキを連れ立って家に帰る。サクラには電話で今から帰る旨を伝えておく。


「お帰りなさいパパ」


家に帰るとサクラがぺたっと抱きついてくる。レイもまだいるようだ。トキを見てびっくりしたような顔をする。


「え・・・解子さん?」


「あれ、麗海?」


ん?知り合い?


トキがこっちの耳の傍で、ひそひそ話してくる。


「キミね・・・麗海・・・何か不満があるのかい?アイドル、ワン。今日本で、いや、世界で一番人気のアイドルだよ?凄く良い話だと思うがね?」


ナンバーワンアイドルってレイの事だったのかあ・・・


「そう言っても年齢が・・・」


「キミは本当に面倒臭いね」


呆れたように言うトキ。


「えっと、麗海。そっちはサクラちゃんだね。私がトキ、同じギルドのメンバーだよ」


「えええ?!トキって解子さん?!」


「既知。サクラです、よろしく御願いします」


「・・・何で知ってるのかね・・・この子は・・・」


「・・・解子さん!解子さんもますたぁを説得するの手伝って下さい!私もこの家に住む!私はますたぁのお嫁さんになる!」


「麗海・・・すまないが、それは出来ない。私とシルビアさんは、付き合っているのでね」


「嘘だ!」


ノータイム。


「いや・・・嘘では・・・ない・・・よ?」


「嘘だ!解子さんが恋愛感情を理解出来るとは思わないし、恋人ならここで本名で呼ばないのは変だ!解子さんがますたぁに抱く感情は、恋人じゃなくてお義兄さんって感じだと思うし!大方、私に押しかけられたますたぁが、年齢の関係で悩んで解子さんに相談して、恋人の振りして私に諦めさせようとかそういう話になったんだ!」


的確すぎた。


「みんな済まない・・・俺がはっきりすべきだな」


みんなに謝る。


「レイ、済まない。キミとは付き合えない。今まで通り、友人でいて欲しい」


「やだ!何時か振り向かせる!」


ノータイム。再びハグしようと寄ってくるが、トキが間に入って押し止める。


「待ちなさい、未婚の男女がそうそう身体接触すべきではない」


「サクラは?!」


ちらっと、俺の後ろに抱きついているサクラを見る。ぐいーっと引き離し。


「父娘の関係でもちょっと自重しなさい」


「えー?!」


レイはぷくーっと頬を膨らませると。


「・・・じゃあ、解子さんとますたぁが付き合ってる所を見せてくれたら諦める」


ああ、良くある展開の。


「分かった」


トキはそう言うと、すっとこちらに顔を近づけ・・・唇を重ね?!


俺は思考がフリーズして、レイとサクラも顔を真っ赤にし、目を大きく見開いて・・・顔色を一切変えずにトキが言う。


「どうだ、麗海、これで信じたか?」


な・・・なな・・・


きょとん、としてトキが耳打ちしてくる。


「どうした、シルビアさん。こんなのはただの粘膜の接触に過ぎない」


「いやだって・・・キス・・・」


「ん?嫌だったのか?それは申し訳ない。こちらはシルビアさん相手なら嫌ではないので実行したのだが。こういう事をするのは初めてなのでな、勝手が分からん」


「嫌では無いけど・・・いや、トキがいいのならそれで」


まだドキドキしている。サクラもレイも真っ赤だ。


「・・・それだけじゃ信じられない!ちゃんとデートしているところを見せて」


そうそう、これがよくある展開。


「む・・・そういう意味か。接吻より先を見せろと言われると困るが、デートなら特に問題はないぞ」


なんかトキとデートに出かけて、サクラとレイがそれを監視するらしい。


とりあえず耳打ちしておく。


「解子さん、俺の名前は朧月龍司だ」


「分かった、龍司さんだな」


うんうん、とトキが頷く。


デートはトキのプランに任せることにした。・・・お金もトキ持ちだ。本当に情けない。


腕を組むのはちょっと嬉しさと照れがある物の、基本的には楽しい時間だ。衣服を見ながら、トキの説明を受けたり、小物を見ながらトキの説明を受けたり。・・・俺聞いてるだけだな。ファッションの会社を経営している、というのは伊達ではなく、かなり詳しい。聞いていて楽しい。・・・なんか俺の服が増えて行くという現象も起きているけど。


サクラ、レイの2人とも、普通に近くにいるので、デートと監視組、と言うよりは、親子でお出かけと言った印象がある。それはランチの時も同じで、4人で楽しく食べた。午後から映画を見て、夕方の公園で休憩。まあ、ごく普通のデートだろう、多分。


トキが自慢げに、サクラとレイに言う。


「どうだ、納得したか?」


「うー・・・やっぱり自然な感じじゃない!私もあの家に住む!」


うーむ・・・レイは頑なだ。とは言え、朝のペースで攻められると非常に辛い。


「・・・分かった、じゃあ僕もあの家に住もう。それだけのスペースはあるだろう?桜花ちゃん、龍司さん、構わないか?」


確かに、トキに来て貰えれば安心だ。


「それは助かる」


「パパがいいならいい」


「分かった。じゃあよろしく頼むな」


「えええ・・・解子さんも・・・?」


何だかややこしい事になってきたなあ・・・

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