雪山ダンジョン
《寒い・・・》
吹雪く山を登っている。サクラが仕入れてきた情報、雪山にダンジョンが隠れている、と言う噂を聞き、確かめる為、そして見つけたらアジトに登録する為、向かっている。
《すまねえなあ、マスター。あんただけが頼りなんだ》
《任せてくれ。レンジャーは探索の補助くらいしか出来ないが・・・そればかりは他職に負けない》
戦闘ではよわよわ。
《くうう、有難うマスター!》
《何で私もいるにゃああ?!》
後ろから付いて来ているトキが悲鳴を上げる。
《仕方ないだろう。PTにいないとサクラのレアドロップ率が悲惨な事になるのだから》
《にゃあああああ!アジトに登録してから、アジトで合流して入ればいいにゃああ?!》
言いつつ、付いて来てくれてるし、リアルからのスマホ操作モードでプレイすれば別に寒くないし、結局は付き合ってくれているのだろう。付き合いがいい。
グルルル
スノーウルフの群れ。
シュッ
擬似月弓から放った矢が、残らず命を刈り取る。フィールドに登場するモンスターは、基本的に雑魚だ。
ガサッ
雪男が現れる。
《ミョルニール!!》
俺が放った光の柱が、雪男の命を刈り取る。
<ボス:イエティ・リーダーが討伐されました。MVPはシルビアです>
<MVPボーナス、雪水晶を入手しました>
《強い敵が出たとき、二人じゃ不安だしな》
俺がそう言うと、サクラが、
《マスタあ、暇だぞぅ?》
《俺に言われても・・・》
敵に言ってくれ。
地図スキルの情報、サクラから聞いた情報、トキが入手した情報、を統合し、ようやくダンジョンを発見した。
《これが未踏破のダンジョン。大陸ダンジョンよりは難易度低いはずだが・・・とりあえず登録は終わった》
《よし、行こうぜ!》
《行くにゃああ・・・もっと寒いにゃああああああ》
エレノアがいればもっと楽なのだけど。
《仕方ない、コンフォートのスキル使うか》
エクスプローラーのエクストラスキル、コンフォートを発動。PTメンバー周辺の気温等を快適にする。マイナス100度とか、熱湯、酸素が薄い、といった状況では役に立たないので、メイジの使うスキルの劣化互換・・・おい。
《トキ、環境最適化魔法使えるよな?》
《にゃあ。大魔法とかは使い物にならにゃいが、補助魔法なら余裕にゃ》
《流石に洞窟の中は寒い、使ってくれ》
《にゃあ、仕方ないにゃあ》
トキの環境最適化魔法が発動、楽になる。ついでに、と、トキが複数の蛍火を生み出す。
《やっぱりトキも凄いなあ》
サクラがいいなーといった感じで言う。
1階に入る。氷の床、不自然な配置の柱、見えている階段。
《にゃ・・・にゃにゃ?!》
一歩踏み出したトキが、4歩分くらい滑る。滑る床、と言う奴だ。柱や壁を利用しながら、丁度目的の場所に止まるように移動する必要がある。
《これは・・・頭使うやつだな。面倒な》
《エレノア連れてきて溶かした方が早いにゃあ?》
《ダンジョン化した構造体は破壊不可だ。二人とも、俺にくっつけ》
サクラがぎゅっと抱きつき、トキがきょとんとしつつ、俺の服を掴む。
夢海月に武器を交換すると、鞭を伸ばし、柱に巻きつけ、移動する。途中、宝箱回収しつつ、あっさり階段に。
《にゃああ・・・システム上、移動距離決まってるみたいだったのにすごいにゃあ》
《上位魔道士なら浮遊魔法が有るんだけどな》
《流石マスタだぜ!》
もう離れても良いのだけど、抱きついたままのサクラ。まあ、黙っておこう。
地下2階に降りる。氷の騎士、アイスゴーレム、ブルースライム・・・寒そうな敵が結構な密度でいる。次は物量か。ミョルニールで大雑把にダメージを与えた後、各個撃破で進む。休憩しながら。ビバビバ。
《マスターと一緒に狩りしてると、近くで座るとすげー速度で回復する事がある気がする》
《レンジャー系のスキルだな》
《移動速度とか経験値も増えるにゃあ》
《非戦闘職だからな、サポートスキルが申し訳程度にある》
幾らか歩き、あたりをつけ、3階への階段に着く。
《見つけるの早い、凄いにゃあ》
《レンジャーのスキルと、経験だな。俺にはこのくらいしか出来ないからなあ》
地下3階は、複数の小部屋がワープゲートで繋がれている形状だった。部屋毎に複数のワープゲートがあり、間違った物に乗ると戻ってしまう。大体の気配で当たりが分かるので、正解を引きつつゴールに。途中何度かモンハウになっていて、突入と同時に襲いかかられた。
地下4階は、外周に4隅大部屋、通路で繋がれ、真ん中にボスの大部屋。レベル上げに使っていた海岸線の洞窟と似たような構造だ。広さはこちらの方が大きいけど。
ボスは上半身が騎士、下半身が馬。大きな斧を振り回し、突進して来た。突進を避け、上部から攻撃。近接3人だと、みんなでボコってる感じが出て楽しい。程なく、ボスが沈む。MVPは俺だった。多分武器の属性のせいだろう。
最後の宝箱も開け、ダンジョンクリア。サクラもURを出したらしい。やっぱりトキ様々。
《お疲れ様ー》
《お疲れ様にゃ!》
《ありがとう、URとか初めて出した!》
その内、メンバーと制限ダンジョンにして来るのも良いかも知れない。まずはみんなのクリアフラグを建てる必要があるけど。




