表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/90

攻城戦

「攻城戦に参加?」


月花が持って来た話に聞き返す。


「はい、参加メンバーやギルド名が隠される、『黄昏の攻城戦』と言うイベントをするので、参加して下さい。自軍の情報のみ分かり、他参加者の名前、顔、ギルド等は認識出来ない安心設計です」


情報リーク。でも、特に出たくない。


「出来れば避けたいのだけど・・・」


横で聞いてたレイが飛びついてくる。


「出たい!」


く。


「今回、最後まで守っている砦があれば、その砦を永久的に所持して構わないそうです。勿論、このギルドだけの特別措置です。悪い話ではないでしょ?あ、複数取得しても、永久所持していいのは1つだけです。正確には、同じ形の複製にこのアジトから行けるようになります」


うーむ・・・砦を所持してないと体験出来ないイベントとか一部あるし、悪い話では無いのだが。


「みんなの意見次第かな」


「分かりました。聞いてみますね」


〔皆様、軽いアンケートです。さるお方から、次の攻城戦イベントに、このギルドが参加して欲しい、と言う依頼が有りました。参加して頂けますでしょうか?断っても、せいぜいさるお方が機嫌を損ねる程度なので、軽い気持ちで返答して頂ければ〕


アンケートの結果は、全員参加希望、だった。もっとも、全員、嫌ではなかったようだ。


「攻城戦・・・何とか頑張って仕事入らないようにするね!」


レイが、むん、と力む。


「大丈夫ですよ。上に圧力かけても良いですし、家から出られないような大雪降らせても良いですし、何とでもなります」


何それ怖い。


「こっちだって必死なのです。まだ人類には滅んで欲しくないので」


淡々と言う月花。冗談が真に迫る演技力だ。


「デスペナ見直しの時に、カルマ溜まった状態で死ぬと人生ログアウトとか設定しようとしてたのを説得したり、フィールド全体をPK可能エリア、しかもデスペナ強化にしようとしてたのを説得したり、全体イベントの成否がとある種族の存亡と結びつけようとしてたのを説得したり、最近色々と大変なのです」


「本当に助かりました」


ユウタが月花に土下座する。冗談だよなあ?


「ははは・・・」


レイが苦笑いする。


「ありがとうな、月花」


撫でてやると、目を細めはふぅと息を漏らす。昔はよくこうやって撫でてやったなあ。レイが割り込もうとしてユウタに押さえつけられている。ユウタも力が強くなったなあ。


「とにかく、イベント盛り上がって欲しいので、是非主様達には参加して欲しいのです。特典は手厚くしたので、御願いするのです」


「分かった。その『黄昏の攻城戦』とか言うのには参加しよう」


「そうとなったら情報を集めないとですね。私とトキで情報収集にあたります」


「私もやるよ!」


ユウタの言葉に、レイも対抗してはいはいと手を挙げる。


「僕も調べられるだけ調べますね。魔道士ギルドで聞いてみます」


エレノアが言う。


「私も色々聞き回ってみるぜ」


サクラも情報網はあるのだが、プレイヤーと言うより、住民の方々と仲がいいんだよなあ。多分攻防戦の情報は集まらない。


各自が解散して行った。俺も、何かしておきたいが。トラップでも作っておくかなあ。トリックスーツでいいカードを引いておくのもありかな。レベル上げとかプレ箱集めしてるのは流石に違うよなあ。


そうこうしているうちに、ちらほらメンバーが戻ってきた。全員揃ったので、打ち合わせを再開する。場所はせっかくなので月夜の海岸亭にした。


ユウタから口を開く。


「僕とトキで、騎士団や六英雄あたりから情報を仕入れてきました。とりあえず現状では、六英雄達は攻城戦には参加していないようです。ただ、今度の攻城戦には参加する可能性があるので、その心づもりでいた方がいいでしょう」


