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月下夜話 第二夜 1

〈あー疲れた疲れた、疲れたわー。お腹すいたなあ〉


く・・・ごろごろする月精霊に、6本目のURを喰わせる。弓があればもう少し早く満足する、らしいのだが・・・本当か嘘か知らないが、真名解放をすると一気に存在力を消費するので、UR武器(勿論LR以上でもいいのだが、そんな勿体ない事は出来ない、URも十分貴重だけど)を取り込んで回復する必要があるらしい。


真名解放により使えるスキルは、とりあえず2つ


ルナティック・キャノン

 アルテミスの力を矢に乗せて放つ一撃。

 星をも砕くと言われる。


砕くな。


ルナティック・タイム

 時間軸に影の時間を挿入する。

 僅かの時間を無限に引き延ばす。


所謂、時間停止。


なかなか強い、が、代償が大きいようだ。経緯は分からないけど、多分元神なんだろうなあ。


〈これで終わりだ。これ以上は出せん〉


〈えー。まあいいでしょう。今度はちゃんと弓を用意するように〉


「ますたぁ!」


レイが後ろから抱きついてくる。そのまま固まる。


「ますたぁ、女性の気配がする。その女、誰?」


妙な迫力の籠もった声で言う。月花には見えてたけど普通は見えないのかなあ。


「んー・・・気のせいかなあ・・・」


ぶつぶつ言うレイ。


「レイ、何か用か?」


「うん、エレノアが、ますたぁと話をしたいって!」


「そういえば、ユウタとお茶しがてら話とか言ってたな。またみんな集めて雑談でもするか」


「うん、そうしよう!」


また月夜の海岸亭かな。


月夜の海外亭。今日は雪が降っている。テラスには、チョコレートフォンデュとチーズフォンデュが用意されている。レイと2人で連れ立って入る。他のメンバーはまだ来ておらず、月花とメイド様だけ来ている。何処から情報得てるんだろう。多分ギルドチャット普通に覗いてるんだろうな。月花もギルドチャットやPTチャット普通に聞こえるみたいだし。


メイド様がすすすっと寄ってくると、手を差し出す。何だろう?


