エリアちゃん
《マスター、こっちですよー》
以前固定PTで一緒だった、フォースから連絡があった。ギルドが大きくなったから、みんなに見せたいという。話を持ってきたのはユウタだ。ユウタは街に出て、色々な人と交流を持っている。情報も色々仕入れてきてくれる。コミュ力凄いなあ。
《そんなに規模が大きくなったのか?》
《はい、1週間前で人数が30人以上、レベルも200以上の人が数名、中堅ってところですね》
俺でも滅ぼせそうだ。
《攻城戦とかやってるのだろうか》
上位ギルドは、毎週末行われる攻城戦で、城の取り合いを行う。占領すると、色々な特典が貰えるらしい。難しいのは防衛で、時間の最後に城を持っていたギルドが所有権を得るので、最初に城を占拠しても、後から取り返される可能性がある。尚、終了直前に突入して城を奪うギルドの事を、レーサーギルドと言い、最初からとって防衛するよりも難易度は低い。また、ギルド占拠合計時間により最後に報酬があるので、難易度が低い最初にちょっととるだけを目標にするギルドもある。
《毎回挑戦はしてるけど、取れたことはないらしいですね》
まあ、小規模なうちには関係ない話だろう。多分。
酒場で待ち合わせると、フォースがやって来た。ゲストパスを渡される。ゲストパスは、ギルドに所属していなくてもそのギルドのアジトに入る事が出来る。お客を招待する時に発行する一回きりのパスカードだ。入れる範囲も、その発行者が定めた範囲。
「フォースさん、お久しぶり」
「ユウタに、シルビアか。久しぶりだな」
くい、とアジトのゲートを指さし、
「さあ、付いて来てくれ」
ゲートの中に入っていった。
アジトの中に入る。こじんまりとしたアジトだが、宿舎はでかい。30人入ってたらそりゃ大きいかな。・・・。
《なあ、ユウタ》
《・・・はい、何か・・・険悪・・・ですね》
何故か、メンバーの間に、不穏な空気が漂っている。微妙な顔をしている勢と・・・デレデレしている勢。デレデレしている勢の中心に、女の子が立っている。可愛い見た目装備が多い。お金持ちなのかな?
「あ、マスター!お帰りなさい!」
きゃるーんとした感じで、女の子がフォースに寄っていく。フォースがきゅっと女の子を抱き留める。
「エリア、ただいま!」
・・・何だろう・・・こう・・・その子からいい印象を受けない。
《これは・・・駄目かもですね》
ユウタが残念そうに言う。
「この子はエリア、世界一のプリーストを目指しているらしい。みんなを癒すのが夢だそうだ」
「はい、このギルドでお世話になっているエリアちゃんです!今はまだみんなに助けられてばかりだけど・・・すぐに成長してみんなを癒したいんです!」
「うんうん、エリアちゃん頑張ってるよなあ。アコさんはレベル上げ大変だし、凄く苦労しているよなあ」
近くに居た他のメンバーがうんうん、と頷く。
「そうなんです!アコは大変なんです!だから頑張るのです!」
エリアが叫ぶ。
「大変?セカンドに戦士なりメイジなり付けて、敵をさくさく狩れば早いのでは」
「駄目なんです!エリアは純粋な僧侶系を目指しているんです。他の職は取れません!これはこだわりです!」
「そう・・・エリアちゃんは健気なんだ。だからみんなで手伝ってあげてるんだよ。アコは、プリーストは、ギルドみんなの財産だからね」
「ありがとうございます!!」
やー。縛りプレイって好きだけど、それって自分で努力してこそ、だろ。変なこだわりで縛りプレイしつつ、他人に育てて貰ったりするのは何か違うと思うけどなあ。ユウタをちらっと見ると、残念そうな顔をしている。
エリアは、くるっとフォースを見ると、
「フォースさん、エリアちゃんはまた狩りに行きたいです!」
「おお、そうか。行こうか!」
こちらを見て。
「そう言うわけですまないな、今からギルド狩りだ。せっかく来て貰ったのに申し訳ない」
「いえ、こちらも連絡が遅かったですし。また規模が大きくなりましたね、びっくりました」
ユウタがニコニコして言う。
「フォースさん凄いね。俺の方はまったりプレイだから、相変わらず6人のままさ」
「大丈夫、シルビアの所も何時かは大きくなるさ。地道な努力が大事だよ、うん」
フォースに手を振って別れた。
《長くなさそうですね》
ユウタがぽつり、と言う。
《再び立ち上がる事が出来るなら、きっと大丈夫だと思うよ》
そう返しておいた。