トキが引き継ぐ。


「まず攻城戦は、現在、トップと言われる圧倒的強者のギルドが1つ、それなりに強いギルドが4つあるにゃ。トップのギルドで、最高レベルが1400、構成員が2000人くらいらしいにゃ」


滅茶苦茶強いじゃないか。


「現在は参加してない六英雄、それぞれが騎士団、魔道士ギルド、等を率いていて、トップはそれぞれ六英雄、1200~1400と言った所にゃ。構成員も2000人前後にゃ」


でかいなあ。


エレノアが立体映像を幾つも浮かべる。マナで出来ているらしく、手で触って回転とかできる。


「これが砦の図面です。必要なら詳細な内部図等もあります」


「この砦、弓兵をここに配置すれば守り安そうだな。狙撃が楽だ」


ちょっと気に入った。


「比較的小さめなので、人気もあまりない砦ですね。こぢんまりとして良いかもしれません」


ユウタが説明をつける。


「この砦が一番人気にゃ。大きいし、建築が美しいのにゃ。トップのギルドが毎回堅守してるにゃ」


トキが大きめの砦を指さして言う。確かに綺麗だなあ。


「後気をつけないといけないのが・・・よくある他のゲームの攻城戦だと、倒された場合に復活ポイントからの復帰等が鍵になりますが・・・NLJOの攻城戦は、1日間ログイン不可のデスペナが適用されます。死んだ場合、戦線復帰は出来ません」


「おやまあ、それはきついな」


「はい、人数の多さ、というのが単純な武器になりますね」


ユウタが頷く。


「そうだな・・・作戦としては、この小さめの砦を何とか落とし、その後は籠城、でどうだろう」


「そうですね。その作戦で慎重に行くのが良さそうです」


ユウタも頷く。


「もっとかき回してくれてもいいんですよ?」


メイド様が口を出す。いや、ギルド規模を考えてくれ。砦確保しなくていいんならいいけどさ。できれば堅実に砦1つ確保したい。


「他のギルドが2000人とかいるんだ。6人でどうにかなる話じゃない。ここは堅実にとっておきたい。出来る事だけコツコツと、俺の信条だ」


ここは譲れない。


「うん、ますたぁに従う!」


「それで行きましょう」


レイ、エレノアも賛成する。


「私も問題ないぜ」


「その方針でいいにゃあ」


サクラとトキも賛成する。決まった。


その後、システム告知で『黄昏の攻城戦』の詳細が発表された。六英雄が属する六大ギルドも、参加を表明した。かなり大がかりなイベントだ。砦のランク、支配時間、最後に所持していたかどうか・・・と言った評価度によりランキングがあり、上位に入賞すれば豪華賞品があるらしい。


俺達の目標は、砦を1つ確保する事。とりあえず占領後は俺が見張り台に立ち、侵入者の大半を排除。抜けてきたプレイヤーを、残ったメンバーで排除。ユウタは俺の後ろで俺の補助や、見える範囲の仲間の補助をするらしい。


当日。うちのギルドメンバーは全員問題なく参加できた。他のギルドも参加率は高いようだ。リアルで不思議な調整が働いたとか働いてないとか。


<攻城戦が始まりました。各自競い合って、勇を示して下さい>


目標とする砦に向かう。これらの砦は、最初は所有者がいない状態だ。本来の攻城戦では、前回の所有者による防衛から始まるのだが、今回はイベント用特別マップで、影の砦、となっているらしい。


所有者がいない砦は、モンスターで溢れている。俺はモンスターを避けつつ、空中を蹴ってあっさり宝玉の間に辿り着く。宝玉を破壊。所有権を取る。


<☆3砦『幽玄』をギルド『月花』が占拠しました>


他のギルドのメンバーには、*****と見えるらしい。


所定の場所に着くと、他に入って来ようとしてたプレイヤーを射貫く。矢の節約も兼ねて、魔法矢だ。強いプレイヤーは来ていないらしく、ルナティックレイを使わなくても一撃なようだ。


