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《着いた!》


レイがくるくる回りながら言う。


《こっちが古代図書館ですね》


ユウタの先導で、ダンジョンに向かう。途中、集団と集団が、何かもめていた。敵を独占しすぎだの、数が多いから少人数のPTに気を遣って狩るべきだとか、こちらは数が多いのだからその分敵をたくさん狩るのは当然だとか。関わりたくない、というかダンジョン行けよ。


《ここの敵、飛空艇パーツの材料になるみたいですね。だから取り合いになるらしくて》


エレノアが言う。


《早朝とかだと空いてるから結構楽に狩れるみたいなんですけどね。このくらいの時間から混み始めるらしいですね。飛空艇パーツが行き渡ったら平和になるんでしょうけど》


ユウタが言う。


「はーぃ、素材高く買いますよー」


向こうで商人っぽい人が買い取りを出している。


《あの買い取り・・・看板に書いてある値段と、実際の買い取り価格が1桁違いますね。間違って売ってしまうのを期待しているのでしょうね》


商人のスキル、露店。直接話したりアイテム取引しなくても、購入処理や売却処理を自動で行ってくれるスキルだ。が、気をつけないと看板と実際の値段が桁が違ったりする。3桁毎のカンマ区切りとか、数字の色が変わるとか、対策はとってあるのだが、それでも間違う人はいる。


「おい、貴様、桁が違っているぞ、売ってしまっただろ」


あ、早速トラブルになってる。


「言いがかりですか?!ちょっと、やめてくださいよぅ」


露店を閉じて証拠隠滅した後、怯えた仕草をしている。


《色々あるねえ》


お金が儲かるところ、雰囲気は悪くなる。


《あまり狩りたくない場所ですね。狩るなら早朝とかが良いです》


エレノアが言う。


《ここが古代図書館です。1階層、3部屋だけのシンプルな構造。適正レベルは800。出てくる本の敵が、職業経験値が多めなので、職業上げにいい場所です》


ユウタ。


《おー、それはシンプルだな》


俺が言うと、


《バックグラウンドストーリー?みたいなのがあって、それだと地下があるんですけどねえ》


エレノアがしみじみ言う。


《ん?地下?ここは1階層しかないって有名にゃ。隠し通路とかもある隙ないにゃあ》


トキが言う。


《探索されつくしてますしね》


ユウタも頷く。


《バックグラウンドストーリーって何??》


レイが興味津々、と聞く。


エレノアが語り出す。


《えっと・・・ちょっと長くなるんですけど・・・》


《かつて、この都市が魔王の手下の軍勢に襲われた時、人々は、その魔王の手下を捉えたそうです。解析し、魔王の手下自体は暴走させて魔力生成の反応炉のように使ったそうです。また、人造の魔物を作成したり、魔物を制御する機械等も作成していたそうです》


《1階はカモフラージュの為、図書館に、地下以降が研究所となっていたそうで・・・最下層の格納庫には、対神兵器が建造されていたとか・・・》


それバックグラウンドストーリーじゃなく、元の世界の話では・・・


《行ってみたい!!》

《だよな!!》


レイとサクラが反応する。


《あるなら見てみたいにゃあ》

《そんな設定があったのですね》


トキとユウタも反応する。


《まあ、最終的には、突如魔物が暴走して、この都市を棄てるしかなくなったそうです》


エレノアが言う。ルールを解析して対策とったら、ルール改変して無効化したり、ルール追加してくるからなあ。ルール作る側には勝てん。


《とりあえず入ってみようか》


みんなを促す。早くダンジョン入りたい。


みんな『グー』エモを出し、中に入った。


部屋は3部屋、敵は強くはない。敵は、本の魔物・・・外側が本で、開いたページの部分が口になっている奴、がメイン。レベル制限したらともかく、今の上位陣のレベルだと、敵はあっさり沈む。ボス、正気を失ったっぽいデーモンらしき奴、あっさり倒し、宝箱部屋が空く。これをとったらダンジョンクリアだ。


