MPK
シュッ
魔法の矢が緑のプレゼントボックス、プレ箱を射抜き、精霊のクッキーがドロップする。夢海月を伸ばし、回収。
精霊のクッキーは、全体報酬も豪華だが、個人報酬も用意されている。一定数毎にアイテムが貰えるのだ。集めて損はない。
ここはPKフィールド、まあ予想通り、プレ箱激沸き地帯とPKフィールドは結構被っている。被ってない場所は、二十四時間凄い人だかりらしい。
空中を歩きつつ、ハーミット+気配遮断すれば、意外と周囲から視認できないようだ。
勇気ある?一団が、箱探しに入ってきて・・・影から飛ぶ矢に手足を撃ち抜かれ、囲まれる。見逃してほしかったら金品を差し出すように言っているようだ。PKされた場合、通常のデスペナに加え、UR未満のレア度のアイテムをランダムで失う可能性がある。PKフィールドでも落ちるのか知らないけど。
正直、PKのお陰でマップ空いているので、助ける気もない。横手に湧いた箱は頂く。
「?!何だ、今箱取ったの誰だああああ?!」
「てめえかあああ」
「俺じゃねえぞおお?!」
あ、好きを見て、脅されてたプレイヤー達がマップ外に逃げた、が、
「何処行くうううう?」
あっさり追いつき、再び囲む。
「こ、ここはPK可能エリアの外ですよ!」
「だからどうしたあああ、カルマは上がるが、PKは何処でも可能なんだぜ?」
そう、別に何処でもPKは可能だ。ただ、それがペナルティどころか推奨される場所があるだけで。
「お前達何をしている!」
騎士団の連中だ。
「ち、逃げるぞ」
PK達がPK可能マップへと逃げる。
「逃がすな!」
総勢10名近い騎士が、PK達を追いかけて行く。深追いすると・・・
「ヒャハハハ!!」
50名近いPK集団にタコられる騎士達。尚、最初襲われていたPTは、騎士団にお礼を言って逃亡済み。あ、箱。シュッっと。
「また箱消えたぞおおお?!」
「貴様かああああ?!」
隙を見て騎士が反撃しようとするが、反応され、斬り殺される。あいつら結構レベル高いなあ。
とりあえず箱探しに戻ろう。あ、赤箱。
夕方、ログインすると、レイに話しかけられた。
〔ますたますたますたぁ、聞いて聞いて聞いて、酷いんだよ?〕
〔どうした?〕
〔PKがマップに出て、みんなのアイテム集め邪魔するの〕
〔そりゃそう言うマップだからなあ〕
〔一般フィールドの方だよ!〕
おやまあ。
〔しかも、何十体も魔物運んで来て、それに紛れて異様な強さで攻撃してくるんだって。プレイヤー名も確認できてないから、偽装が強力らしいの!〕
魔物の群れでプレイヤーを圧死、所謂モンスタープレイヤーキル、MPKと言う奴だ。PKがシステム上出来ない場合でも可能な、迷惑行為である。ゲームによっては、大量の敵トレイン→街に逃げ込む、で、街の外に出た瞬間大量の魔物に襲われるといった悪夢が起きる事もある。フィールドボス等が混じっていれば、悪夢は加速する。
偽装、は、アナウンスにあった対人職や、盗賊系、一般スキル等にある、名前や顔等を偽るスキル、の事だろう。
多分それは。
〔それはPKじゃないと思うよ〕
俺が言うと、レイがびっくりして言う。
〔PKって話だよ?!人の姿も目撃されてるし〕
〔私も情報仕入れてるにゃ。PKらしいですにゃ。スキルや魔法、武器の使用も確認されてるにゃあ〕
トキも話に混じる。
〔じゃあ、その大量の魔物は何処から運んできたんだ?〕
〔?!〕
言葉に詰まるレイとトキ。
〔もしかして、ドッペルゲンガーとかですか?〕
ユウタの問いに、肯定を返す。
〔恐らくそうだろう。異常な強さ、常に大量の取り巻き、ボスなら実現が容易だ。プレイヤーにはサモンモンスターのスキルはないからな〕
エレノアが口を挟む。