中にはまだ魔物が残っているが、別に宝玉を破壊される訳でもないので、プレイヤーさえ排除出来ていればそれでいい。パシュ、パシュ。


5分もしただろうか。残り50分といったところだが。ちらほら、他のギルドも色々な砦をとっているらしく、アナウンスが流れてくる。


〔ますたぁ、ちょっと他の砦様子見て来ていいにゃか?〕


確かに、俺が全部侵入者排除できているし、中に魔物残ってるせいで、俺に回復バフかけてるユウタ以外は暇だったりする。


〔分かった。危なくなったら呼び戻すから、遠くに行かないようにしてくれ。まあ、最悪、俺が宝玉の間に立て籠もるのも有りなのだが〕


〔わかったにゃあ〕


トキが偵察に出て行く。


〔私もー!〕


レイも出て行く。


〔僕もちょっと見てきます〕


エレノアも?!正直、魔道士は防衛の要なのだが。


〔私も行ってくるぜー〕


サクラも出て行った。・・・大丈夫かなあ。パシュ。


途中、弱い矢では倒れない奴が出たので、収束ルナティックレイで葬る事があった。あと大軍が来た時も、分散ルナティックレイで対応している。


<☆5砦『極光』をギルド『月花』が占拠しました>

<☆5砦『天雷』をギルド『月花』が占拠しました>

<☆5砦『桜花』をギルド『月花』が占拠しました>

<☆5砦『霊域』をギルド『月花』が占拠しました>


エンジョイしてるなあ。レーサーって奴だろう。守る事はできなくても、奪取するだけなら難易度低かったりするので、奪取して回る参加の仕方もある。尚、ラスト5分は本気の取り合いになるので、ここで取れたらかなりの上位ギルドだ。


レーサーギルド→ラストで取得できるギルド→最初から最後まで守れるギルド、の順となる。その後も、次々と砦をとったアナウンスが流れる。放棄しては次の砦を、を繰り返しているようだ。途中、1000人規模の大軍が来たので、かなり骨が折れた。魔物も少し倒されてしまったし、こっちにも何か飛んできた。まあユウタが防いだけど。あと、ユウタも魔法を使えるので、攻めてくる奴が多い時にはユウタも攻撃に参加している。セカンドジョブは戦士系なのだが、恐らくスキルスロットに魔法をセットしてあるのだろう。


途中から攻めてこなくなって暇になったので、自砦は視界に入れつつ、空中散歩して、適当に目がついたプレイヤーを射貫いて歩く。砦の中には、空中の出窓から宝玉を狙えるセキュリティーバグがある砦があって、そういうのは無駄に砕いてみたりもした。勿論、ついでに周囲のプレイヤーにも退散してもらっておく。この空中歩けるのって結構強い気がする。


最後の5分は、所定の位置で待つ。ないとは思うが、監視や魔物をすり抜けて宝玉の間に辿り着く可能性もあるので、宝玉の間への注意も怠らない。


そして・・・終了。


<攻城戦が終了しました。皆様、お疲れ様でした>


参加プレイヤーの実に98%が死亡、退場という、悲惨な結果となった。仕様上、ギルド名は不明であったが、複数の砦を1つのギルドが占拠していたとの事。普段の攻城戦のトップギルド、及び六英雄のギルドは、全てが全滅。騎士団は、せめて☆3の砦でいいから、という方針をとったにも関わらず、猛攻に遭いあっさり壊滅したとの事。やはり攻城戦は怖い。というか、攻城戦はデスペナを数分に短縮すべきでは。人材が一瞬で消えるのは致命的だと思うのだけど。


一応☆5の砦も確保していたのだが、気に入ったので☆3砦『幽玄』を所持することにした。☆5も☆3も、機能としてはあまり変わりない。収容人数や防御力等に違いがあるだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