月花が耳元で、囁く。


「何か個人的な話があるようなので、駄精霊をお渡し下さい」


〈今いないと伝えなさい〉


月精霊が語りかけてくる。いや、逆らうとか出来ないから。


月弓をメイド様に渡すと、店の裏手にゆっくりと歩いて行った。あーあ。合掌して見送る。出来れば無事帰って来てくれ。


「あれ、弓渡したの?何だろう?強化してくれるとか?」


レイがきょとん、として見ている。


そうこうするうちに、他のメンバーも来た。メイド様も戻って来て、弓も返してくれた。月精霊はいるが、ちょっとぐったりしている。そっとしておこう。


「みんな、集まってくれてありがとう。今日は、ゆっくり雑談しようと思って集まって貰った」


「料理のおかわりが必要でしたら仰って下さい。未成年以外には、お酒もありますよ」


メイドがそう言いつつ、トキのグラスにお酒を注ぐ。


「私はお酒にはちょっとうるさいのにゃあ・・・うまあああああああああ?!しかも飲んだらすっと消える感じにゃああああああああああ?!」


うん、確かに煩いようだ。多分、ソーマとかそう言う奴だろうな。


エレノアも、お酒を貰っている。ねだったレイにすっとブドウジュースを注ぐメイド様。そっかあ、未成年かあ。若いなあ。


「えっと、じゃあ、僕から。以前一緒に行った遺跡で、調べた結果を」


「遺跡、ですか?」


月花が不思議そうに割り込んで来る。


「うん、図書館でね、がーって本棚が開いて、がーって降りれて」


レイが嬉しそうに言う。


「図書館・・・?古代図書館なら、ちゃんと封鎖したはずですが、と言うか、あの手順、普通再現出来ない・・・?」


レイが明らかに封印破ってたからなあ。


「それより、何が分かりました?」


ユウタが促す。


「はい。元々の僕の仮説では、科学文明が発達した結果、神に試練与えられた、と考えていましたが。魔王出現より前にマナの記述があるので、魔導技術の開発が先の様でした」


「魔導技術の開発がトリガーになったのかな?」


俺が口を挟むと、


「それよりも多分、魔王の原型、人間が作ったみたいなんですよね。魔王出現の記録より古い、魔王の設計図が有りました」


意外な話をする。


「そうなると、女神様は手を出されていなくて、完全に人間が自滅したのでしょうか?」


ユウタ。


「そうでもないようです。原型は作りましたが、それに力を与え、軍勢も与えたのは、女神様のようです」


「ふーむなるほど。試練なのか、禁忌に触れたのか、そこまでは分からないけど」


俺が頷く。


「禁忌、と言えば。あの研究所、人体への魔物の融合もしていたようですね。成功例はなかったそうですが」


「そんな事もしてたのか」


「別の遺跡を調べたら、成功例とかもあるかもな」


サクラが重苦しく言う。


「そう言えば月花、地下で変な物を倒したんだが」


「地下、ですか?変な物?」


月花がきょとんとする。


「エレノア、写真とかあるか?」


「これですね」


エレノアが空中にホログラムを出す。何やら文字がいっぱい書き込まれている。


「・・・これは・・・破壊神ディアボロスの原型・・・ですね。これを何処で?」


「図書館の地下だよ!」


レイが答える。


「古代図書館ですか?どうやって地下に入ったか聞きたい所ではありますが・・・そうですか、あそこにありましたか。かつてこの世界を滅ぼした兵器ですね。てっきり、魔王を倒そそうとして兵器を新たに建造したのかと思っていましたが、あそこで育っていたのですね。それは気づいていませんでした」


「結局この世界の住民は、最初と最後を自分達で首をしめたのか・・・」


女神は怖い存在ではあるが、本当に怖いのは人間そのものなのかも知れない。とか考えてみたり。


「うみゃうみゃ」


トキがお酒を飲む。話についてきてない。姉に色々助言してた知的派じゃなかったのか?


「じゃあ、次私!」


レイがはーい、と手を挙げる。お、次はレイか。どんな話題だろう。


「ますたぁは、どうやって魔王を倒したんですかぁ?」


「俺?!レイが話すんじゃないのか?!」


何で?!


「ますたぁ、私の事が知りたいなら、後で個人的に、2人で!ゲーム忙しかったから、つまらないリアルの話くらいしか出来ないよ!」


確かに、オタクにとってゲームが全て。語れるようなリアル持ってる奴はゲームやってないよなあ。リア充は滅びるべし。


「分かった・・・と言っても、つまらない内容だぞ?」


俺がそう言うと、


「そう言えば、知り合いからも詳細聞いてないにゃあ?」


トキがきょとんとする。月花の事も知らなかったしね。


「わくわく」


レイが期待がこもった目で見て来る。や、本当につまらないぞ?


「特に語る内容ではないからな。蘇生アイテム投げ付けて、一撃で倒した」


「それは・・・確かに語らないはずにゃ、あっけない。ボスの即死耐性付与ミスとか、泣けるにゃあ・・・」


あ然、として、呆れ混じりに言うトキ、と、きょとんとする他のメンバー。


「ますたぁ、蘇生アイテム、何て何故存在するのですか?」


ユウタが代表して聞く。


「・・・・あああああ、そう言えばそうにゃあああああああ。嘘にゃあああああああ????嘘ついたにゃああああああああ?!」


そう。蘇生システムはこのゲームで初めて作り出されたシステム。前のゲームでは、死亡即、人生リタイアだった。


「嘘、ではなさそうですよね」


ユウタが言う。


「その通り。まったくこの残念猫もどきは。お姉さんはあんなに聡明だったのに」


いや、聡明ではなかったような。勘は凄かったけど。


「うにゃあああああああ?!」


言葉になってない。


「そう、LJOには、蘇生の概念は存在しなかった。だからこそ、魔王は蘇生効果に耐えられなかった。存在しない概念に、耐性は持てない」


俺が言うと、


「どうしてますたぁは蘇生アイテムなんて持っていたのです?」


レイがきょとん、として聞く。


「全ダンジョン踏破報酬、と言うのを入手してな。神も、実現するプレイヤーが出るとは思っていなかったらしく、報酬に困ったらしい。神への拝謁権と、個人的な望みの褒美、が与えられた」


「神様への拝謁・・・凄いにゃあ・・・想像も出来ない」

「凄いね!会ってみたい!」


うっとりするトキ、レイと。


「はははは・・・」

「す、凄いですよね」


苦笑いするユウタ、言葉を濁すエレノア、無言でポリポリ頬をかくサクラ。


「で、まあ、蘇生アイテムを願った、って訳だ。親友を失った直後だったから、怪しまれなかったよ。ご丁寧に、死亡一定時間内、の条件付けて、その親友には使えなくしてから。嫌がらせ、とかではなく、この先誰に使うのか見たかったんだろうな」


そう、それはただのあっけない、事の顛末。

総合5000PVありがとうございます。

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