〔勿論、旧神、ルシファーの可能性もありますけどね。何にせよ、みんなで行った方が良さそうですね〕
無論、ただのPKの可能性も有るが。ちなみに、故意にMPKするとカルマが溜まる。普通は、故意に、の判別が難しいのだが、流石女神の作ったゲーム、と言ったところか。
現場に着く。騎士団が警戒にあたり、一般プレイヤーは避難している。最初はそれでも来るプレイヤーが居たのだが、騎士団にも被害が出ている状況で、流石に箱探しをする状況じゃなかったようだ。あ、赤箱。ゲット。
《ますたぁ、今ナチュラルにプレ箱回収しましたね》
ユウタが指摘する。目聡い。
《ますたぁ、何かいいの出た?》
レイが聞く。
《いや、150程開けて、URが6かな。LR出ない》
俺が答える。
《150くらい潰して、20ドロップ、回復アイテムが1個出ただけだぜ・・・と言うか、精霊のクッキーも出ないんだけど》
泣きそうにサクラが言う。
《50程開けて、LRが1、URが14だにゃあ》
トキ。畜生。
《私はURも出てないですね》
ユウタ。
《URが1個出ました》
エレノア。
《まだ開けてない!開けたい!》
レイ。
《まあ、噂のドッペル?を探そう》
そもそも、六英雄が出動すれば解決しそうなんだけど。結構各地でトラブルがあり、手が回らないらしい。
と、少し離れた場所で悲鳴があがる。
《行こうか》
そう言うと、声のした方に駆け出す。空を。
《ますたぁ早い。まるで空中を走ってるみたい!》
レイが称賛する。走ってるからなあ。
魔物の群れが騎士を圧殺している。
《ルナティックレイ!!》
光の軌道が無数に伸び、周囲の魔物の命を奪う。目標の気配が・・・見えた!
《ルナティックレイ!!》
収束した光が、目標を射貫く。魔物の群れから弾き出される黒い影。やはりドッペルゲンガーだ。
《ルナティックレイ!!》
再度追い撃ち、体勢を整えようとしたドッペルゲンガーを更に吹き飛ばす。
レイとサクラが追い付き、魔物の群れとドッペルゲンガーの間に割り込む。サクラはドッペルゲンガーに斬り掛かり、レイは魔物の群れを牽制。騎士も、魔物の群れを少しずつ引き付ける。
エレノアが魔物の群れを魔法で処理、ユウタが回復魔法で騎士を癒やす。トキはドッペルゲンガーに斬り掛かる。あ、箱、ゲット。
俺も弓を混沌の剣[長剣]にすると、強めに魔力を込めてドッペルゲンガーに斬り掛かる。程なく、ドッペルゲンガーが倒れる。
<ボスドッペルゲンガーが討伐されました。MVPはシルビアです>
MVPボーナスは回復アイテム、ハズレだ。
「ご協力感謝します」
騎士の隊長らしきプレイヤーが寄って来て、例を述べる。
「見ての通り、あれはMPK/PKのプレイヤーじゃない。ただのボスモンスターだ。リスポーンしたら、六英雄を派遣して倒すといい。1人派遣すれば十分だろうし、少しの時間くらい取れるだろ?」
「それが・・・既に数時間前にカゲ様が挑まれて、敗北、現在ログイン待機状態となっております」
何・・・だと・・・
「それは・・・油断したのだろうね。カゲなら余裕なはず。俺達でも何とかなったし」
《ますたぁ、ますたぁ》
レイが話し掛けてくる。
《カゲさんのレベル、1200くらいなので、ますたぁの方が強いよ?》
何・・・だと・・・馬鹿な・・・
《・・・雑務が多くてレベル上げられないようだね・・・》
《ますたぁのレベル上げ速度が異常なだけだと思うなあ》
「ま、まあ、どうしても手が足りなくなったら手伝うよ。トキを通じて依頼してくれ
俺の言葉に、
「有難う御座います!」
騎士が深々と礼をした。
思いついたのがクリスマス終わった後という悲しみ。
総合6000PV、有難う御座います。
上手く書き溜め出来たら、年変わり付近に何話か投稿したいですね。




