巫女の転職クエスト
「マスタマスタマスタ!」
俺がアジトでぼーっと座っていると、後ろからレイが抱きついてきた。
「どうした?」
「クエスト手伝って欲しい!」
「クエスト?」
「うん、巫女の転職クエスト!神、またはその眷属の前で踊りを披露すること、らしい!」
うん、教会で神父立ち会いの下、踊る必要がある。本来は幾つかクエストを行い、教会の協力を取り付ける必要があるクエストだが、レイはモンク、僧侶系統の職業を持っているので、その前準備クエストは不要だ。
「確かそんな条件があったね」
「うん、だから、手伝って!」
俺が手伝ってもどうしようもないのだけど。僧侶系じゃないから顔も効かない。・・・待てよ?
「ひょっとして、月花の前で踊れば達成するんじゃないか?その条件」
一応神のアドバイザーっぽいし。
「・・・!!それだね!」
「何か面白そうな話してるにゃ」
トキが寄ってくる。
「ああ、巫女の転職条件イベントあるだろ。あれが神、または神の眷属の前で踊る、だから、月花に見せればいいんじゃないか、って話で」
「なるほど、どうせなら月夜の海岸亭で踊るにゃ。舞台の用意は任せてくれにゃ。ギルドメンバーみんなを呼んで大々的にやるにゃあああああああ」
「ふええ・・・」
レイがおろおろしている。まあどうせだし派手に。
舞台はエレノアとサクラが整え、メンバーも全員集まった。メイドがおつまみとジュースを配っていく。またいる、実は暇なのだろうか。
「メイド、さん?そういえば、居る時と居ない時があるのは何でにゃ?このマップの専用NPCでもないにゃ?」
「私はここで何かやる時だけ配置されるNPCですね。普段はセルフサービスとなっております」
「なるほどにゃあ」
トキが納得している。
「ねえマスター、あのメイドの方って・・・」
ユウタが何か言おうとするが、
「ユウタ・・・世の中にはな、隠そうとしてる事を暴かれると、凄く不興を買う事もあるんだ。君が今から言う行為は、人類が滅亡する可能性と釣り合うだけの価値がある事かな?」
「マスター、あのメイドさん、凄く美人さんですよね。ケーキも凄く美味しかったですし」
「うむ、有り難い話だ」
美味しいよな、ケーキ。
舞台にレイが出て来て・・・そのまま視線が釘付けになる。レイが踊り娘衣装に身を包んで出て来る。決して露出が多い衣装では無いのだが、目が離せない。
「ご主人様、鼻の下が伸び過ぎてらっしゃいますよ」
月花からツッコミ受ける。そんな事ない。顔に出す程自制が無い訳ではない。
「リアルの」
く。
流れる様な動作で、舞台中央に移動する。何とか横目で見ると、みんな同じ状況で、レイに視線が固定されている。
舞台中央ですっとしゃがみ込む。そのまま、時が止まったように感じる。何分間、あるいは何年、何百年そうしていたのか、不意に、レイが動き出した。時が、動き出す。
レイの手に、足に、顔に、レイの誘導に従い、視線が移動させられる。そして再び、舞台中央で静かに、静止する。
パチ・・・・パチ・・・パチパチパチ・・・
誰から拍手したのか、一気に拍手が巻き起こる
「この度は、ご覧頂き有難う御座いました」
レイがペコりとする。
「こちらも、素晴らしいものを見せて頂き有難う御座いました」
月花もペコりとする。
「これはあちらのメイドさんからです。お納め下さい」
月花が羽衣をレイに渡す。
「有難う御座います」
月花とメイドにお礼を言うレイ。あれめっちゃレアな予感する。
「レイ、踊り凄かったよ。また見せて欲しい」
「あ、有難う御座います」
照れるレイ。やっぱり改まって踊ったりすると恥ずかしいらしい。
「このマップ、アイテム入手したりするイベントも発生するんだにゃあ。まあ、LRクラスのレアは貰えないだろうけどにゃ」
「ええっと、こういうのです」
神巫女の羽衣[GR]
神に認められた存在のみが纏う事を許される羽衣。
大気のマナを消費し、受ける攻撃の威力を激減させる。
気力を消費し、攻撃を無効化する結界を展開できる。
神力、気力を扱う際、威力に大きなボーナスを得る。
職業、神巫女が開放される。
神巫女
巫女職の頂点。
前提条件:
3種以上の巫女職マスター。
4次職、3次職を3つマスターが前提だから、まだ先だ。まあ恐らく、この前提アイテム入手の方が難しいのだろうけど。
「LR装備・・・憧れますね!」
「仕方ないのにゃあ。LRは本当にレアなのにゃあ。GRって何にゃあ?」
「GRはLRの上な。まず目にかかれない」
「にゃあああああああああああああああ?!」
「このマップ・・・恐ろしいにゃあ・・・私も今度何かやるにゃあ・・・」
向こうでメイドがユウタに武器、剣を渡している。ユウタがペコペコしながら受け取ってる。あれもGRだろうか。俺もGR手に入れたけど、消耗品だったしなあ。
レイがメイドの所に行き、改めてお礼を言っている。
またこういう機会設けて踊り見せて貰う、と言う約束もしつつ、解散となった。ちなみに、巫女の転職条件は満たしていたらしい。まあそりゃねえ。