《ちょっと試してみて良いですか?》


エレノアが背景のオブジェクトの方に行く。何か操作していく。


《ここの本棚が退いて、階段が現れるはずなのですが・・・やっぱり駄目ですね》


エレノアががっくりして言う。


-protected-


そんな青く光る文字が浮かんでいる。


《まあ、1階だけダンジョンとして再利用して、後は入れないようにロックしてあるんだろうな。どうする?クリア後、制限ダンジョンにしてちょっと狩ってみるか?》


俺がそう提案すると、


《ロック?入れないようにしてあるの?》


レイがきょとん、として言う。とてとて、とエレノアの傍に行き。


「ねえねえ、ロックさん。『私達は入れる』よ?」


ブ・・・ブブブ・・・


「『入れる』よ、『閉じちゃ駄目』だよ」


ブブブ・・・


あ、-protected-の文字が消えた。


ゴゴゴ・・・


本棚が横にスライドして、階段が現れる。


《やった、行こう!!》


レイが手を叩いて喜ぶ。


《ありがとうございます、レイさん!》


エレノアも凄い喜びようだ。


《よし行こう!》


サクラもわくわくしているようだ。


《え・・・いいのかなあ・・・》


ユウタが戸惑っている。


《にゃ・・・にゃ・・・》


ちょっと壊れかけのトキ。


・・・まずいなあ。


地下に降りる。そこは、エネルギー貯蓄庫、だろうか。青緑に光る液体が複数、円柱状のケースに貯められている。


ダンジョン、という印象を感じない。


まだ仮説なんだけど・・・一応言っておこうか。


《この先に進む前に、みんなに言っておきたい事がある》


《何?》


レイがきょとん、として纏わり付いてくる。


《まずこの場所だけど、ダンジョンではない。このゲームを構築するのに1階だけ利用し、他は入れないようにしてあった。そこまで手が回らなかったのか、不要だったのか。そこに、無理に入ってしまっている状態になっている》


《・・・確かに、さっきレイさんがやってましたね》


ユウタが頷く。


《で、ここからが本題なんだけど・・・この先、非常に危険な可能性がある。まず、ダンジョンじゃないと言うことは、進入不可領域や、破壊不可属性が設定されていない。つまり、攻撃した結果、いや、自然崩落でも、突然壁や天井が崩れる恐れがある》


《それは・・・気をつけて戦わないといけないね》


レイが深刻そうに頷く。


《もう一つ・・・この先で死んだ場合、リアルの安全性が保証できない。死亡した場合、リアルでも死亡する可能性がある》


《な、何ですって?!》


トキが驚いて飛び上がる。口調も素になってる。


《恐らく、ゲーム領域、は、魂の保護のシステムも組み込んであるはずだ。死亡と同時に再生させるような。ゲーム領域の外に行く、というのは、そういうリスクもある可能性がある》


《そう・・・だったのですね・・・》


マップの範囲外に出る常習犯のエレノアがびっくりして言う。


《つまり言いたい事は分かったと思う。この先に進むと言うことがどういう事か》


《そ、そうだにゃ、ここは引き返》


トキがそう言おうとするのに被せて、


《分かった、気をつけて進まないと行けないって事だね!》


レイが強く言う。そっかあ、進む気満々かあ。


《み、みんな何を言ってるにゃ、この先死んでしまったら・・・》


《でも、ますたぁ、昔やってたゲームは命がけだったんですよね?》


エレノアが聞く。


《うむ》


正直凄く楽しかった。


《いつも以上に慎重に進みましょう。楽観視する訳では無いけど・・・ここは引くべきじゃない、そんな気がするんです》


エレノアがきっと前を向く。


《トキ・・・》


俺はトキの肩を叩くと。


《多分ここで引き返しても、こいつらこっそり単独でも来るぞ》


《にゃあああああああああ?!》


《ますたぁにはバレバレですね!》


レイがきゅーっと後ろから抱きついてきた。


《よし・・・じゃあ、慎重に進もう。危なかったら引き返すからな》


ゆっくりと先に進む。

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